イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第八十六話 恋愛のダメージその八
「ずっと覚えているのよ」
「だからですね」
「そう、それこそね」
「じゃあ以後告白する人も出なくて」
「お付き合いしたいという人もね」
「出ないですね」
「自分がそこまで酷く振られるって思ったら」
徹底的に傷付けられてというのだ。
「告白しないわよ」
「もう相手いないですね」
「それで結婚もよ」
将来もというのだ。
「結果としてね」
「出来ないですね」
「それで寂しく生きることになるわ」
「そうなっても自業自得ですね」
「自分が招いた災厄って逃げられないのよ」
先輩は咲にこの摂理も話した。
「行いをあらためて反省したらね」
「逃げられるというか」
「災厄が避けるけれど」
「反省したらですね」
「それならもういいってなってね」
「けれど反省しないと」
「もうね」
その時はというのだ。
「災厄が来て」
「逃げられないですね」
「そうよ、これこそね」
まさにと言うのだった。
「自業自得、因果応報ってね」
「言うべきことですね」
「悪いことをしたら返ってくるのよ」
「報いが」
「そうなるから」
「最初からしないことですね」
「それがいいのよ」
まさにというのだ。
「咲っちもそのことは気をつけてね」
「本当にそうします」
咲は覚悟を決めた顔になって答えた。
「私も」
「そうしてね」
「さもないとですね」
「自分が悪いことになるからね」
「悪いことをしたらですね」
「絶対に報いがあるから」
「本校の人は報いを受けて」
「やがて兎もね」
こちらもというのだ。
「そうなるわ」
「報いを受けますね」
「まあ猟師に狩られて」
「食べられますね」
「そうなるかもね」
あの物語の後でというのだ。
「報いを受けて」
「そうなっても同情出来ないですね」
「狸にしたことを思うとね」
「そうですよね」
「いや、太宰って色々書いてるけれど」
「そんな作品も書いてますね」
「人間失格とかだけじゃなくて」
これがというのだ。
「実はね」
「色々書いてる人ですね」
「そうなのよね、これが」
「暗い作品だけかっていうと」
「これが違うのよ」
「そう思うと凄い人ですね」
「文章読みやすいしね」
太宰は読者がそうである様に意識して書いていたという、小難しい文章は嫌っていたのかも知れない。
「あの人って」
「あっ、そう言われると」
「そうでしょ」
「確かに読みやすいです」
咲もそれはと答えた。
ページ上へ戻る