とあるの世界で何をするのか
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第四話 早速、能力開発
朝起きて朝食を食べ、ネットサーフィンをしていると玄関のチャイムが鳴った。
「はいはいー」
この世界に来てから、家に遊びに来るような友達はまだ出来てないし、宅配便が届くようなことも無いはずだ。そう思って玄関の外に居る人物の生体データを識別してみると土御門さんだった。この生体データ識別の能力のおかげで、俺は双子であろうがルパン三世並みの変装であろうが見分けることが出来るのだ。
「持ってきたぜよ」
「あ、どうもありがとうございます」
この家に送り届けてもらった時に言っていた、学園都市での生活に必要な身分証などを持ってきてくれたようだ。
「これが身分証明書、健康保険証なんかの役目も果たすから、出来れば持ち歩いたほうが無難だぜい。それから通帳が二冊、口座は銀行と郵便局に用意させた。ついでに印鑑も作っておいた、どっちの通帳もこの印鑑で登録してある。そしてこれはお前さんの能力開発に関わる書類だ。能力開発は今日なんだが、予定は空いているよな?」
「はい」
土御門さんが持ってきた身分証明書や通帳などを受け取り、能力開発の書類に目を通す。俺のために作成されたと思われるスケジュール表、能力開発を行う研究所の場所を示した地図、そして能力開発の担当者が書かれた書類があり、それとは別に一般向けと思われるパンフレットが二冊あった。どうやら外で学園都市の紹介をするためのパンフレットと、内で学園都市を知ってもらうためのパンフレットのようだ。
能力開発の書類から俺が真っ先に見たのは能力開発の担当者名だった。取り敢えず『木原』という苗字がなかったので安心する。4名の担当者の名前と顔写真が載っていたが、聞いたことある名前もアニメで見たような顔もなかった。
「それじゃ、出発するぜよ」
「え!? 一緒に行くんですか?」
「研究所まで送り届けるように言われてるんだにゃー」
「あ、そうですか。すぐ準備しますね」
準備を終わらせ外に出ると、一昨日送ってもらった時と同じ車が止まっていた。
「ここだぜい。それじゃ、頑張ってこい」
研究所の前で車から降りると、土御門さんから割りと強めに背中を叩かれた。
「げほっ! ありがとうございます、行ってきますー」
土御門さんたちに手を振りながら見送って研究所に入る。門のところで守衛さんらしき人に話しかけ、能力開発の書類を見せるとしばらくしてから中に入るように言われたので、研究所の玄関を入ると女性の担当者が待っていた。
「あなたが神代君ね、待ってたわ。ついてきてちょうだい」
「はい」
言われるがままついていくこと5分ほど、大きな扉の前でようやく女性担当者が立ち止まる。
「さあ、入って」
大きな扉を開けると、中は体育館ほどの広さがある部屋だった。部屋の中には書類で見た能力開発担当者の3人の姿が見えた。
すぐに能力開発に取り掛かり、最初に何十錠かの薬を飲まされる。それから脳波測定で使うような装置を頭に付けられ、同時に左腕に点滴のようなものも取り付けられた。
「しばらくはこのままで居てもらうから、眠ってても構わないわよ」
そう言われて眠っていると、頭に鈍い痛みを感じて目が覚めた。
「あら、起きたみたいね。頭が少し痛むかしら?」
「はい、少し」
「そう。いい結果が出そうね」
「え?」
どういうことかは分からなかったが、頭痛自体は異常ではなさそうだ。だが、頭痛は次第に酷くなり頭が割れそうなほどになってくる。
「そんなに痛む?」
「ええ……結構」
「もう少しだから我慢してね」
そこからどの程度の時間が経ったのかは分からないが、俺の中ではかなりの時間我慢させられた。しかし、痛みが引くとあっという間に何事もなかったかのような、いつもどおりの状態に戻っていた。
眠っていた時間は意外と長かったのかすでに昼過ぎになっていて、研究所内の食堂で意外と美味しい遅めの昼食を食べ、少し休憩を挟んだ後で能力開発の仕上げが始まった。
「これで最後ね。お疲れ様でした」
「あ、どうも。お疲れ様です」
頭にさっきとは違う装置を付けられ、なんだか妙な味の飲み物を飲まされて能力開発は終了した。終了したといっても、自分では何か変化があったのか全然分からなかった。
「次は能力測定を受けてもらうんだけど……あれ、どうしたの?」
女性担当者の話を聞いていると、急に他の担当者たちの動きがあわただしくなった。
「いや、AIM拡散力場の測定装置が壊れたみたいで……」
「さっきまで正常だったんじゃないの?」
「正常だったんですけど、能力開発が終わったとたんに異常な値を示すようになってしまって」
どうやらAIM拡散力場の測定装置が壊れたらしい。しかし、能力のレベル判定は能力の使い方や精度なんかも加味されて決まるはずだから、AIM拡散力場の強さだけでの判定はされないはず。そうなると、他の能力測定を先にすることになるのだろう。
「仕方ないわね。それじゃー神代君、こっちに来てちょうだい」
「はい」
女性の担当者が歩き出す。思ったとおり他の測定を先にするようだ。ついていった先は研究所の広めの運動場のような中庭で、大きさの違う金属の塊がいくつか置いてあった。
「まずはこれを真上に持ち上げるようなイメージをしてみてもらえる?」
「はい」
担当者が指差したのは一番小さい金属の塊、大きさは縦、横、高さともに20cmぐらいだろう。
「いきます」
担当者に一言声を掛けてから金属の塊を真上に持ち上げるように念じる。念じた瞬間目を瞑ってしまったが、特に手ごたえのようなものはなかったのでそのまま目を開けてみた。
「あれ?」
金属の塊があった場所には何もなく、上を見上げてみても特に何も見つからない。担当者のほうを見てみると、目を点にして固まっていた。
「どう……なったの?」
「反応が消滅しました」
「彼の能力ってサイコキネシス系じゃなかったの?」
「はい、そのはずです」
「テレポーター系って可能性は?」
「その可能性はないと思います。持ち上げるイメージでテレポートさせるのも無理がありますし」
「神代君、ちゃんと持ち上げるイメージした?」
「はい」
俺の能力開発担当者の3人が慌てだした。1人はAIM拡散力場を測定する機械の修理をしていてこの場には来ていなかったのだが、すぐに呼び出されて今の俺のデータ解析に全員で取り掛かったようだ。
そう言えば、俺の能力のパラメーターってどうなってるんだろう。そう思って自分のパラメーターを確認してみる。
「何これ……」
思わず声に出してしまっていた。ちなみに能力開発担当者たちは解析に必死で俺の声には気づかなかったようだ。
まず驚いたのが俺の能力のパラメーター値。『学園都市製超能力』という項目が追加されていて……元々探そうとしていたのがその項目なのだが、その場所のパラメーター値が異常すぎてすぐに見つかったのだ。
どういう基準になっているのかは分からないが、パラメーターの数値は基本的にどのパラメーターでも1万が一般人の平均値だ。例外として、RPG系のMPパラメーターなどはそれぞれのゲームに合わせた数値になっている。そして、1万が平均のパラメーターを俺は10万程度に設定しているのだが、学園都市製超能力の項目だけが……万……億……兆……100兆を超えているのだ。もしかしたら、AIM拡散力場の測定装置が壊れたのって、このせいかもしれない。
『学園都市製超能力』のパラメーターの異常さに隠れて気付くのが遅れたが、その下には『演算能力』のパラメーターがあり、それも1億を超える数値が入っていた。
取り敢えず、異常な値になっている学園都市製超能力と演算能力のパラメーターを100万程度に書き換える。一応1万を平均値とするなら、6割がレベル0ということで平均値をかなり引き下げているはずである。そして、値を10倍に設定しても実質の力は1.5倍程度にしかならないことを考えれば、100万の設定はそれほど高レベルにならないだろう。
パラメーターを設定したので確認のために二番目に小さい金属の塊を持ち上げてみることにした。持ち上げるイメージをしてみると、イメージの中でずっしりとした重さを感じることが出来た。当然金属の塊はびくともしていない。この金属の塊は縦、横、高さが30cmぐらいずつあるので鉄で出来ているなら200kgぐらいにはなるはずだ。これを持ち上げたらどのレベルに判定されるのか分からないが、せめてこのぐらいは持ち上げる値に設定しておこうと思う。
学園都市製超能力や演算能力のパラメーター値を少しずつ上げながら、金属の塊を持ち上げられるかどうかを確認していくと、パラメーター値2000万で何とか浮かせることが出来た。しかし、精神的にというか脳がというかかなり疲れたのでパラメーターは5000万まで上げておくことにした。
一旦休憩を入れてから再び持ち上げてみると、意外と楽に自分の身長より高い位置まで持ち上げることが出来る。更に高く持ち上げるイメージをすると、10mぐらいの高さまで持ち上がったのだが、降ろす時に失敗してその金属の固まりを地面に落下させてしまった。
「何事!?」
機材のモニターを見ていた担当者が落下の衝撃音に驚いてこっちを見る。さすがに200kgほどあると思われる金属の塊が、10mの高さから落下しただけあって地面がへこんでいた。そして、金属の塊は元々あった位置からかなり離れた場所に転がっていた。
「それを動かしたの?」
「ええ、まあ」
「どのくらい持ち上げた?」
「多分10mぐらいですかね……落としちゃいましたけど」
「10m……それなら、こっちは持ち上げられる?」
「やってみないと分かりませんが、ちょっと休ませてください」
「そうね、少し休憩してちょうだい。その間に測定の準備をしておくから」
「はい」
近くに自動販売機が見えたので行ってみると、アニメで見たような銘柄のジュースが並んでいた。取り敢えず味のハズレがなさそうなヤシの実サイダーを飲んでみる。思ったとおりココナッツミルクに炭酸を入れたような、当たり障りない普通に美味しいジュースだった。
「それじゃ、これを持ち上げてみて」
「はい」
休憩が終わるとすぐに能力の計測に取り掛かった。今回持ち上げるのは縦、横、高さがそれぞれ50cmほどの金属の塊だ。金属がアルミニウムだとか中が空洞になっているというなら別だが、この大きさになってくると恐らく1t近い重量があるはずだ。
「いきます」
一声掛けてから持ち上げるイメージをしてみる。イメージの中でずっしりと重さを感じるが、何とか持ち上がりそうだ。30cmの塊を持ち上げた時に気付いたのだが、イメージの中の持ち上げるポイントによって、なかなか持ち上がらないところと簡単に持ち上がるところが存在する。しばらくはポイントを探って、一番持ち上がりやすそうなポイントを定めると、一気に持ち上げてみた。
「おぉーっ!」
金属の塊は1m少々持ち上がった。しかし、それ以上は簡単に上がっていかなかった。どのくらいの時間が経過したか定かではないが、もっと高く持ち上げるどころかその高度を維持するのも限界になって、俺はそのまま金属の塊を降ろした。
「おつかれさま、かなり良い結果が期待できるわよ」
「はぁ、そうですか」
能力が発現したのは俺のはずなのに、なぜか担当者のほうが嬉しそうにしていた。俺の能力開発を担当したことで、俺を研究に使いやすいとかそういうことなのだろうか。しかし、サイコキネシス系というただ物を動かすだけの能力が研究にどう役立つのかが全然分からない。
「あとはAIM拡散力場の測定さえ出来れば能力名が確定してレベルも確定できるんだけどね……まー、そっちのほうは後日になるかもね」
「はぁ、そうですか」
AIM拡散力場の測定装置は壊れたんじゃなくて、俺の異常なパラメーターをそのまま認識しただけで、実際には壊れてない気がするけどさすがにそれを言うわけにはいかないだろう。
「それでも、まず間違いなくレベル4、大能力者で確定だと思うわ」
「はぁ、そうですか」
もう少し下、レベル2か3辺りを狙っていたのだが、意外と高くなってしまった。やっぱり50cmサイズを持ち上げるべきではなかったのかもしれないが、今更パラメーターを変更してレベル2か3に判定しなおしてもらうというのはさすがに無理がある。
「ところで、さっきから同じ返事しかしてないわよ」
「はぁ、そうですね。能力使ったら何て言うか脳が疲れたみたいな感じで……」
「能力を限界まで使うとそうなるみたいね」
「はぁ、そうですか」
最後のはわざとである。担当者と話している間に脳の疲れは取れてきているので、すでに会話するぐらいなら問題ない状態になっている。
「あなたねぇ……」
担当者もそれが分かったのか呆れた様子だった。
後書き
ここから先は一方通行……じゃなかった、ここから先は更新ペースが落ちますので、気長にお待ちください。
8/7 すっかり忘れてました。通帳作ってるのに印鑑が無かったことに気付いて修正しました。
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