展覧会の絵
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第十七話 死の島その十五
「一人もね」
「そうだよね。僕もね」
「けれど猛がね」
「僕がって?」
「あの時。体育館裏で」
あの四人を撃退した時のことを話すのだった。
「あいつ等を退けてくれたから」
「それは雅もじゃない」
「いえ」
猛の言葉にだ。雅はまずは首を横に振った。
そしてそれからだ。こう猛に言ったのである。
「私一人じゃ絶対に」
「退けられなかったっていうんだ」
「そう。一度負けたから」
だからだというのだ。
「それは絶対にできなかったわ」
「だからなんだ」
「そうよ。私だけでは無理だったわ」
「それを言うと僕もだよ」
猛もだ。こうその雅に話す。
「とてもね。僕だけだとね」
「あいつ等は撃退できなかったの」
「うん、数の問題じゃなくて」
四人、その数ではないというのだ。猛が一人でそうできなかったであろう理由は。
「雅も毅然としていてくれたから」
「横にいる私が」
「あそこで雅が負けていたらどうしようもなかったよ」
立ち向かうどころではなかったというのだ。そうなっていれば。
「僕も雅が負けていなかったから」
「だからだったの」
「そうだよ。つまりこの場合は」
「私と。それに」
「僕もいて。二人いたからね」
それでだ。あの四人に勝てたというのだ。
「だから勝てたんだよ。あいつ等に」
「そうなのね。私達二人だから」
「一人は弱いよ」
自分だけの強さ、それに過ぎないというのだ。
猛もこれまではそうしたことはわからなかった。だがあの時雅をホームから救い一夜を共にし彼等を二人で撃退した時にだ。そのことがわかったのだ。
それでだ。今こう言えたのである。
「けれど二人だとね」
「違うのね」
「うん、違うよ」
まさにそうだというのだ。
「二人だと」
「だから私達も今こうして」
「二人だと。強いよね」
「私も一人だと」
負けていた。偽りの快楽に溺れていた。だが二人ではだった。
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