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おっちょこちょいのかよちゃん

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262 二度目の取引

 
前書き
《前回》
 かよ子達は杖を狙いに来たゲオルギーという男を新たに強化した杖で撃破する。だが直後に赤軍の政治委員・吉村和江が現れ、かよ子達はまたすぐに戦う羽目になる。その頃、レーニンは黒魔術を操るラ・ヴォワザンを呼び出し、杉山の幻を作るように依頼する。そして平和主義の世界の本部ではフローレンスは捕虜として監禁している赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木と面会していた!! 

 
 吉村の敵の能力を無効化させる銃は関根の刀によって防がれた。
「お前の銃の能力(ちから)はこの刀に吸い取らせて貰った!」
「な・・・!!」
「跳ね返りを喰らえ!」
 関根は刀を振るった。吉村はまた銃で迎撃する。だが、弾切れを起こしてしまい、慌てて避けた。吉村は飛行機へ撤退する。
「飛行機へ逃げるつもりだ!」
「逃さぬ!!」
 大政は槍を投げた。飛行機の胴体が一部欠けた。
「ふ、この飛行機は普通の飛行機と違って頑丈にできてるのよ!」
 かよ子達は先回りを図った。
「なら眠らせてやるぜ!」
 大野が草の石の能力を行使した。地面から巨大な花が咲き、花粉を撒き散らす。吉村が眠りについた。
「大野君、ありがとう!」
「はて、捕まえるとするか」
 だがその時、飛行機から耳が痛くなるような音波が聞こえた。皆慌てて耳を塞いだ。
「な、何、これ・・・!?」
 その隙に吉村の姿が消えた。飛行機のドアが自動で閉まり、急に離陸していく。
(に、逃げられ、た・・・!!)
 かよ子達は飛行機の姿が見えなくなるまで音波に苦しめられるのだった。

 まき子は朝食を忘れて管制室で娘の様子を見ていた。
(赤軍の人間が敵の本部に戻ってく・・・)
「敵の方が撤退したようだ。どういう状況か連絡してみよう」 
 イマヌエルは通信機で連絡を試みた。
「こちらイマヌエル。藤木茂救出班の皆、状況はどうなっている?」
 しかし、応答がない。
「何かあったのかな?」
「まさか・・・!?」
「いや、そんな事はない」
 だが、少しして返答が来る。
『こちら椎名歌巌!応答遅くなり申し訳ない!只今赤軍の吉村和江と交戦したが、取り逃がした!奴が乗っていた飛行機の変な音波で耳が痛く追い討ちにも失敗した!』
「了解した。大変だったろう。朝食を用意するので休んでくれたまえ」

 かよ子達は飛行機が過ぎるまで起き上がる事ができなかった。なぜか武装の能力(ちから)をもってしても防ぐ事ができなかった。
(あの嫌な音に杖を向けて音波を出して返り討ちにできればよかったのに・・・。どうしておっちょこちょいしちゃったんだろう・・・?)
「ああん、もううるさいなあ~。折角人が寝てるのに~、やんなっちゃうねえ~」
「儂は耳が痛くて大変じゃった。まる子の耳は大丈夫か!?」
 まる子と友蔵がようやく起きた。
「あんたらやっと起きたのかい」
「さっきまでオイラ達は赤軍の女と戦っていたんだブー!」
「お主ら、不謹慎過ぎるぞ!戦っている事に気付かずに爆睡するとは!!」
 関根やブー太郎、次郎長は呆れていた。他の皆も冷ややかな目でまる子と友蔵を見ていた。
「う、ご、ごめん・・・」
 二人は身体が凍り付くほど肩身の狭さを感じたのであった。

 朝食を終えた頃であろうとされる時にフローレンスは再び佐々木と西川のいる部屋に入った。
「朝食は如何でしたか?」
 二人共無言だった。
「まあ、私が来ましたのは食事の感想を聞きます為ではありませんからね。それでは本題に入りましょうか」
 フローレンスは一呼吸してから話を続けた。
「それでは以前赤軍の皆様が日本政府と取引を行いました時のようにまた私達と取引を行わせて頂きます」
 フローレンスは二人のトランシーバーを用意した。
「貴方達のリーダーであります重信房子や戦争主義の世界の長でありますレーニンに連絡をお願い致します」
 西川も佐々木も要求に応じるしか選択肢がないと思い、フローレンスから返されたトランシーバーで赤軍や東アジア反日武装戦線の面々、そしてレーニンにも通信を繋げた。西川が話を始める。
「こちら赤軍西川純。今平和主義の世界の長の前で通信を繋げている・・・」
「取引をお願い致しますと言ってください」
 フローレンスの言われた事を繰り返すように西川は言い続けた。
「その長から取引を頼まれた」
「内容は西川純と佐々木規夫さんをそちらにお返しします条件として・・・」
「私と佐々木を返す条件として・・・」
「我々の世界との戦いを終戦とさせて頂きます為に戦争主義の世界の方々も含めまして撤退をお願い致します」
「この世界の戦争を終わらせる為に撤退をお願いするとの事だ・・・!!」
『何ですって!?』
 この言葉に叫んだのは重信房子だった。
『貴女達にとって都合が良すぎるわ!!』
「そちらこそ日本政府に対しまして都合の良すぎる条件を出しましたではありませんか?」
『うるさい!』
「それでは要求に応じませんという事で宜しいですわね?」
『・・・!!』
 房子は何も返答せず通信を切断した。
(どうやら本部守備班にもこの危機を呼びかけました方が宜しいですわね・・・)
 だが、再び房子が通信を再接続し、応答させる。
『こちら重信房子。了解、要求に応じるわ』
「そうですか。それでは西川純と佐々木規夫をそちらの方まで連れていきます」
 だが、フローレンスは赤軍の長が要求を完全に呑んだ訳ではないと読んでいた。
(どちらにしましても本部守備班に連絡しませんと・・・)

 レーニンと杉山はフローレンスと赤軍達の会話をトランシーバーを通して一部始終を聞いていた。
「フローレンスが交換条件を出してきたぜ。要求をそのまま呑むか?」
「馬鹿馬鹿しい。一度赤軍が政府と取引を行った際にも裏で工作をしていたではないか。容易く要求を呑むわけにもいかぬ」
「だが、捕虜になった奴をそのまま見捨てる気でいいのかよ?」
「貴様、また奴等の元へ寝返ろうというのか?とんだコウモリ野郎が」
「ちげえよ。こっちも騙し討ちで返せばいいんだ。何しろあいつらも捕虜を返しに来る筈だ。そこで抹殺しちまえばいい。だからこそ赤軍や反日武装戦線が集団で行ってんだろ?」
「そうか、それではそうしよう」
 レーニンは赤軍に連絡を行う。
「こちらレーニンだ。平和を正義とする世界の長は西川純と佐々木を返しに動くはずだ。だが、こちらもまんまと要求を呑む気でいるな。撤退と共に守備についている馬鹿共やその長を抹殺するのだ。そうだ、それから今トロツキーが秀才の少年を奪いに行こうとしている。そちらもまた援護するのだ」
『了解しました!』
(上手く行くかな・・・?)
 杉山はふと喧嘩した親友と二人のある女子が気になった。
(大野・・・、お前は頑張ってるか・・・?俺はお前がいなくても寂しくないように大将になれるよう頑張ってるぜ・・・。それから山田、りえ・・・。お前らはどうだ?今の俺が許せねえよな・・・。だが、今はそれでもいい・・・!!)

 長山達は敵襲に備えて常に護符の所有者のさりや杉山の姉、まる子の姉に九州の中学生・尾藤海斗に異世界の人間・清正とテレーズと同行していた。皆は朝食を食べ終えていた。長山は杖の所有者の活躍を眼鏡を通して確認していた。
(山田、上手く活躍してたみたいじゃないか・・・)
「さてさて、私達は先に進んで取り返した場所の境界へ移動とするか」
 さりはそう思った途端、通信機が鳴った。皆通信機を取り出した。
『こちらフローレンス。皆様、只今こちらで確認しました結果、赤軍および東アジア反日武装戦線の人間が集団でこちらに侵攻しています!いつも以上の警戒をお願い致します!!』
「りょ、了解!!」
 通信を終了させた。
「赤軍や反日武装戦線が纏めて攻めてくるって事は・・・?」
 さりは懸念した。
「もしかしたら羽柴さりさんの護符や長山治さんを標的とする者も出てくると思います!」
 テレーズも警告した。
(また僕が狙われる、のか・・・!!)
 長山は嘗て自分がオリガという女や丸岡修という赤軍の人間に目をつけられていた事を思い出す。そして眼鏡で遠くの動向を確認した。
(あ、あれは・・・!!)
 長山は自分達の方に一人の人間が接近して来るのを確認した。
「こ、こっちに敵が一人来ている・・・!!」
「何!?赤軍か!?反日武装戦線か!?」
 尾藤が聞いた。
「いや、戦争を正義とする世界の人だよ!」
「何!?」
「追い返すわ!」
 さりは護符の能力(ちから)を行使した。移動に使用する飛行機を出現させた。皆はその飛行機に搭乗し、前進した。そしてさりは通信機を取り出した。
「こちら羽柴さり!赤軍とかはまた別の敵も接近!今返り討ちにするわ!」
『さり!気を付けるんよ!』
 母の声が聞こえた。
「うん!」
 そして20秒ほど過ぎて敵の姿が見えた。
「あいつやな!」
 尾藤がボールを蹴る。そしてさきこも宝石の能力(ちから)を行使した。打ち勝つ可能性を高める能力(ちから)を持つルビーが光り出す。ボールは相手に直撃した。
「うおおお!!」
 男が痛みを抑えながら近づいた。
「よく来たな・・・。護符の所有者、そしてシューサイなる少年・長山治!!」
「あんたは誰なのよ?」
「私はトロツキー。レーニン様の下で動く者だ!」
 さり達は強敵に会ったと思い、緊張が高鳴った。 
 

 
後書き
次回は・・・
「本部境界の激突」
 さり達の元にトロツキーが襲来した。トロツキーは長山とさりの護符を狙う為に執念を見せる。だが、その場には赤軍の救援も訪れていた。そしてりえを探し続けるあり達の元にはさらに別の戦争主義の世界の人間が訪れており・・・!? 
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