志士の怪談
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第二章
龍馬に都の怪異の話をすると龍馬は笑って言った。
「ではわしが通ったところにもか」
「そうしたものが出たとでごわすよ」
「話があるきに」
「そうでごわす、一条戻橋にはでごわす」
「安倍晴明さんのぜよ」
「式神がいるとでごわす」
その様にというのだ。
「言われているでごわす」
「昨日あの橋通ったぜよ」
「そしてあちこちにでごわす」
「そうした話があってか」
「そうした話を思い出しながら都を歩くと」
そうすると、というのだ。
「面白いでごわす」
「そうした話を信じていなくても」
「ははは、信じる信じないは人それぞれでごわす」
西郷は大きな口をさらに大きく開けて笑って話した。
「大事なのは楽しむことでごわす」
「そうした話をじゃな」
「あのナポレオン殿も」
仏蘭西の英雄である彼もというのだ。
「何でも怪談が大好きだったそうでごわす」
「ほう、あの人もか」
「その様です」
大久保も言ってきた。
「あの人はそうした話が随分好きで」
「それでか」
「よく話をしたり聞かれていたとか」
「それは意外じゃのう」
「吉之助さあの言う通りにです」
坂本を見つつ話した。
「こうした話は信じるか信じないではなく」
「楽しむことじゃな」
「はい、坂本殿は剣術の修行で江戸におられた時があったとか」
「ああ、北辰一刀流の道場にいたぜよ」
龍馬もそのことに応えた。
「それで毎日稽古をしてぜよ」
「免許皆伝だとか」
「まあわしは刀よりもこれぜよ」
拳銃を出して話した。
「これを持っちょるぜよ」
「そちらの方が役に立つので」
「身を護るにはこれぜよ」
大久保に笑って言うのだった。
「それで持っちょる」
「左様でありますな」
「そうぜよ、それで江戸にもじゃな」
「そうした話は多いですな」
「そうぜよ、七不思議なんてあるぜよ」
まさにとだ、龍馬は大久保に答えた。
「本所のところに」
「都は古くからあるので」
「それで尚更じゃな」
「はい、そうした話が多く」
それでというのだ。
「吉之助さあもよく知っています」
「最初覚えきれるか不安だったでごわす」
西郷は龍馬にこのことを微笑んで話した。
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