透明な宝
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第一章
透明な宝
難波三郎の趣味はビー玉集めだ、子供の頃からのもので七十五歳になった今でも集めている。
そうして集めたそれをいつも部屋のあちこちに飾っている、熱帯魚を大きな水槽で買っているが水槽の下にもだ。
熱帯の草と共に置いている、孫で高校生の佐緒里黒髪を長く伸ばし切れ長のやや垂れた目と日焼けした肌に程よいスタイルの一六〇程の背の彼女はそんな祖父を見て言った。
「ビー玉って奇麗だけれど」
「それでもだよな」
白い髪の毛がかなり薄くなり穏やかな面長の皺だらけの顔の祖父はこう返した、背は一七〇程で落ち着いた外見である。
「安くてな」
「何でもないものよね」
「そうだよ」
水槽の中のビー玉達を見て話す、その上ではグッピーやネオンテトラが泳いでいる、
「結局は」
「お店に行ったら売っていて」
「本当に何でもないさ」
「けれどそれでもなのね」
「お祖父ちゃんは好きなんだよ」
孫娘に穏やかな声で話した。
「子供の頃からな」
「そうなのね」
「煙草は吸わないしギャンブルや女遊びもしないがな」
それでもというのだ。
「これだけはな」
「好きなのね」
「ああ、熱帯魚を飼って」
そうしてというのだ。
「ビー玉を集めることがだよ」
「お祖父ちゃんの趣味なのね」
「そうなんだよ」
「お陰でお金には困ってないわ」
五十年連れ添っている妻の美代子が言ってきた、実に優しそうな小柄な老婆である。髪の毛は真っ白で短い。
「お祖父さんってお金かける趣味持ってないから」
「熱帯魚はかかるだろ」
「知れてるわよ、大事にしていて長生きもしてね」
それでとだ、夫に返した。
「高いお魚は買わないから」
「だからかい」
「ええ、そのこともよかったわ」
趣味に金をかけないこともというのだ。
「私にとってもね」
「そうなんだな」
「それで集めたビー玉をよね」
また孫娘が言ってきた、同居しているので気兼ねがない。
「飾ってるのよね」
「家のあちこちにな」
「そうよね」
「それでアクセサリーみたいなものを造ってな」
見れば数珠つなぎの様にしてネックレスやブレスレットの様にしたものが部屋の壁にかけてあったりする。
「時々でも磨いてな」
「奇麗にして」
「光ったままにさせておくんだ」
「そうしてるのね」
「わしはこれが好きなんだ」
「子供の頃から」
「ああ、だからこれからもな」
孫娘に微笑んで話した。
「ビー玉を集めてな」
「飾ったり磨いたりして」
「大事にしていくな」
「そんなにいいものかしら」
佐緒里は祖父の話をここまで聞いて首を傾げさせた。
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