犬を裏切るなら人間にも

「自分達の都合でな」
「いつも人を裏切ってか」
「それで友達と言っていた人が困ってもな」
「助けなかったか」
「ずっとな、だから本家さんもだ」
「ふわりを捨てたとあの連中が言ってその場で縁切りしたな」
「それまでそうしたことがあってだ」　
　それでというのだ。
「今度何かしでかしたらな」
「ああするつもりだったんだな」
「本家さんだけでなくてな」
「他の親戚の人達もか」
「人は見てるんだ」　
　父はこうも言った。
「その振る舞いをな」
「それでか」
「皆もうな」
　本家だけでなくというのだ。
「あいつ等が今度やらかしたらな」
「ああするつもりで」
「実際にしたんだ」
「そうなんだな」
「それで今はだ」
「あの娘さん達の親権を取り上げられてか」
　その二人を見つつ話した。
「それでか」
「禁治産者にもなってな」
「旦那さん会社もクビになって」
「飲んだくれて生きているだけのな」
「廃人になったんだな」
「夫婦共々な」
「無様な末路だな」
「全くだ、そうはなりたくないな」
「なりたい筈ないだろ」
　これが洋介の返事だった。
「誰がだよ」
「そう思うならな」
「それならか」
「そうだ」
　まさにというのだ。
「お前もな」
「ああならないことだな」
「屑にはなりたくないだろ」
「そしてあんな末路もな」
「そうだろ、だったらな」　
　それならというのだ。
「いいな」
「ああ、あの連中は反面教師にしてな」
「生きていくな」
「そうしていくよ、ふわりにもな」
　自分達の家族も見て話した。
「これからもな」
「家族として接してだな」
「おもちゃじゃなくてな」
　あの夫婦と違ってというのだ。
「家族としてな」
「接してな」
「一緒に暮らしていくよ」
「そうしろ、何があってもな」
「あんな連中になりたくないからな」　
　こう言ってだ、洋介は妹達を守る様にして礼儀正しく座っているふわりを見た。二人は寝ている妹達を優しい目で見守っていた。それを見る彼も自然とそうした目になっていた。その夫婦とは全く違う目に。


犬を裏切るなら人間にも　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２３・１・２４