魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵
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本編
二十二話~契約
前書き
少々短めです。
side 士郎
機動六課の本部が次元航行艦アースラとなった初日。
前線隊員たちは全員がミーティングルームに呼び出された。
「さて、今日皆を呼んだんは……」
こちらを一瞥したマスターが話を続ける。
「士郎たちの能力について、フォワード陣にも知っておいてもらおうと思ってな」
そう語りながら私に念話をしてきた。
(サーヴァント云々は伏せとこ。話が厄介になる)
(ランサーの転移が説明がつかんのではないか?)
(魔術はあの子たちにとって異界の技術や。なんとでもなる)
そういってフォワードたちを見つめ、語り始めた。
話した内容はランサーは槍を手元に持ってくる転送、ルーンと言う神秘を扱う魔術師であること。
魔力を扱うが、どちらかと言えば神秘に近いもののため、奇跡に近いこともできる。先日の転移がそう。私は宝具と呼ばれる過去の遺物を生み出す魔術を扱う。ギンガの傷を治した鞘などはその中でも最高位の存在である、ということくらいだ。
一通りの話が終わった後、解散になったが、なのは、フェイト、シグナム、ヴィータ、私、ランサーは残された。
「さて、本題はここからなんや。あの子たちには聞かせられん話やからな」
「サーヴァントに関係ある話……だよね?」
フェイトの言葉に静かにうなずくマスター。
「そうや。で、ランス、士郎。まだ私らに隠してることあるやろ?」
「……なんのことだ?」
「とぼけんでええ。もうわかっとるんや。私からあんたたちにちゃんと魔力供給がされてないことくらいは」
なのはたち四人は驚愕の表情でこちらを見る。
「……いつ気づいた?」
ランサーの問いかけに
「陳述会の日や。士郎が飛ばしてきた念話。アレは回路を通して行うものやったんやろ?だけどそれがまともに繋がらんかった。それにや。冷静に考えてみれば自分の能力を十全に使えん戦士がおるか?本来ならあり得へん。士郎が投影の際に毎回カートリッジを使うんも魔力供給がされてないのを示してるんやないか?」
「………見事な推理だ。その通りだよ」
大したものだ。もう少し位は隠し通せると思ったんだが……
「で、二人に聞きたい。マスターを変える、ってのは可能なんか?」
「「はやて(ちゃん)!?」」
なのはとフェイトは驚いている。それに対しシグナムとヴィータは微動だにもしない。
「はぐれサーヴァントとの再契約って言うのはあるがよ、それには令呪が………っと、一つだけあったな、無視できる方法がよ」
こちらを見るランサー。だが、アレは不可能だろう。
「あるんか!?」
「ああ。だが、無理だろう」
「どうしてなの?」
あるのにできない。そのことが疑問なのかなのはが問いかけてきた。
「君たちに宝具の真名解放が出来るならば可能だ。しかし、担い手でもないのに真名など解放できるものではない」
「やってみるだけやってみる、って言うのは?」
「……やってみるだけなら問題はないが……その前に、なぜそんな考えに至ったのか君の考えを聞かせてくれ、マスター」
少しの間迷っていたようだが、
「そやな。知っといてもらうべきやろ。ランスはわかっとるんやろ?」
「……一応、な」
「なら説明するよ。ヴィヴィオを助けられなかった理由、それは私にあるんや」
「はやてちゃん、いきなり何を……?」
「私がランスに下した命令はシャマルとザフィーラを守ること。けど、その判断は間違いやった。その令呪の強制力で捕えられたはずの敵戦力は取り逃がした。それに、今後を考えれば二人が全力を出せんってのは痛手になる。だからパスがうまくつながってない私がマスターやっておくんは戦力的にもよくないことや」
なるほどな、そういうことか。私は従うのはやぶさかではないが、騎士であるランサーは主替えには反発するだろうな。
「だとしても、マスターをホイホイ乗り換えるってのは俺の主義に反するからな。あんまりやりたくねえんだが……」
「それについてはマスターと主を別物と考えればエエやろ?何も私を裏切れ、って言ってるわけやないんやから。魔力供給をしてもらうだけなんやし」
「そもそも、うまくいくかわからんことの話をするのは性急ではないか?」
契約替えと言えばアレだが、真名解放などできるわけがないしな。
「とりあえずやって見るだけやってみよ。で、その宝具はどんなや?」
「これだ」
投影するのは紫に鈍く光る歪な短刀。
「この変な形のナイフが?」
「そうだ。名を破戒すべき全ての符という」
「魔女殿の宝具だな」
「ランス、知ってるの?」
ランサーはゆっくりと語りだした。
「ギリシャの魔女メディアの裏切りの伝説が形になった宝具で、あらゆる魔術的な契約を無に返し、再契約を結ぶこともできる」
「なるほどな、問題は……」
「新たにマスターとなる人物に使ってもらわねば再契約にならん、ということだ」
そう言い放った私に答えたのはなのはだった。
「私がやるよ!」
side なのは
知らなかった。士郎君は魔力供給がまともにされていなかったんだ。
それなのに……
そんな時にマスターを変える方法がある、との発言。ヴィヴィオを救うため、なにより大切な人の力になりたくて、
「私がやるよ!」
気が付いたらそう言っていた。
「なのはちゃんか……だけど、また一人で二人分を受け持ったら同じ結果になる可能性がある。だから……」
「それなら私もやるよ」
「フェイトちゃん………」
フェイトちゃんも名乗り出てくれた。
「これ以上はやてだけに負担はかけられないからね」
「そうか……ありがとうな」
笑顔でお礼を言ってくるはやてちゃん。
「じゃあ、始めようか」
短刀を受け取り、士郎君と向かい合う。
「真名解放ってどうやるの?」
「私にそれを刺して、魔力を込めて名を言うだけだ。だが、うまくいく可能性は低いぞ」
「それでも………やるよ」
「そうか」
私は士郎君の力になりたい。だから、きっと成功させてみせる!
そして私は士郎君の手の甲に短刀を突き立て、
「ルール、ブレイカー!!」
魔力を込めて言い放った。
短刀は光を出し、私の魔力を吸い上げていく。やがてそれが収まると……
「成功やな……令呪が消えた」
はやてちゃんのつぶやきに私が左手を見ると令呪が一画刻まれていた。
「これは………」
「どないした?」
「ステータスが上がっているようだ。それに……回路もいい感じだ。これなら余程のことがなければ投影にカートリッジを使う必要もないだろう」
「それはよかった…きゃ!?」
魔力をかなり持っていかれたからか、足がもつれて転びそうになった。が、
「大丈夫か?」
士郎君が先回りして受け止めてくれた。のだが………
周りから見れば抱き合っているように見える体制になってしまった。
士郎君を意識し始めたせいか顔が熱くなっていくのがわかる。
「おやおやぁ?お熱いですなぁお二人さん」
はやてちゃんがにやにやしながら言ってきたことでさらに顔が火照る。
「あまり茶化すな、なのはも魔力を消耗して………なのは?どうしたんだ?」
士郎君が反応のない私を心配したのか覗き込んできた。か、顔が近い!
「にゃにゃにゃにゃんでも!?」
「何でもなくはないだろう!とりあえず医務室だ!」
「ふぇ?えええええええええ!?」
お姫様抱っこで抱えられて連れて行かれてしまった。
side フェイト
「行っちゃった………」
「鈍感は罪やな……」
「はやて、どういうこと?」
「……そうやった。フェイトちゃんは女版士郎やったな………」
はやてが遠い目をしている。どうしたのだろうか……?
「面白そうだな、その話聞かせてくれよ」
「お、ランス気になる?ええよ。あれは小6の冬の事や……」
あの二人、当初の目的忘れてないかな?
「昔話は後にして、やっちゃおうよ!」
「おう、じゃよろしく」
ランスのノリが軽い………
「真面目にやろうよ!」
「せやかて、頑張るのはフェイトちゃんだけやで?」
「そうそう、俺は突っ立ってりゃいいだけなんだからよ」
この二人、もう嫌。
振り回されて悔しいから仕返しすることにした。
「えい!」
「ん………?痛ってえええええええ!?」
なのはは手の甲に刺していたが、私はお尻に思いっきり突きたててやった。
「ルールブレイカー!」
結果としてはだいぶ魔力が持っていかれたが、上手くいった。
「あの……フェイトさん?抜いてください……」
「ふん!」
そのあとバカのお尻に短刀を刺しっぱなしにしておいた。
「いや~、ランス、ドンマイ♪」
「そう思うならさらに深く刺そうとすんのはやめろおおおおおお!!!」
はやてがそれをいじっている。ランスはおかげで悶絶している……ちょっとだけ可愛いかも。
「アーチャー!!早く破棄してくれええええええええ!!!!」
ランスの切実な叫びがミーティングルームに響いていた。
………なんだかんだで彼と過ごす日々は楽しい。いじられるのは好きじゃないけど、嫌なわけではない。そんな日々を守るために、出来ることをやっていこう。一人ではかなわなくても、皆がいれば、きっと大丈夫だから。
後書き
短いですが大事な話です。
マスターが変わりました。ちなみに、真名解放に関してですが、Cランク宝具の開放がAAAクラスの魔法と同じくらい、と考えてください。(士郎は別)
マスターじゃなくなってもはやて節は変わりません。むしろ悪化します。
では今回はこんなところで~
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