角煮からしゃぶしゃぶに

　　　　　　　　　　　　　　　　角煮からしゃぶしゃぶに
　忠信勉は会社から帰って夕食の席に着いて妻の伊織に尋ねた。
「しゃぶしゃぶにしたんだ」
「ええ、豚肉のね」
　妻はふくよかを通り越して肥満している夫に答えた、見れば彼は頬が桃の様になり脂ぎっていて細い目は肉でさらに細く見えている風になっている。黒髪はおかっぱにしていて背は一七五あり色白である。
「それにしたの」
「何でかな」
「何かなって決まってるでしょ」
　一六〇位の背で黒い髪の毛をセットして伸ばしている彼女は即答した、はっきりした目で二重で
細面で胸はあるがすらりとしたスタイルだ。
「あなたが県紺診断で引っ掛かったからよ」
「それでなんだ」
「そう、脂肪率を減らさないと」
　その為にというのだ。
「これからはね」
「こうしたお料理にするんだ」
「あなた豚肉好きでしょ」
「角煮とか豚カツとかね」
「豚肉はいいけれど」
　それでもというのだ。
「これからはそうしたお料理でなくて」
「しゃぶしゃぶなんて」
「他のカロリーの低いものにしていくから」
「そうなんだ」
「さもないとね」
　妻はさらに言った。
「もっと太ったら」
「健康によくないから」
「あなた運動しないしね」
　そうしたタイプだからだというのだ。
「これからはね」
「食事でなんだ」
「やっていくわよ、いいわね」
「それじゃあ」
　特に人に逆らう性格ではない勉はそれならと応えた、そして豚肉を食べ妻が出した菊菜や椎茸に白菜というものも食べていった。