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ハッピークローバー

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第五十六話 かなり飲んだのでその十

「絶対に嫌だよ」
「最悪の死に方よね」
「お家もお金もお仕事もなくて」
 そうしてというのだ。
「周りに人もいなくて」
「それで路頭に迷って」
「それで一人寂しく餓えてか病気で死ぬなんて」
 それこそというのだ。
「最悪なね」
「死に方よね」
「だからそんな人にはなりたくないよ」 
 こう言うのだった。
「俺そう思うよ、だから気をつけて」
「自分がそうならない様に」
「努力して時々でも自分を見つめなおして」
 そうしてというのだ。
「考えや行いをあたらめていく様にね」
「していくのね」
「そう考えてるよ、しかしどう考えてもわからないのは」
 達川は首を傾げさせてだった、一華に話した。
「その人自分をこの世で一番偉いと思っていたそうだけれど」
「どうしてそう思えるのか」
「それがわからないよ」
「それね、私もよ」
 一華はまた唐揚げを食べた、そうしてだった。 
 おかわりで入れたビールを飲んでだ、また言った。
「だって何もしたことなくて出来なくてでしょ」
「お金も地位もなくてね」
「しかも奥さんに逃げられてお仕事もなくて」
「それで人のお世話になってというか寄生して」
 その様にしてというのだ。
「親戚からお財布落としたとか言ってお金借りて」
「やばいところからもね」
「そうもしてね」
「生きていて」
「勿論学歴もないし」
 社会的なステータスの一つになるそれもというのだ。
「人脈とかもね」
「ないわね」
「本当に何もなくて」
「食べさせてもらってお金借りて」
「そうして生きているのに」
「どうして自分を偉いと思えるか」
「当然お料理とかも出来ないしね」
 こうしたこともというのだ。
「そんな無能と言っていいのにね」
「それもこの世で一番偉いとまで」
「俺それがね」
「どうしてもわからないのね」
「そうなんだ」
 これがというのだ。
「訳がわからないよ」
「根拠なくとかかしら」
「いや、やっぱり何か思うなら」
「根拠があるのね」
「その筈だからね」
 それでというのだ。
「その人なりにね」
「自分をこの世で一番偉いと思える根拠があったのね」
「誰がどう見てもどうにもならない」 
 そうしたというのだ。
「箸にも棒にもならないどころか」
「どうしようもない人ね」
「それこそ周りが必死に動いている中で一人ぼーーっとしている様な」
 これまた先程話した様なというのだ。
「そんな人の方が遥かにましな」
「そんな人でも」
「やっぱり何かしらね」
「その人なりの根拠があるのね」
「そうじゃないと思えない筈だけれど」 
 その様にというのだ。
「長男だからって甘やかされた結果なら」
「これまた酷い親御さんに」
「それでもそんなことでそこまで思えるかって」
 自分がこの世で一番偉いと、というのだ。 
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