機動6課副部隊長の憂鬱な日々
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第62話:喧嘩したら、すぐに仲直りしましょう
・・・翌朝。
俺ははやてに呼び出された時間の10分前に部隊長室に向かった。
ドアの前に立つと一度深呼吸をしてからブザーを鳴らした。
「どうぞ」
はやての声を聞いた俺はドアを開けた。
部隊長室に入ると自分の席に座ったはやてと目が合った。
「・・・早いな」
はやては俺の顔を見ると,不機嫌そうな顔をした。
「悪い。会議の前に少しだけ話がしたくて」
「なんやの?」
「昨日は言い過ぎた。悪かったと思ってる。許してほしい」
俺はそう言って深く頭を下げた。
「ちょっ・・・待って!突然何なん!?別にゲオルグくんだけが
悪いわけやないやろ。とりあえず頭上げて!」
「許してくれるのか?」
俺は頭を下げたままそう言った。
「許すもなにも,昨日のことはお互い様やろ。私もゲオルグくんも
疲れきってて冷静さを欠いとった。昨日のことの責任は
ゲオルグくんだけやなくて私にもあったと思ってるんよ。
そやから,仲直りしよ」
はやてはそう言い,立ち上がってそばに来ると右手を差し出した。
俺が頭を上げ,はやての顔をみるとはやては笑っていた。
「仲直りの握手や」
俺ははやての手を握るとはやてに話しかけた。
「さっさと仲直りできてよかったよ」
「私もや。ゲオルグくんとはやっぱり軽口が叩ける仲がええわ」
「そうだな」
そう言って,俺とはやては笑いあった。
「でや,地上本部と隊舎の戦力配分をどうするか相談したいんよ」
なのはとフェイトが部隊長室に来ると,俺達4人はソファーに座り
公開意見陳述会警備の戦力配置についての話し合いを始めた。
「はやてちゃんの意向はどうなの?」
なのはが尋ねると,はやては口を開いた。
「私・隊長・副隊長・フォワード陣とギンガにリインは地上本部に
配置したいと考えてる。で,私となのはちゃんとフェイトちゃんは
会場内で要人警護やね」
はやてがそう言うと,フェイトは首を傾げた。
「ねえはやて。公開意見陳述会の会場ってデバイスの持ち込み禁止だよね。
そんな状況だと私たちは誰一人戦力にならないんじゃないかな」
「フェイトちゃんもそう思うか・・・」
はやてはそう言うと,腕組みをして俯いた。
「なあはやて。なんで会場内に戦力を配置する必要があるのか
説明してくれないか」
俺がそう言うと,なのはとフェイトは頷き,はやては小さく唸り声を上げた。
「公開意見陳述会で要人が殺されるんだけは避けたいんよ。
今までは無かったパターンやけど,地面に潜れる能力を持った
戦闘機人が直接会場内に潜入したら?とか考えると,
どうしても,会場内に要員は配置しときたかったんよ」
「はやて。でも・・・」
俺がはやてに向かって話そうとすると,はやては手を上げて話を遮った。
「判ってる。フェイトちゃんやゲオルグくんの言うとおり,
デバイスを持たん魔導師は戦力としては全く役に立たんのも事実。
そやから,会場内には私一人が残る」
「はやてちゃん・・・」
はやての毅然とした言葉を聞き,なのはは心配そうにはやてを見つめた。
「ん?心配してくれてんのか?おおきにな,なのはちゃん。
そやけど,私は部隊長としての責任において,会場の中におらなあかんと
考えてる。ここだけは譲るつもりはないよ」
はやての目には強い意志が宿っているように見えた。
「なのは。はやてがここまで言うならもう意見は変えないだろうから,
中ははやてに任せよう」
「ゲオルグくん・・・」
「判ってくれておおきにな,ゲオルグくん」
はやての言葉に俺は黙って頷いた。
「じゃあ,あとは地上本部と隊舎の戦力配分をどうするかだな。
どっちが本命かが判れば簡単なんだけど・・・」
俺はそう言ってフェイトの方を見た。フェイトと目が合うと
フェイトは首を横に振った。
「そこまで捜査は進んでないよ。ごめんね」
フェイトは済まなそうにそう言った。
「いや,俺の方でも探ってるけどそういう情報は取れてないからね。
しょうがないでしょ」
俺はそう言うと,腕組みをしてソファの背にもたれかかった。
「はやての案だと,隊舎の方に航空戦力がないだろ。
俺としてはそれが不安でね・・・」
「シャマルとザフィーラがおるやん」
「シャマルには索敵をやってもらわないといけないし,ザフィーラには
ヴィヴィオに張り付いてもらうつもりだからな・・・」
「それで副隊長のどっちかが欲しいと・・・」
はやてはそう言うと,なのはとフェイトの方を見た。
「私とフェイトちゃんが外の警備につけるんだったらシグナムさんと
ヴィータちゃんには隊舎にいてもらっても大丈夫じゃないかな?」
なのははそう言って,フェイトを見た。
「そうだね。それに万が一の場合にははやても外に出てくるでしょ?」
フェイトに尋ねられたはやては少し考えてから頷いた。
「そうやね。ほんならシグナムとヴィータには隊舎に
残ってもらうことにしよか」
「悪いな」
俺がそう言うとはやては首を横に振った。
「ヴィヴィオがスカリエッティに狙われとる可能性が高いことを考えると
それくらいの備えは必要やろ。地上本部の方には他の部隊もおるんやしね」
はやての言葉にフェイトとなのはも頷いた。
はやてはそれを見て,満足げに頷いた。
「ほんなら,隊舎側の指揮はゲオルグくんに任せるからな。頼むで」
「了解」
俺がそう言ったところで,来客を告げるブザーが鳴った。
「誰や?」
はやてはそう呟くとドアに向かってどうぞと言った。
ドアが開くと,白衣を羽織ったステラさんが現れた。
「失礼するぞ・・・お,幹部連中が揃ってるじゃないか。ちょうどいい」
「何なんです?ステラさん」
はやてがそう言うと,ステラさんは自慢げに笑った。
「携帯用AMFC発生装置を10個作り終わったのでな。知らせに来た」
「ホンマですか!?めっちゃ早いやないですか」
「お前が公開意見陳述会に間に合わせろと言ったのだろう?」
「いや,そうなんですけど・・・。でも助かりました。ありがとうございます」
はやてはそう言うと,ステラさんに向かって頭を下げた。
「礼はいい,仕事だからな。では,メカニックルームまで取りに来てくれ」
「はい。なのはちゃん,フェイトちゃん。スターズとライトニングの分は
2人に取りにいってもらってええ?」
「「了解」」
2人がはやてに返事をしたところで,ステラさんが俺の方を見た。
「そう言えばゲオルグ。レーベンをよこせ」
「は?何でですか?」
「どうせお前のことだからまたメンテナンスをサボるだろうと思ってな。
ちょうど時間があるから,やっておいてやる」
「わかりました。お願いします」
俺がそう言って,待機状態のレーベンをステラさんに手渡すと
ステラさんはサッサと部隊長室を出て行った。
ドアが閉まったのを確認して,俺は小さくため息をついた。
「まったく,相変わらずマイペースな人・・・」
「そやけど,めっちゃ助かってるよ。AMFCが公開意見陳述会に間に合うと
思ってへんかったし」
「技術者として優秀なのは認めるけどね。人格はどうかな・・・」
「ま,変わりもんなんは認めるけど,それはゲオルグくんかてそうやろ?」
「あの人とひとくくりにされるのはちょっと・・・」
俺がそういうと,全員が声を上げて笑った。
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