ハッピークローバー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十四話 夏祭りその十
「お互い名前で呼んで」
「五人の間では」
「ええ、仇名で呼ぶことはね」
これはというのだ。
「ないわね」
「そうだね、聞いてたらね」
「わかるでしょ」
「俺もね」
「かな恵は絶対にちゃん付けだけれどね」
彼女が自分達を呼ぶ時はというのだ。
「昔から」
「あの娘はそうなんだ」
「弟さん以外呼び捨てにしないのよ」
人をというのだ。
「あの娘は」
「そうした人っているよね」
「呼び捨て嫌いらしいから」
人をそうすることはというのだ。
「それでね」
「弟さん以外はそうするんだ」
「そうなの」
「そうなんだ、あの娘弟さんいるんだ」
「そうなのよ、二人姉弟なのよ」
かな恵のこのことも話した。
「実はね」
「そういえばお姉さん的なところあるかな」
「私達の中でもまとめ役だしね」
「お姉さんだからだね」
「そうなの、子供の頃から」
まさにその頃からというのだ。
「あの娘はね」
「まとめ役なんだ」
「そうなの、それでも成海っちがいないと」
彼がというのだ。
「どうにもね」
「駄目なんだ」
「駄目っていうか人って一人じゃ出来ないこと多いでしょ」
「そうそう、野球だってね」
達川は自分がしているスポーツのことから話した。
「いつも言われるしね」
「一人じゃ出来ない、ね」
「幾らピッチャーがよくてもね」
「寛君ピッチャーだしね」
「どんなバッターも絶対に三振に取るなんて出来ないから」
こう一華に話した、だがアメリカ黒人リーグで活躍したサチェル=ペイジは一試合振り逃げも含めて二十八奪三振を達成したことがあったという。
「打たせて取る、あと盗塁を刺したりとかもね」
「皆でやるものよね」
「九人もっと言えばベンチ全体でね」
「野球だってそうよね」
「どんなスポーツでもそうだよね」
「バレーだってね」
一華も自分がしているスポーツから話した。
「そうだしね」
「六人でやるものだね」
「それでチーム全体でね」
「やるものだよね」
「そうよ」
実際にというのだ。
「本当に」
「そうだから」
それでというのだ。
「かな恵もね」
「三ちゃんいないと駄目なんだ」
「それで本人が言うには」
かな恵がというのだ。
「私達四人それに家族もね」
「いないとなんだ」
「自分が言うには寂しがりで」
そうした人間でというのだ。
「それでなのよ」
「誰かいないとなんだ」
「駄目みたいなの」
「そうなんだね」
「いや、それってあの娘だけじゃなくて」
一華はビールを飲みつつ話した、顔が祭りの灯りの中で赤くなっているのが見える。祭りの中では盆踊りの曲がかかっている。
ページ上へ戻る