リュカ伝の外伝
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やっぱり僕は歌が好き 第十九楽章「この場にある物」
前書き
リュカ伝の世界では
1ゴールド = 100円 です。
(グランバニア王国:城前地区・東城壁大通り路地ビル内)
アイリーンSIDE
「お、おい……まだ何かあるのかよ……!? もういいだろ」
「ダメだよ。お前……サインしたじゃん」
サインはしましたね。だからこそもう終わりでは?
「ほらぁ、お前等の今後の身の振りについても、契約書にサインしてあんじゃん」
身の振り?
「な、何だよそれは……意味分かんねーよ!?」
……ブラパンの活動についてかしら?
「渡した控えを見てみろ。土地の譲渡契約書と建物の譲渡契約書……それからお前等の行動について、規定を守る様に定められた契約書があるだろ」
勿論、契約内容を読む時間を与えてなかったから当然ではあるが、男は慌てて受け取った書類の控えを読み返す。
「はぁ!? 何じゃぁこりゃぁ!!」
「うむ。馬鹿で阿呆で知性の欠片も持たずに生まれてきたお前等にも解る様に、天才である俺が要約してやるから大人しく聞いて、そしてそれに従え」
何でだろうか……同じように上から目線なのに、陛下とコイツとでは腹立ち加減が全然違う。
「お前等……ブラパンだっけ? まぁ兎も角、お前等が今後グランバニアに住む人々に迷惑を掛けない様に命令してる書類だ。もしも契約書の内容に対し不履行と思われる……つまり命令違反をした場合、今日このオッサンにされた事が天国に思える様な地獄のドン底を突き破った先にある体験を強制的にしてもらう」
「そんでだ……お前等が人々に迷惑を掛けたのか、それとも全然関係ない奴がやったのかを見分ける為の印が必要になる」
「「「えっ!!??」」」
陛下の“印”という言葉に、部屋の端で身を寄せ合っていたブラパンメンバー等の視線が男の額に集まり、悲鳴の様な声が上がった。
「安心して。流石に僕も、全員に“下着泥棒”なんて掘るの面倒臭いから、そんな事はしない」
そうよね……ボスだけの特別扱いよね。
陛下のそんな優しいお言葉に、一同ホッと息を吐いた。
「じゃぁウルポン。一人ずつ連れてきて」
「はいよ……ってかウルポンって呼ぶな!」
そんな息の合った遣り取りをしながら、クズ宰相は手近なブラパンメンバーの一人を力尽くで連行し、先刻までボスが座ってた椅子に腰を下ろさせ、動かない様に両腕で締め上げ頭を固定する。
「えっ!? ちょ……待って! 先刻文字は掘らないって!」
「そんな事は言って無い。『“下着泥棒”なんて掘るの面倒臭いから、そんな事はしない』って言ったんだ。文字は掘る。でも面倒臭いから“1”から順番に掘っていく。この場に何人居るのか判らないが、これで確認できるだろう……一石二鳥ってヤツだ。やったね(笑)」
楽しそうな陛下の声を掻き消すブラパンメンバーの悲鳴。
そうやって一人ずつコーヒータトゥーを掘っていき“47”の数字で作業が終わる。
これでボスを含めて、この場には48人のブラパンメンバーが居る事が正式に判明した。
「よしこれで全員終わったね。“BRP48”の完成だ。デビュー曲は『あぁ痛かった』で良いよね(笑)」
「何だよそのBRP48って?」
デビュー曲って……歌わせるのかしら?(笑)
「気にすんな(笑)」
「そうする」
くぅぅぅ~……こういう会話を言い合える様になりたいわ!
「あの~……もう良いですよね? 終わりですよねぇ!? 俺等、帰っても良いですか?」
流石にもう用は無いわよね?
「う~ん……帰るのは構わないけどぉ……お前等に見ていってもらいたい事がある」
えぇ~……まだなんかあるんですか?
「安心して、もうお前等の身体を痛めつける気は無い。ただ一つの魔法と、僕の持っているアイテムを見ていってほしいんだ」
「「「???」」」
皆はキョトンとしてる。まぁそうだろう、私もそうだ。
「最初に見てほしいのは、この魔法だ。レミラーマ」
そう言って右手人差し指を立てて魔法を唱える陛下。
その指先に光が灯ると、光だけがスッと移動し、壁に掛けてあった絵画の一つへ行き、そこで眩く輝いた。
「そこかぁ」
陛下は魔法で光っている絵画の前に行くと、楽しそうに絵画を額縁ごと外した。
するとそこには、ホルンが入りそうなくらい大きい金庫が!
「あ、思ってたよりデカい!」
どのくらいを想像してたのかは判りかねるが、予想以上の大きさに驚く陛下。
相当重いだろうなと思っていると、いとも容易く持ち上げ机まで運ぶ陛下……流石だわ。
先程の魔法は、何かしらの大事な物を見つけ出す魔法なのですね!
凄いですわ陛下!
ブラパンメンバーも唖然としてますわ。
「一応聞くけど……この金庫の鍵を無料で僕にくれたりはしないよねぇ?」
「さ、先刻の契約書だと、俺等が今所持してる物は俺等の物だって書いてあったぞ!」
そうね……金庫は兎も角、その鍵は所持品だから契約書に則れば手を出せないわ。
「ふふっ……聞いただけ。別に要らない」
陛下は楽しそうに男へ答えると、首に掛かってた細い鎖を引き、セクシーな胸元から鍵(の様な物?)を取り出した。
そして首から外してブラパンメンバーに見える様に金庫の鍵穴へそれを近付ける。
一見すると鍵穴にすら入らない様な形状なのだが、鍵穴に触れた瞬間……形状が瞬時に変わり吸い込まれる様に入っていく。
そして手首を反して鍵を回すと、ガチャッという音と共に金庫の解錠が完了した。
「そ、そんな!?」
一連の出来事が信じられない……いや、認めたくないのか、ブラパンメンバーから悲哀の声が聞こえてくる。
金庫とその中身は所持品ではないので、もう陛下の物になったワケですから、気持ちも解らないでもない。
キィッという高い音と共に金庫の扉を開けると、そこには大量の札束が!
「おぉ、貯め込んでるなぁ」
「ザッと300万~400万Gはあるんじゃないッスか?」
さ、300万~400万G!?
「お前等、僕に黙って一旦立ち去ろうとしてたって事は、後で戻ってきて金を回収しようって算段だったんだろ?」
「残念だったなぁ(ゲラゲラ)」
流石は陛下……と感じる一方で、悪魔の様な表情で笑うクズ宰相に若干の苛つきを感じる。
「そ、それを奪われたら俺達は如何やって生きていけば良いんだよ!?」
「如何やってって……真面目に働けよ」
当然の事である!
「でもリュk……ゲフンゲフン、プーサン社長。こいつら額に変なタトゥー入ってるから、一般的な仕事に有り付くのは難しいんじゃないッスかねぇ?」
このアホ……今、陛下の正体を言いそうになったぞ!
「そんな事は知らん。それよりお前のデコにも、コーヒーでタトゥー彫り込むぞコラ!」
陛下もイラッとしたのだろう。
金庫の中を漁りながら、冷たく言い放つ。
「お、有ったぞ」
自身の額を両手で隠す素振りのクズ宰相を横目に、金庫の中の札束を机に移して何かを発見した陛下。
何だろうか?
「この土地と建物の権利書……大至急所有者を僕に書き換えておいてよ、デコナンバー48番(仮)」
「や、やっとくから……俺にまで番号を割り振るな! おら、お前等も出て行けよ!」
権利書を陛下から受け取ると、絶望に打ち拉がれているブラパンメンバーに蹴りを入れて、一緒に出て行くナンバー48番(仮)。
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暫く陛下とコーヒーを飲みながら、今日の事について語り合って(確認して)いると、外から「ごめんくださ~い」と男の声が聞こえる。
ここは先刻までギャング団のアジトだった場所だし、その手の人間がやって来たと思い、意識と視線を出入り口方向に向けていると……
「おっと、思ったより早く来たな。アイリーンちゃん、申し訳ないんだけども、お客さんをここまで案内してくれるかな?」
と言われ、焦ってしまう。
とは言え陛下の指示ですから、断るわけにもいかないし……何より陛下の指示なのだから、危険であるはずはない!
努めて笑顔で……でも慎重に入り口へ向かい、扉を開けて訪問者を確認する。
するとそこには普通のオジサンと大きめの木箱を複数台車にて運んできた作業着の人々が!?
兎も角も陛下の指示に従い、この人達を室内へとお通しする。
「やぁ……思ったより早かったね」
そう爽やかに応えたのは、変装を解いたグランバニア国王陛下のお姿が!
「はいぃ! 失礼かとは思いましたが、遅刻するよりか良いと思いまして……何でしたら、時間まで外で待ちますが?」
如何やら陛下が(プーサン社長ではなく)が事前に呼んでいた様だ。
いや……今日ブラパンが現れるか判らなかったのだし、直接呼んだのはクズ宰相か?
小者のクセに優秀だから腹が立つ。
「良いよ、もう準備は出来てるから。とは言えゴメンね散らかってて。先刻前の持ち主から引き継いだばっかりだからさぁ」
「いえいえ、お気になさらず。宰相閣下からは聞いております。かの極悪なるギャング団ブラッディー・パンサーを追い出したとか。流石は陛下でございます」
「そうなんだよね。アイツらから巻き上げた金を仕舞っておく新しい金庫と、この建物の新しい鍵……特に急務なのは表口と裏口の取り替えをしたくてね。今日中にお願いするよ。支払いは現金で……無理を言ってるから、多少は吹っ掛けても良いよ。普段だったら泣かすけどね」
凄いわね……この状況まで予測して動いてたのね。
「ありがとうございます。お値段については後程ということで……お見受けした状況では、あの壁に嵌まる大きさの金庫をご所望かと?」
「うん、そうなんだ。先刻までは、こっちの金庫が入ってたんだよね。そして絵画で隠してあった。同じようにしたいんだ」
机の上の金庫と壁と絵画を順番に指さして、それに合う新しい金庫を要求。
それを聞いて業者(社名:グランセキュリティー)は木箱の一つから金庫を出して、サクサクと設置していく。
流石プロである。
金庫設置と並行して、表口と裏口の錠前変更も終わらせる。
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アッという間に金庫と錠前の変更を完了した業者は、後日行うつもりの内装変更に関連した新しいセキュリティーの見積もりを出して、今日の分の料金100000Gを受け取って帰って行った。
正直相場が判らないから、高いのか安いのかも判らない。
一段落が付き、時計を見ると既に午後2時を過ぎていた!
昼食がまだだった事を思いだした陛下は、
「一緒に肉ジャガ定食を食べに行かない? 天ぷら定食でも良いよ」
と以前連れて行って頂いた、ニック・ジャガーさんのお店に誘ってくれた。
勿論二つ返事で行く事を伝える。
陛下は確かめる様に新しい金庫に受け取ったばかりの鍵を使って解錠すると、凡そ20万Gの札束を、可愛らしいベビー・パンサーの刺繍が入った巾着袋に入れると、私の腕を取り外へと歩き出す。
今日は最高の日だ♥
追記:
なお、ブラパンの金庫の中には現金が380万G入っていた。
更に高そうな貴金属も……
合計すると500万Gは超えていたと思う。
追追記:
巾着のお金は、陛下がニック・ジャガーさんに「コレで借金を返済しといて」といって渡してた。
この店は陛下からの融資だと聞いていたのだが……?
アイリーンSIDE END
後書き
最後の鍵って超便利!
YouTubeにて今回舞台となった元ブラパンのアジト(現プーサンのビル)を
ドラクエビルダーズ2にて再現した動画を公開しております。
建物内部は今回の件の後ということで綺麗に片づいてる状態ですが、
建物の雰囲気等を再現しておりますので、どうぞそちらも宜しくお願い致します。
なお、今回の舞台のビル以外の内装は虚無であります故、
その点はご留意宜しくお願いしますw
参照URL:
https://youtu.be/KuVbddjbZS4
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