| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハッピークローバー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十一話 暴力の代償その五

「かなりね」
「怖いお顔でしょ」
「眼光が凄くて」
「独裁者になるとよ」
「ああしたお顔になるのね」
「あんな怖いお顔にね」
 まさにとだ、母も言った。
「よくわかったでしょ」
「ヤクザ屋さんだってそうだし」
「そうよ、ただ最近大阪でも神戸でも減ったわね」
 ヤクザと聞いてだ、母はこう述べた。
「随分と」
「そうなの」
「お母さんが子供の頃はもっと多かったのよ」
「そうだったの」
「今よりずっとね」 
 こう娘に話した。
「そうだったのよ」
「ヤクザ屋さんも」
「ヤクザ屋さんも人相に出るし」
 その顔がというのだ。
「服装にもね」
「出るのね」
「だから見てわかるけれど」
 そうした筋の人間かどうかはというのだ。
「けれどね」
「それがなのね」
「減ったわね、大阪なんて難波をちょっと歩いたら」
 それだけでというのだ。
「すぐに見られたのに」
「そんな簡単になの」
「もう夜になったらビルの二階や三階から出て来て」
 そうしてというのだ。
「街をうろうろしてたのよ」
「そうだったのね」
「神戸はあそこの地元だし」
「日本で一番有名なヤクザ屋さんの」
「そうだったから」
 それでというのだ。
「多かったのに」
「それでも今は」
「随分減ったわ」
「そんなになのね」
「法律が整えられてね」
 暴力団新法である、この法律が日本のアウトローの世界の決定的な転機をもたらしたことは事実である。
「それでね」
「減ったのね」
「かなりね」
「そうなったの」
「大阪も神戸も湊があって」
「港のお仕事の斡旋でよね」
「昔はヤクザ屋さんが関わっていて」
 これが彼等の収入源の一つだったのだ。
「昔はそうしたお仕事の斡旋はね」
「ヤクザ屋さんがやってて」
「呉でもね」
 軍港で有名なこの街でもというのだ。
「有名だったのよ」
「だから大阪も神戸も多かったのね」
「福岡もね」
 この街もというのだ。
「そうだったのよ」
「それで繁華街でも」
「そう、お金が儲けられるから」
 店を経営したり何かと裏を仕切ったりしてだ。
「多かったけれど」
「それが減ったのね」
「そうなったわ」
「それで見ることも減ったの」
「この団地の近くでも見たのに」
 昔はというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧