あれよあれ

「岡田さんがな」
「あの人ね」
「前監督した時は優勝させてくれたんだぞ」
　阪神タイガース、このチームをというのだ。
「だからな」
「岡田さんならっていうのね」
「絶対にな」
　全く疑っていない言葉だった。
「そうさせてくれるさ」
「そうなの」
「岡田さんは育成もいいんだ」
　采配だけでなくというのだ。
「だから野手陣もな」
「今以上になのね」
「よくなって」
「打線も守備もなの」
「最強の投手陣と合わさって」
　そうなりというのだ。
「確実にだよ」
「凄い戦力になって」
「そこに岡田さんの名采配も加わって」
「優勝ね」
「そらそうよだよ」　
　妹にドヤ顔でこの言葉を出して応えた。
「まさに」
「確かそれってね」
「岡田さんの口癖だよ」
「そうよね」
「あの人いつもな」
「そう言うわよね」
「それで僕も今な」
「そう言ったのね」
「そらそうよ」　
　また言ってみせた。
「もうそれしかないよ、期待してもらってな」
「結構ですよね」
「よく知ってるな」
「どれだけ阪神の話聞いてると思ってるのよ」
　他ならぬ寿自身からというのだ。
「一体」
「だからか」
「そうよ、岡田さんのこともこれまでによ」
　兄妹として一緒に暮らしていてというのだ。
「どれだけ聞いたか」
「大阪の玉造の工場の一人息子さんでな」
「小学生の時優勝パレードの車に乗せてもらって」
「高校野球で甲子園にも出てな」
「大学は早稲田で」
　ここで関西から離れたのである。
「ドラフト一位でね」
「阪神に入団してだよ」
「新人王獲得して」
「そして活躍してな」
　そうしてというのだ。
「日本一の時はな」
「昭和六十年ね」
「五番セカンドとして大活躍したんだ」
「バックスクリーン三連発とか」
「打つだけじゃなくて守備もよかったんだ」
　足は然程速くなかったがだ」
「ゴールデングラブ賞も獲得したな」
「そうした人で」
「二軍監督として手腕を発揮して」
　現役を引退してからだ。
「それでだよ」
「阪神の多くの若手の人を育てて」
「二軍を優勝させてな」
「一軍にもいい選手の人達を送って」
「後の黄金時代の基礎を築いて」
　星野監督の頃のというのだ。
「野村さんと一緒にな」
「お兄ちゃん野村さんも褒めるわね」
「大変な時にな」
　暗黒時代と呼ばれたその時にだ。