樽腹
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第一章
樽腹
ジャワ島の古いお話です、この島を治める王様に仕えている大臣の草刈り番の息子は丸々と太っていてです。
お腹がとても突き出していました、それで皆そのお腹が樽みたいなので皆彼を樽腹と呼んでいました。
樽腹はそう言われていつも笑っていました。
「こんなお腹は僕だけだからね」
「いいのか?」
「随分言われているが」
「それでもいいのかい」
「僕だけだからね、それならいいよ」
そのお腹は自慢のものでした、それでそう言われると笑って羨ましいだろと言ってお腹を摩るのでした。
そんな樽腹は捕まえた小さなお魚をココヤシの皮の器で作った水槽に入れて飼っていました、ですがそのお魚をです。
お隣のお家の鶏が樽腹がお父さんのお仕事を手伝っている間に食べてしまいました、それでお家に帰った樽腹はこのことに泣いて怒りました。
「僕のお魚だったのに!」
「これは悪いことをしたな」
お隣さんも申し訳なさそうに言います。
「お前さんには」
「全くだよ」
「今お前さんの肴はうちの鶏の腹の中にいる」
「もう取り戻せないよね」
「食っちまったからな」
だからだというのです。
「お前さんにとっては残念だがな」
「じゃあどうすればいいのかな」
「お前さんの魚がうちの鶏の腹の中にいるなら」
お隣さんはそれでと言いました。
「うちの鶏はお前さんのものになるな」
「僕のものを獲ったからだね」
「ああ、この鶏をやろう」
「それじゃあね」
樽腹も納得しました、そうしてです。
鶏は樽腹のものになって暫くお魚の代わりに飼われていましたが。
お向かいがお家で使っていた杵がお向かいさんの手からつるっと滑って飛んででした。
運悪く傍にいた鶏に当たってです、今度は鶏が死んでしまいました。
「何で今度はこうなるんだよ!」
「ああ、済まないことをしたな」
お向かいさんは泣く樽腹に謝りました。
「わしのせいだ、だから杵はな」
「鶏に当たった奴だね」
「それはお前さんにやろう」
こう言うのでした。
「それで勘弁してくれ」
「それじゃあ」
こうしてでした。
樽腹は今度は杵を受け取りましたが。
杵は一軒置いた人のお家の水牛に踏み潰されてしましました、それで樽腹はまた泣いて怒りましたが。
一軒置いたお家の人は水牛を譲りました、しかしこの水牛は今度は道を歩いている時にたまたま落ちてきたドリアンが頭にぶつかってです。
それで死にました、続く不幸に樽腹はすっかりしょげかえりました。
「何で僕はまた」
「そなた余程運がないのだな」
大臣も言葉がありません。
「全く以て」
「はい、それで残ったのはです」
「そのドリアンだな」
「これを食べていいですか?」
「好きにするがいい」
大臣は樽腹を気遣ってこう言いました。
「そなたの水牛が死んだのはそのドリアンのせいだしな」
「わかりました、それじゃあ」
「その様にな」
こう言ってでした。
樽腹はドリアンを食べることにしました、それで大臣がその時いた王宮を後にしましたが丁度その前を通った時に。
王様の娘王女であるマヤンサリと出会いました。褐色のきめ細かいお肌に高いお腹とぱっちりとした明るい目にとてもさらさらとした黒い髪の毛を持っています。
マヤンサリは樽腹が持っているドリアンを見て彼に言いました。
「そのドリアン貴方のかしら」
「はい、そうです」
樽腹は素直に答えました。
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