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金色孔雀

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第二章

 実際に一つもいで皮を剥いて食べた、すると。
「美味いな」
「そうだね、手で割れるし」
「香りは甘くてな」
「みずみずしくてな」
「甘いしね」
「本当に美味いな」
 親子で食べて話した、そしてだった。
 李虎は実を村の者達にも分けた、すると誰もがその実を美味いと言い。
 実に入っていた種を蒔くと次々とだった。 
 木になり実が実った、すると。
 どの実も美味く村は忽ちのうちにその木で覆われた。誰もが美味しく食べたがここで一つ問題があった。
「この実の名前は何ていうんだ?」
「木の名前も」
「皆知らないな」
「そうだな」
「そういえばわしも知らないぞ」
 李虎も言った。
「言われてみれば」
「おいらもだよ」
 息子もだった。
「孔雀から聞き忘れたね」
「ああ、肝心のそれはな」
「そうだよね」
「そのことは迂闊だったな」
 李虎はこのことを悔やんだ、だが悔やんだ夜にだった。
 李虎の夢の中にあの孔雀が出て来た、孔雀は彼に話した。
「あの実の名前をお話していませんでしたね」
「ああ、わしも聞き忘れた」
 李虎は孔雀に答えた。
「最近になって気付いた」
「大変なことを忘れていました」
「名前のことをな」
「それでお話しますが」
「ああ、何て名前なんだ?」
「あの実は蜜柑といいます」
 孔雀はこう語った。
「木もです」
「蜜柑か」
「はい、この辺りにはないものなので」
「村の誰も知らないんだな」
「左様です」
「そうか、教えてくれて有り難うな」
「いえいえ」
 孔雀は李虎に畏まって応えた。
「お気遣いなく」
「そう言ってくれるか、それであんた今はどうしているんだ」
「今は仙界にいます」
「そうなのか」
「元々あちらに住んでいまして」
「見たことがないと思ったらな」
 金色の孔雀なぞだ。
「そうだったんだな」
「だから喋ることも飛ぶことも出来ます」
「成程な」
「はい、ではあの実のことは」
「村の皆に伝えておくよ」
「宜しくお願いします」
 孔雀はここまで言うと姿を消した、そうしてだった。
 李虎は起きると村人達に実の名前を教えた、こうして誰もがその実を名前で呼ぶことが出来る様になった。
 李虎は蜜柑を食べつつ息子に言った。
「何でも助けるものだな」
「人も生きものもね」
「そうしたらいいことがあるな」
「そうだよね」
「全くだ、そうしたらこんな美味いものが食えるんだからな」
 息子に一個やり自分も食べつつ言った。
「するものだ」
「そうだね」
「ああ、本当にな」
 李虎は息子と話しつつ蜜柑を食った、その蜜柑は実に甘く美味かった。黄岩に伝わる古い話である。この地面は今も美味い蜜柑が有名であるという。


金色孔雀   完


                 2022・7・11 
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