麗しのヴァンパイア

　　　　　　　　　　　　　　　　　最終話　　決意をして
　カーミラは使い魔達に歯磨きの後でまた話した。
「ではこれから一人の女としてね」
「そのお立場で、ですか」
「吸血鬼でも貴族でもなく」
「そのうえで過ごされますか」
「これからは」
「日本でね」
　自分達が今いる国でというのだ。
「最後まで」
「そうされるのですね」
「血も吸われず」
「資産も持たれましたし」
「それで生きられますか」
「そうするわ、美味しいものを食べて飲んで」　
　そうしてというのだ。
「お散歩や入浴、様々な娯楽をね」
「楽しまれて」
「そうして日々を過ごされ」
「幸せに過ごされますか」
「これからは」
「ええ、日本はとてもいい国だから」
　それ故にというのだ。
「旅行もね」
「楽しまれますか」
「そちらも」
「日本では」
「他の国にも行くけれど」
　即ち外国にというのだ。
「この国の隅から隅までもね」
「ご覧になられるのですね」
「これからは」
「そうもされるのですね」
「旅行をされて」
「どうもこの国は旅行が盛んだから」
　そうした国だというのだ。
「昔からね」
「だからこそですか」
「カーミラ様もですか」
「旅行を楽しまれますか」
「これからは」
「そうもしてね」
　そうしてというのだ。
「過ごしていくわ、テレビも読書も観劇も音楽もね」
「そうした娯楽もですね」
「楽しまれて」
「日々を過ごされますか」
「ファッションもね。退屈なぞ無縁よ」
　使い魔達に笑顔で述べてだった。
　カーミラは外出用の見事なドレスを着てだった。
　散歩に出た、その彼女を見て誰も吸血鬼とは思わなかった。彼女はそれを心の中で微笑んでよしとした。


最終話　　　完


　　　　　　　　　　　　　２０２２・１０・７