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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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一話

目を開けると不思議な景色の中に自分が居る事がわかった。これまでに見た事が無い風景、そして病に臥せっていた自分が起きあがっている事、そして一番の衝撃は、牢に入れられて脚萎えになっていた自分が2本の足で立っている事。そんな疑問を思った時に剣を突きつけられた。
「おいそこの兄ちゃん、なんか金目の物持ってねえかい?」
と、声をかけて来た男が盗賊だと気づくのに時間は掛からなかった。

「私に声を掛けたのは貴方ですか」

ととぼけるように答え時間を稼ごうとした。

「そうだよ、金目の物が欲しいんだが兄ちゃんもってねえのか」

だが、相手も急ぐ用に同じ事を言ってきた、逆らって殺される必要もないので、ここは素直に言う事を聞いておく事にした。
「生憎と今持っていない衣服だけ盗って命は助けてくれないか」
謙った言い方に気を良くしたか、男は満足した用で衣類を剥ぎ取るだけで命だけは獲らないと言ってくれた。油断は出来ないがとりあえず相手がおとなしくしている事に少し安堵し衣類に手を掛けた時
「待てぃ!」
「天下の往来で堂々たる狼藉その所業許しがたい覚悟せよ」
と突如声を上げ自分を庇う様に一人の女子が相手に槍を突きつけた。
「なんだ、てめえは」
「貴様の様な者に語る名など、無い」
言うや相手を突き伏せていた、あまりの見事さに思わず感歎してしまったとそこに新しく2人の女子がやってき
「大丈夫ですかー?」
「怪我はないようでよかった」
と声を掛けて来てくれた。賊の男が倒れた事と新たにきた3人は自分を助けに来たのだと思い安心して腰が抜けてしまった。
「男子のくせに意気地がないな」
「いきなり剣を突きつけられればそうなりますよ星」
「それにこのあたりは治安がいいので盗賊にあうような機会など滅多に無さそうですし」
3人の会話を聞きながらようやく今の状況を考えたこの風景もそうだが先ほどの男や3人の身なりでここは私が知る世界とは異なる事、自分は死の間際だったのになぜこの様に生きているのか疑問が尽きなかった。
「どうした何を呆けている」
「いや、危ないところを助けてくれて感謝しますご婦人方。一つ質問してもよろしいでしょうか」
「何でしょうか」
「生憎とこの辺りは初めてでしてここが何所かお聞きしたいのですが」
「…ふむ答えてやりたいがどうやら時間の様だ後の事は陳留の刺史殿に任せるとしよう」
「そうですねー」
「ししとは…」
と言い切る前に3人は立ち去る様だ
「あの」
「すいません今は官と関わりたくないのです」
「ではでは~♪」
嵐のように去っていってしまった。そして次に見えたのは騎馬と旗、どうやら先ほど言っていた刺史の者かも知れない。ここは大人しくしていた方が良さそうだ。そうしていると騎馬武者らしき者達が自分を取り囲んできた。そして奥から黒髪と青い色の髪と金の色の髪の3人の女性が出て来た。

「華琳さま!こやつは…」
「…どうやら違うようね。連中はもっと年かさの中年男と聞いたわ」
「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」
「そうね…。けれど、逃げる様子もないは…そこの倒れている男は」
「見たところ盗賊の様ですね仲間割れでもしたのでしょうか」
「盗賊の仲間にしては堂々としているわ」
と、値踏みをする様に3人が自分を見てくる

「あなた何者?盗賊には見えないしここで何をしていたの」
と金色の髪の子が尋ねてきた
「私は黒田官兵衛と申す者です気が付けばそこの者に剣を突きつけられましたが、旅のお方らしき人に助けてもらいました」
「生国は?」
「播州でございます」
「…播州なんて所聞いた事無いは」
「貴様、華琳さまの質問に答えんかぁっ!生国を名乗れと言っておるだろうが!」
「質問にはお答えしました私の生国は播磨の国、播州と申す所です」
「姉者。そう威圧するな」
「しかし秋蘭!こ奴が盗賊の一味という事もあるのだぞ!そうですよね華琳さま!」
「そう?私には盗賊をやるような手合いには見えないのだけど」
「…それはそうですが」
「黒田…と言ったかしら?」
「はい」
「ここは陳留…。そして私は、陳留の刺史をしている者」
「刺史ですか」
刺史とはたしか唐の国の官だったがという事はここは唐の国なのだろうか
「何?」
「いえ、私の国では刺史という役職は無かったので」
「その国とは播磨の事?」
「いえ、国とは倭国の事です」
「倭国とはどこにあるの」
「恐らくですがここよりも遥か東の島国です」
「こ奴、語り者でしょうか?」
「それにしては話しがよくできてるわ」

何かを考えていたがすぐに決めたらしく
「とりあえず、そこに倒れている男は縛って連れて行きなさい。そしてあなた」
と自分をみて
「あなたは私たちについて来なさい、色々と聞きたい事もあるし。あなたも私達から聞きたい事もありそうだし」
そういって町に引き返すようだ。自分の身に起きた事を知る為にもついていく事が良さそうだった。盗賊らしき男は縛り上げられて引きずられるように連れて行かれたが、自分は逃げないと思われているのか刺史の方の馬の隣を歩くように言われた。
「何か気になる事でもあるの」
馬上から声をかけてきたのは刺史殿だった。
「いえ、自分の足で長く歩くのは久しぶりのものでしたので少し懐かしく思っただけです」
「貴方よほどの貴族だったのね」
呆れられてしまったたので少し笑ってしまった。
「いえ若い頃に足を痛めてそれで歩けなかったのです」
「若い頃って貴方、今でも十分若いじゃない」
と言って更に呆れられた。そういわれて、気が付いたが自分の体を見てみると自分の今の姿に驚いた。今の自分の体は足が悪いのがない事とそれにどう見ても元服を終えたばかりの頃の体だった。それを見て何がおもしろかったかわからないが刺史の方は少し笑って
「なんにせよ話は町についてからね!」
と楽しそうに馬を進めた。

しばらくして町に着き役場の中に入ってそこに座るように言われた。そして青い髪の女性が再び訊いた。
「もう一度聞こう。名前は」
「黒田…官兵衛といいます」
「では黒田官兵衛。おぬしの生国は」
「倭の国の播磨という所です」
「…この国にきた目的は?」
「申し訳ありません、わからないのです」
「…ではどうやってここまで来た?」
「誠に申し訳ございません。気が付けばあの荒野にいたもので」
「…華琳様」
「埒があかないわね。春蘭」
「はっ!拷問にでも掛けましょうか?」
「失礼ながら拷問に掛けられましてもそれ以上の事はわかりませんので申す事が出来ません」
「本当に埒があかないわね、…それにしても肝が据わっているわ」
「後はこ奴の持ち物ですが…」
生憎と嚢中には何も入っておらず、持っているのは普通の装束に若い頃好んだ桔梗色の小袖だけだった
「その服もこの辺りでは見ない物だしその羽織っている物はなに?」
と言ったので小袖差し出した。
「改めてみるといい服ね。色合いも鮮やかで品がある賊に狙われてもおかしくないわ」
そういって一頻り見た後返して頂き、再び小袖を羽織った
「そうやって着ていて似合うのだからそれは奪った物ではないようね」
物騒な事を言いながら褒めてくれたのは賊の類と否定してくれているのだろう。
「それにしても、東の果ての島国が貴方の生国なのね」
「…はい」
「貴様ぁ…っこちらが下手に出ていればのらりくらりとわけのわからん事ばかり言いおって」
「別に嘘は申しておりません。それに、今の会話ではそちらの刺史様が納得するように話をしているだけでございます」
「なんだと、貴様ぁっ!」
「はあ…春蘭。いい加減にしなさい」
「で、でもぉ」
「一つお伺いしてもよろしいでしょうか」
「なに?」
「刺史様を含めたお二方の名をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「そういえば名乗って無かったわね。私の名は曹孟徳。そして彼女達の名前は、夏候惇と夏候淵よ」
「…今なんと」
「聞こえなかった?」
「いえ…聞こえましたが。少し、信じられないものでしたので」
この女子達が…?
確かにその名であればここが大陸だとわかるがしかし
「失礼ながら、曹孟徳様。曹操と呼ばれておりませんか」
「そうよ、何か引っかかる事でもあるの?」
確かめる意味で念を押し通称まで聞いたが間違いないようである
「恐れながら、私としても信じられない事でして少しばかりの猶予をいただきたい」
ここが大陸だとはわかったが目の前の者が曹操と名乗っている。曹操といえば大昔の中国の魏王と称されたはずだがその者がいま刺史を勤めている。となれば私は今どうしてかは知らないが曹操が世に出る以前の過去に来ている事になる。そう考えれば曹操が女だったとにはは驚いたが今の状況も理解できる。と考えをまとめると曹操殿は声を掛けてきた。
「考えはまとまったようね」
「はい、どうやら私は自分の知る世界とは違うところに来たようでして」
「そうなの?」
「はい、私自身も信じられませんがここに自分がいると思えば納得のいく事なので」
「そう、それなら私の名乗っていない操という名を知っているも少し納得がいくわね」
というと左右の二人がにわかに殺気だち
「まさかこ奴、五胡の妖術使いでは…!」
「華琳さま!お下がりください!五胡の妖術使いなどという怪しげな輩に近付いてはなりませぬ!」
「私は妖術など使えませんそれに異国の者ではありますが五胡に当てはまる種の者でないのはたしかです」
殺気だった二人とは対照的に曹操殿は何か思いついた様に喋り出した
「…南華老仙の言葉に、こんな話があるわ」
南華老仙。たしか、荘子死んだ後の名の事のはず
「それは、道教の始祖の名ですね」
「へぇ~…大した教養ね。では夢の中で蝶となり、蝶として大いに楽しんだあと、目が覚める。この話は知っているはね」
「胡蝶の夢の話ですか」
「見事だわ、では私の考えた事もわかるわね」
「はい、ここは私の夢なのか、それともそちらの見ている夢なのかと言う事でしょう」
「そうね、それなら貴方や私たちに起きた事をその様に考えれば少し簡単ね」
ここまで話して、夏候惇殿が話しに入り込み
「な、ならば華琳さまは、我々はこ奴の見ている夢に過ぎないと仰るのですか!」
「そうではないわ。なぜなら官兵衛はここにいるのは事実、その様に考えれるということよ」
「は、はあ…」
「官兵衛が夢でここに迷い込んだか、こちらにいた官兵衛が夢の中での事を話しているのかはわからないと言う事」
「…要するに、どういうことです?」
夏候惇殿が悩んでいると夏候淵殿が助け舟を出した
「官兵衛がここにいる、と言う事だけは事実、と言う事だ」
「…うむぅ?」
「それでわからないなら、諦めろ。無理に理解しようとすれば知恵熱が出るだけだぞ」
「むむむ…」
「春蘭。色々難しいことを言ったけれど…この黒田官兵衛は、天の国から来た遣いなのだそうよ」
まだ悩んでいる夏候惇殿に曹操殿が決め付けるようにいった。
…天の国の遣いとはなんだろうか
「なんと…。この男が天の遣いなのですか?」
なぜその天の遣いとやらなら納得できるのだろう?
「五胡の妖術使いや、知らない世界から来たなんていう突拍子も話よりわ、そう説明した方がわかりやすくて済むわ。あなたもこれから自分のことを説明するときは、そうしなさい」
「確かに、そのほうが無用に警戒されることもありませんが」
「話が早くて助かるわ」
天の遣いか、その様なものに自分が化けるとはと思っていると夏候淵殿か改まった顔でこちらを見た
「さて。大きな疑問がお互い解決したところで、もっと現実的な話をして良いか?黒田」
そう話を切り出した。
「はい、よろしいですが先の賊の話でしょうか」
「いいえ、賊の方は目を覚ましてから改めて本人を問い詰めるわ、今はあなたの事よ」
「構いませんが、どういった事でしょう」
そういって私の目をみすえる
「あなた、行く宛も無い様だし私に仕えてみる気はない?」
「それはありがたい話ですが私めでよろしいのでしょうか」
「ええ、その高い教養とそれに今までの会話の節々にある品性、そしてなによりその頭の切れとそれを悟らせない所作。どれをとっても申し分ないわ。私の大きな助けになると言い切れるわ」
「そこまで私を買って頂くのでしたら喜んで御仕えさせて頂きたい」
「そう。なら決まりね、部屋を準備させるから好きに使いなさい」
「そこまでの恩遇、心より感謝します」
「ふふ…そうだわ。まだ官兵衛の真名をきいていなかったわね。教えてくれるかしら?」
「真名とは何でしょう?」
「真名を知らないの?、まあそんなところから来た事にしましょう、真名とは自分の気を許した相手だけが呼べる特別な名の事よ、迂闊に喋れば殺されても文句が言えないほど神聖な名よ」
「そうですか、私には真名とは言いませんが。孝高と言う名がございます」
「そう、では孝高と呼べばいいのね?」
「いえ…できれば如水と呼んで頂けるとありがたいのですが」
「如水、いい名ね!ではそう呼ぶ事にするわ。私もあなたに真名を預けましょう」
「華琳さま…っ。こんなどこの馬の骨とも知れぬヤツに、神聖な真名をお許しになるとは…」
夏候惇殿は再び声を荒げたが曹操殿は意にも介さず
「私は如水と話して信ずるに値する者と思って名乗るのまさか私の目を疑うの?」
「いえ…そんなつもりでは」
「ならいいわ、改めて授けるはね、私のことは華琳と呼びなさい如水、それに様はつけなくていいわ、そしてその必要以上に謙った敬語も。わかった」
ときつく念を押してきたどうやらこの口調が少し気に入らないようだ。
「わかりました、では以後。華琳と呼ばせて貰います」

そう言うと、華琳は満足した様に微笑んだ
 
 

 
後書き
柿色を桔梗色に変更しました
更新は遅いですが根気のある方だけでも付き合ってください 
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