仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜
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第一話 『RX、再起』
「この世に悪がある限り、私は必ず蘇る…」
仮面ライダーBLACKが世紀王の証たる聖剣、サタンサーベルを創世王に突き刺し、暗黒結社ゴルゴムは壊滅した。1988年10月9日の出来事であった。それから月日は流れた2023年の某日、BLACKが進化した存在である仮面ライダーBLACK RXと共に戦った戦友である霞のジョーと的場響子の二人は喫茶店キャピトラに入店する。
「二人とも、いらっしゃい。」
入店した二人に挨拶をしたのは仮面ライダーBLACK RXに変身する男性、南光太郎であった。
「ここがアニキが先輩から譲ってもらったって喫茶店か。」
霞のジョーは物珍しそうに店内を見渡す。
「光太郎さん、どうしてダイビングの道具が飾ってあるんですか?」
響子も普通の喫茶店とは異なる内装に疑問を浮かべ、光太郎に質問する。
「それは先輩の趣味でね、昔はスキューバショップも兼ねていたんだけど、俺が譲ってもらうときにスキューバグッズの殆どは先輩が引き取っていって、一部のグッズはこうやって店主の思い出の品として飾ることにしたんだ。」
光太郎は、初代店主である先輩との出来事を話した。
「スキューバショップ兼喫茶店って、アニキの先輩って人も、なかなか破天荒なことをするもんだな。」
「そうね、普通の人ならその2つの店舗を一緒にしないわ。」
霞のジョーと響子はあまりのことに驚くことしかできなかった。
「それも先輩らしさってやつだよ。それより、確か二人は結婚したんだっけ。」
光太郎は二人に話を振る。
「まあ、俺が婿入りした形だけどね。」
「もう十何年も前の話よ。私達、二人とも光太郎さんと一緒に戦った仲でしょ?結局、あれから気の合う人に出会えなくて、二人で結婚しようって決めたの。やっぱり、吊り橋効果って本当にあるのね。」
光太郎の振った話題に二人は答える。二人は結婚し、記憶と本名を失っていた霞のジョーは現在は的場丈と名乗り、平和に暮らしている。
「あのときは祝えなくてごめん。オーメダルを使って歴史を捻じ曲げたショッカーと戦っていて、手がいっぱいだったんだ。」
光太郎は深く謝る。しかし、仮面ライダーたる者、平穏を守るための戦いは避けられないのだ。
「ショッカーってあれだろ?その後もなにか大きな事件を起こしたっていう半世紀近く前の悪党だろ?」
霞のジョーの言うとおり、悪の秘密結社ショッカーは2010年以降、活動を活発化させ、その度に光太郎も戦いに駆り出されたのだ。
「本郷先輩達は今もショッカーの残党を追って世界を周っているって。」
光太郎は先輩ライダー達の話をする。
「じゃあ、なんでアニキはここで喫茶店を?」
「本郷先輩達から、待機するように言われているんだ。」
光太郎は霞のジョーに事情を話す。
「そういえば光太郎さん、立て看板に午後はお休みって書いてあったけど、何かあったんですか?」
響子は話題を変える。
「ああ、今日は信彦の墓参りに行く日だから、午前中だけ営業して、午後から墓参りにって流れだよ。」
光太郎は午後休業の理由を説明する。
「信彦って、確かあのシャドームーンとかいうアニキを襲った銀色の奴だろ?」
「俺にとっては、兄弟でもあり、大事な親友でもあったんだ。たとえ記憶をなくして俺を襲ってきた相手だとしても、墓参りは忘れられないよ。」
秋月信彦、光太郎と同じ日、同じ時間に生まれ、光太郎が秋月の家に引き取られてからは本当の兄弟のように育ったが、彼もまたゴルゴムによって改造手術を受け、仮面ライダーBLACKと対を成す存在、世紀王シャドームーンとなりBLACKと死闘を繰り広げ、RXとなった後も幾度も戦いあったが、か弱き子供達を救うために立ち上がり、その命を散らした。光太郎はその時のシャドームーンが信彦に戻ったことを忘れることはなく、こうして毎年墓参りに行っている。
「そうすか。それじゃあ、こうしてのんびりしているのも悪いな。響子、そろそろ帰るか。アニキ、邪魔したな。」
霞のジョー達はコーヒー代を支払い、店から出ていく。
「ありがとう。」
光太郎は他の客が出ていくのを確認すると、閉店の準備を始める。
「今日はお客が少なかったからか、普段より綺麗だな。」
光太郎は店内の清掃をしている。
「そうか、ゴルゴムを壊滅させて35年か。時間が立つのは早いな。」
光太郎は過去の戦いを思い出し、複雑な気持ちを抑えながらも信彦の眠る柴田牧場へ向かう。
「信彦…」
光太郎は信彦と共に育った子供時代を思い返す。仲の良いスポーツ少年であったこと、風呂場でシャワーの掛け合いをしてじゃれ合っていたこと、夏休みには信彦とその実妹、そして信彦の恋人と四人でボートに乗り海へ出て遊んだ思い出を。しかし、これまでの墓参りではなかった自体を前に、光太郎の脳は現実に引き戻される。
「バッタだ。しかも、35年前のあの時と同じ。」
光太郎の前には大量のトノサマバッタが飛んでいた。その光景を見た光太郎の脳裏には、自身が仮面ライダーBLACKに改造された日の夜が過る。その日は光太郎と信彦の19歳の誕生日であった。そこには著名人や政治家など、たかだか一大学生の誕生パーティには見えるはずのない人物がぞろりといた。そして、パーティの参加者は飛び交うトノサマバッタに眉一つ動かすことのない異様な光景だった。そして、その異様さを不審に思った二人はパーティを抜け出そうとしたとき、謎の光に捕らえられ、二人は改造され、戦いの渦に飲み込まれたのだ。それを思い出した光太郎は不吉な予感を感じた。それでも、信彦の墓まで歩いてゆく足を止めることはなかった。
「もう少しだ。もう少しで着ける。」
光太郎は必死に足を進め、信彦が眠る墓までたどり着くと、そこにはフードのある白いローブを纏った三人組がいた。
「お前達、そこで何をしている!」
光太郎は身構える。
「よくぞおいでになられました。」
三人組の一人、女性が光太郎に声をかける。
「お待ちしておりました、仮面ライダーBLACK RX。」
更に壮年の男性が立膝をつく。
「お前達は何者だ!」
光太郎は三人組に問いかける。
「我らは深淵結社ネオゴルゴム。貴方様には、是非とも我らの世紀王になっていただきたく、本日お伺いしたほどです。」
若い男性は自身の正体と目的を話す。
「ネオゴルゴムだと!お前達の目的はなんだ!」
「勿論、今いる愚かな人類を滅ぼし、優れた人間を怪人にして未来へ繋ぐことです。」
光太郎の問いかけに女性は答える。
「そんなことの為に、俺は力は振るわない!」
光太郎は三人組の提案を断固として断る。すると、
「だから言っただろリシュナル、こんな旧世代の世紀王は我らについてこないと。」
男性は女性神官、リシュナルを批難する。
「黙れエピメル。かつてゴルゴムを滅ぼしたとはいえ、こいつも世紀王。呼び込める可能性はあるだろう。ソフィルも納得している。私だけの責任ではない。」
リシュナルは若い男性神官、エピメルに言い返す。
「おまえら、小競り合いは後にしろ。それより、世紀王になる意思のない南光太郎を消すほうが最優先だ。やれ、ヤブカ怪人!」
壮年の神官、ソフィルの言葉を聞き、光太郎の背後から藪蚊の特性を持つ改造人間、ヤブカ怪人が現れると、右腕に備え付けられている針を光太郎の首に突き刺す。
「そうだ、そのまま奴の血液を奪うのだ!」
エピメルの指示を受け、ヤブカ怪人はそのまま吸血を続ける。
「このままお前達の好きにはさせない!」
光太郎はヤブカ怪人の右腕を掴み、背負投をかけてヤブカ怪人を引き剥がす。
「グブブブブ…」
背中を打ち付けたヤブカ怪人は悶苦しむ。
「ヤブカ怪人、お前は逃げろ。来い、コウモリ怪人、クモ怪人!」
リシュナルの指令を受け、コウモリ怪人と三体のクモ怪人が光太郎の前に立ちはだかり、ヤブカ怪人と三人の神官は逃走する。それを見た光太郎は力を込めて変身ポーズを取る。
「変…身!」
光太郎の変身の掛け声とともに体組織を変化させる変身ベルト、サンライザーが出現し、キングストーンと太陽、2つのハイブリットエネルギーが全身を駆け巡り、南光太郎は、仮面ライダーBLACK RXへと変身するのだ。
「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RX!」
RXが高らかに名乗ると、クモ怪人達は一斉にRXに向かっていく。
「行くぞ!」
RXはクモ怪人の攻撃を交わしてゆく。しかし、
「今だ!RXの動きを抑えろ!」
コウモリ怪人の号令を受け、クモ怪人は拘束用の糸を吐き、RXの両腕と右足の自由を奪う。
「くっ、自由が!」
RXは力を込めて引きちぎろうとするが、糸の強度は高く、何もできずにいる。その時、サンライザーの形状が2つの赤いコアの見えるベルトから赤と青の歯車が露出した形状のベルトに変化、RXの肉体は黒とオレンジを基調とする鋼鉄のボディに変化する。
「俺は悲しみの王、RX!ロボライダー!」
RXは怪力を誇る形態、ロボライダーへと姿を変え、両腕を押さえつけているクモ怪人達を力で引き寄せ、縛る力が緩んだ瞬間に拘束していた糸を引きちぎる。そして、
「ボルティックシューター!」
ロボライダーは必殺の光線銃を出現させ、二体のクモ怪人を必殺の一撃、ハードショットで撃ち抜いて撃破する。更にロボライダーはサンライザーの形状を変化させ、ロボライダーの肉体は青を基調とした生体的特徴が目立つ形態に姿を変える。
「俺は怒りの王!RX、バイオライダー!」
RXは超常能力を駆使して戦う形態、バイオライダーへと変化し、肉体をゲル化させて最後の拘束から脱出すると、
「バイオブレード!」
バイオライダーは実体化し鋭利な両刃剣、バイオブレードを出現させ残るクモ怪人に必殺の斬撃であるスパークカッターを放ち、撃破し、RXの姿に戻る。
「行くぞ!」
RXはコウモリ怪人の上をめがけてジャンプし、体をひねり、
「RXキック!」
RXは必殺のキックを放ち、コウモリ怪人に命中。コウモリ怪人は空中で光熱を発しながら消滅する。それに合わせてクモ怪人も蒸発し、肉片一つ残さずに消滅したことを確認し、光太郎は変身を解除する。
「ネオゴルゴム…まさかあのとき壊滅させたゴルゴムのメンバーが、再結成していたとは…」
光太郎は、ゴルゴムの本当の恐ろしさを噛み締め、新たな戦いに身を投じる覚悟を決めたのだ。
続く
次回予告
ネオゴルゴムの前身、暗黒結社ゴルゴムとは何なのか、霞のジョー達に話し始める光太郎。そこに駆けつけたのは、ゴルゴムをよく知る二人だった。『ネオゴルゴムの謎』ぶっちぎるぜ!
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