X ーthe another storyー
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第一話 開幕その九
「それじゃあな」
「時が来れば」
「その時はな」
「動かれますね」
「ああ、そうさせてもらうな」
「その時は都庁に来て下さい」
「あそこか」
都庁と聞いてだ、草薙は言った。
「わかったぜ」
「では」
「ああ、けれど運命って一つじゃねえってな」
草薙はこうも言った。
「俺は聞いたがな」
「決まっているものではないと」
「それは一つじゃなくてな」
そうしてというのだ。
「変えられもするってな」
「いえ、運命は変わりません」
牙暁は悲しい顔で答えた。
「それは」
「そうなのかね」
「決して」
「そうか、そこは意見の相違だな」
「そうなりますね」
「まあ兎に角な」
草薙は微笑んで言った。
「これから宜しくな」
「同じ地の龍として」
「それでな、仲間だろ」
「はい」
牙暁もその通りだと答えた。
「私達は」
「だったらな」
「これからですか」
「仲間としてか」
「やっていこうな、他の奴はまだ知らないがあんたは嫌いじゃない」
笑ってこうも告げた。
「そのこともあるしな」
「仲良くですか」
「やっていこうな」
「それでは。実は他の地の龍の方も」
「悪い奴じゃねえか」
「迷い吹っ切れ悲しみを持っていたりしますが」
それでもというのだ。
「心根はです」
「悪い奴はいないか」
「はい」
草薙に目を閉じて答えた。
「ですからご安心を」
「わかったぜ、しかし悪人でもないのに人間を滅ぼすなんてな」
草薙はやや上を見た、そうして悲しい目になって述べた。
「因果なことだな」
「やはりそれもです」
「運命か」
「そうです」
こう言うのだった。
牙暁は黒いショートヘアに隻眼の穏やかな微笑みをたたえた青年の夢にも出た、黒いコートとスーツそれにネクタイが似合っている。
その彼にだ、こう言った。
「桜塚星史郎さん」
「桜塚護でもいいですが」
「いえ、今の貴方はです」
穏やかな声の青年に告げた。
「そう呼ばせて頂きます」
「それは何故でしょうか」
「桜塚護はその集団の名前ですね」
「ええ、とはいっても今は僕一人ですが」
「地の龍として貴方が来られるので」
「だからですか」
「そう呼ばせて頂きます」
その青年桜塚星史郎に答えた。
「その様に」
「わかりました。しかし僕が地の龍で」
星史郎と牙暁は夜桜の前にいる、桜の花びらが舞う中で背中合わせに立ってそのうえで話をしている。
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