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X ーthe another storyー

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第一話 開幕その一

                X ーthe another storyー
                  第一話  開幕
 今だ東京は静かだった、しかし。
 高野山においてだった、長方形の顔に明るい顔立ちの引き締まった体格の僧衣の青年に白い髭の老僧が語っていた。
「ではな」
「ああ、今から行ってくんで」
 青年は老僧に笑顔で応えた。
「そうしてくるわ」
「そうしてな」
「女の人の為にやな」
「命を落とすことになる」
「それがわいの運命やな」
「うむ、しかしだ」
 ここでだ、老僧は。
 自分達の上、今いる堂の渡り廊下から見える夜空を見上げて話した。
「若しやするとだ」
「若しや?どないしたんや」
「空汰、お主は死なずだ」
 その青年有洙川空汰に話した。
「ここにその人と戻って来るやもな」
「何や、わしは死なんのか」
「運命は一つではない」
 老僧は空汰にそれ故にと答えた。
「だからな」
「死なんとか」
「ここに戻って来る未来もだ」
「あるんやな」
「どれがよい」
 老僧は空汰にさらに問うた。
「一体」
「生きるか死ぬかか」
「いや、地の龍に敗れるかだ」
 まずはこの未来を話した。
「天の龍として女を守って死ぬか」
「その人と一緒にここに戻って来るか」
「どれがよい」
「そら決まってるやろ」
 空汰は老僧の言葉に笑って応えた。
「やっぱりや」
「生きてだな」
「その人とな」
「ここに戻って来たいな」
「それでその人と一緒になってな」
 さらに話した。
「暖かい家庭築くわ」
「ほっほっほ、そこまで言うか」
「あかんか?」
「そうせよ」
 老僧も笑った、そのうえで空汰に答えた。
「そなたがそうしたいならな」
「ほなな」
「では今からじゃな」
「東京に行って来るわ」
「うむ、達者でな」
「ああ、戻ってきたらその人と三人で美味いもん食とうな」
 この時も笑顔でだった、空汰は老僧に話した。そうしてだった。
 自分が今いる高野山から東京に向かった、一人の青年がそうした。
 伊勢神宮では今切れ長の目と黒い極めて長い髪を持つ少女が一人の初老の女性と話していた。見れば巫女の服を着ている。
「それでは」
「時が来ましたね」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「旅立ちます」
「それでは」
「もう私のお墓はありますね」
「いえ」
 女性は少女に首を横に振って答えた。
「申し上げましたね、運命はです」
「一つではない」
「ですから」
 それ故にというのだ。 
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