Fate/WizarDragonknight
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魔法使いでありんす
前書き
七章スタート!
ここからまた始まります! 今年中にどこまでいけるかな……?
「ぎゃっははははー!」
下品な笑い声が響きわたる。
見滝原と呼ばれるその街。中央近くのその通りは、平日の昼間ながら、多くの人々が行き交う。
桜が咲き始める季節。暖かいその街を闊歩するのは、人間ではなく怪物だった。
「さあ、絶望するでありんす! そして、新たなファントムを産み出すでありんす!」
そう叫ぶのは、闊歩する異形の怪物。
「このファントム、ブラウニー様がお通りでありんす!」
ブラウニー。
北欧の民間伝承に登場する妖精と同じ名を持つそれは、スキップをしながら、その手に持った槍であちらこちらを破壊していく。自動販売機が真っ二つになり、建物に大きな穴が開いた。
その茶色の体を覆う無数の毛を揺らしながら、ブラウニーは叫んだ。
「さあ、行くでありんす! グール共!」
そうしてブラウニーが放り投げたのは、無数の石。
だが、地面に接触した小石たちは、途端に紫のオーラを纏う。やがて人型になっていくそれら。それぞれが無表情でぎこちない動きをしながら、槍を振り回し、破壊を広めていく。
それはグールと呼ばれる下級ファントムたち。それぞれ角ばった動きで、扇状に広がっていく。
グールたちはそれぞれ町のあらゆる設備を破壊していく彼ら。逃げる人々を眺めながら、ブラウニーは満足げに頷いた。
「さあ! 絶望しファントムを……ぐおっ!」
だが、それ以上の言葉を続ける前に、ブラウニーはバランスを崩した。
頭部に炸裂する火花。それは、ブラウニーだけでなく、グールたちにも例外なく火花を散らしていく。
「な、何でありんす?」
次々に倒れていくグールたちを見て、ブラウニーは目を丸くした。
だが、異変は続く。
雪崩のように倒れていくグールたちに、ブラウニーはあせあせと頭を抱えた。
そして、見た。その正体を。
「何でありんす……これは?」
ブラウニーが拾い上げた、グールを倒した原因。指に挟まるそれは、銀で出来た弾丸だった。
「こんなものが、どこから?」
だが、その言葉と同時に、発砲音が轟いた。
顔を上げれば、確かにどこからか飛んでくる銃弾が、グールたちに命中していっている。それはさらに、生き物のような弾道を見せ、的確にグールの首元に火花を咲かせる。
そしてとうとう、その発生源が現れた。
銀の銃。陽の光を煌びやかに反射するそれは、一瞬ブラウニーの視界を遮った。
現れたのは。
「人間……?」
二十歳前後の青年。
春の季節に合わせた、赤い半袖の上着を着た彼。その表情は柔らかい笑みを浮かべているものの、その目は強く、鋭くブラウニーを睨んでいた。
「な、何者でありんす? ただの人間が、どうしてグールたちを……?」
「魔法使い、かな?」
「ま、魔法使いでありんす? 気取ってて、む、ムカつくでありんす……グール共!」
ブラウニーの号令に、グールたちは一斉に青年、魔法使いへ襲い掛かる。
魔法使いは銀の銃、その銃身を立たせた。そして、収められていた刃を引き出し、その銃口を覆わせる。
銃と剣。二つを兼ね備えた機能を持つ銀の武器、その名をウィザーソードガンと呼ぶ。
魔法使いはそのまま、ウィザーソードガンを振るい、グールたちを斬り倒していく。
さらに魔法使いは、腰のホルスターから何かを取り出した。
指輪だとブラウニーが認識できたのは、魔法使いがそれを右手中指に付けたからだ。
『ビッグ プリーズ』
魔法使いはすさかず、それをベルトのバックルに当てる。
ウィザーソードガンと同様、手のひらの形をしたそれ。指輪を読み込むと、赤い魔法陣が出現し、魔法使いは即座にそこに手を突っ込む。
すると、魔法陣を通じた手が、通常の何倍もの大きさに巨大化。そのまま、群れ成すグールたちを圧し潰す。
「ハルトさん!」
その時、ファントムたちが襲う場に似合わぬ可愛らしい声が響いてきた。
ウィザーソードガンで切り裂いていく魔法使いは、その声に一度動きを止めた。
「待ってよハルトさん……! まさか、私より速いなんて思わなかった……」
「ごめんごめん。先に戦ってたよ、可奈美かなみちゃん」
魔法使い。どうやらその名前は、ハルトというようだ。
一方の今駆けつけてきた少女。手に持った桃色の棒で、襲い来るグールたちを薙ぎ払う彼女は、可奈美というらしい。
蹴りでグールを打ち倒したハルトが、可奈美と並ぶ。右手の指輪を外し、新たな指輪を___ベルト、ソードガンと同じ、手の形をした指輪をバックルに当てた。
『ドライバーオン プリーズ』
すると、その指輪を起点とし、左右に銀でできたベルトが装着される。ハルトはそのまま、ベルトの左右にあるつまみを操作する。
すると。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
ベルト内部の機構が操作され、中心にある手の形をしたバックルがその向きを変える。それに連動して、ベルト___ウィザードライバーは、リズムに合わせた詠唱を始めた。
同時に、ハルトに並ぶ少女、衛藤可奈美えとうかなみもまたその手に持った棒を腰に着ける。
桃色の桜の柄がプリントされたそれ。その先端を引き出すことにより、見るも美しい日本刀___御刀おかたなが現れた。
「行くよ、千鳥ちどり!」
可奈美はそう叫ぶと同時に、不意打ちを狙ったグールを切り裂いた。
倒れ、爆発するグールの爆炎の中、ブラウニーは二人が同時に宣言するのを見た。
「変身!」
「写シ!」
『フレイム プリーズ』
ハルトが指輪をベルトに当てることで、その真の機能が解放される。
『ヒー ヒー ヒーヒーヒー』
指輪から発生するのは、赤い魔法陣。伸ばしたハルトの左手から、彼の体を作り変えていく。
やがて魔法陣がハルトの体を通過した時には、もはや元々の彼___松菜まつなハルトと呼ぶのは相応しくない。黒いローブを全身に包み、顔と胸には、赤いルビーで覆われている。魔法の言葉が記された肩口のアーマーと、腰に無数に付けられた指輪が特徴のそれは、ハルトだった彼をより一層目立たせていた。
今のハルトは……
指輪の魔法使い、ウィザード。
一方、可奈美の体にもまた変化が訪れていた。
全身が霊体へと置き換わり、その全身が白い光に包まれる。彼女をはじめとした、刀使とじと呼ばれる者たちの異能、写シ。
「な、何でありんす?」
突然の人間らしからぬ変化に、ブラウニーは戸惑いを見せる。
ウィザードは返答の代わりに、再びウィザーソードガンをガンモードに戻す。
発砲される銀の銃弾。その威力は、生身の時とは比較できないほどに上昇しており、ブラウニーに決して小さくないダメージを与えていく。
「な、何事でありんす!? お前たち、一体何者でありんす!?」
「何者かって聞かれると、こう答えるしかないかな?」
ウィザードは再度、ウィザーソードガンをソードモードへ。ローブをはためかせて、ブラウニーに接近、その刃を振り下ろした。
「ファントムを倒す、魔法使いだよ」
「面倒でありんすなあ……!」
ブラウニーは槍で応戦。
銀の剣で槍を受け止めたウィザードは、ブラウニーの槍を切り崩し、蹴りで距離を置いた。
そのままバク転でジャンプし、ブラウニーから離れていく。
「逃がさないでありんす!」
ブラウニーは息巻いて、ジャンプで宙にいるウィザードへ槍を突き刺そうとする。
だが槍は、即座に大きな金属音とともに弾かれる。衝撃のあまり、ブラウニーは目を白黒させた。
「何事でありんす!?」
「私のことを忘れてない?」
そう。
変化が大きいウィザードに気を取られ、少女、可奈美がいなくなっていたことに一切気付けなかった。
背を低くしてブラウニーの槍を切り上げた可奈美。よく見れば、周囲にあれだけ展開していたグールたちがいなくなっていた。
「まさか、あれだけの数のグールたちを、たった一瞬で倒したっていうんでありんすか!?」
驚きながらも、ブラウニーは力一杯槍を振り下ろす。
だが、可奈美は見事な動きでブラウニーの槍を紙一重で避ける。それどころか、彼女の刃がブラウニーの胸元を切り裂いた。
「ぐあっ!」
怯んだブラウニー。
さらに追撃として、上空から着地してきたウィザードの剣がブラウニーを盾に切り裂く。
「ひ、ひいいいっ!」
悲鳴を上げるブラウニー。
続いて、ウィザードはウィザーソードガンに取り付けられている手の形をしたオブジェを開いた。
掌部分に刻まれた魔法陣が光を放ちながら、それはまた他と同じく詠唱を開始した。
『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』
「ま、また何かするつもりでありんすね……こ、こうなったら……!」
ブラウニーは、ウィザードと可奈美を同時に指さす。
すると、途端に二人の動きが止まった。
あたかも金縛りを受けたかのように、指一本動くことが出来なくなる。
かかった、とブラウニーは笑む。
「ほいっとでありんす!」
ウィザードに向けた指を可奈美へ、可奈美に向けた指をウィザードへ移し替える。
すると、二人の体が少しだけ浮かび上がった。
まるで幽体離脱のように、ウィザードと可奈美から、それぞれの姿___ウィザードの場合は変身者である松菜ハルトだが___が、透けた状態で浮かび上がる。まさに幽霊のように浮く二人の霊体は、そのまま円を描くように、魔法使いのものが刀使へ、刀使のものが魔法使いへと憑依していく。
「よし、成功でありんす!」
「待て!」
可奈美・・・の声を無視しながら、ブラウニーは近くの建物、その屋上に跳び乗る。そのままブラウニーは、ウィザードたちを一瞥することなく飛び去って行った。
「逃げられちゃったね……」
ウィザード・・・・は呟き、その体が赤い魔法陣によって包まれていく。
それは、変身解除。松菜ハルトの姿に戻り、腰に手を当てた。
「それにしても、槍術かあ……中々見ないけど、でも、剣術とも似ているところがあって面白いね! もっと受けていたら、楽しかったかも!」
「相変わらずの剣術ばっかりだな……そういえば最近、あんまり剣同士で戦う機会もないよね」
可奈美・・・はそう回想した。
「最近はずっとトレギアに苦しめられてきたし、他の参加者たちも、剣を使う人はいなかったからね」
「ハルトさんにコウスケさん、真司さんがたまに鍛錬に付き合ってくれるけど、それぐらいだからね。最後に剣術を見たのは、煉獄さんぐらいかな」
ハルト・・・はそう言って、伸びをする。
「う~ん、なんかさっきの金縛りを受けてから、なんか違和感あるなあ……何て言うか、見えない高台に乗った感じ」
「金縛りの影響で、平衡感覚が狂ったんじゃない?……さて、買い足しに戻ろうか」
可奈美・・・はハルト・・・を見下ろした。その目線が下半身にしか行かないことに違和感を覚え、顔を上げた可奈美・・・。
「あれ? 何で俺・が目の前にいるんだ?」
可奈美・・・は、目の前にいる松菜ハルトと目を合わせる。
本来鏡の中でしか対面したことがないはずの姿に、可奈美・・・は自らの顔、腕、体に手を触れた。
それを見て、ハルト・・・もまたその異常性を理解したのだろう。彼・もまた、自身の体各部位に触れ……
「うわっ! なんか付いてる!」
「やかましい! それよりこれって……」
可奈美・・・は鋭く叫んで、深呼吸。
そして。
「もしかして……」
「私たち……」
顔を震わせる二人。
それぞれ互いに指差し。
「「入れ替わってるうううううううううううううううう!?」」
天まで届く悲鳴を上げた。
後書き
コウスケ「さあって、そろそろ春休みも終わりかあ……」
響「コウスケさんも進級だね?」
コウスケ「おうよ!」
響「進級できたんだねッ!」
コウスケ「おい! オレこう見えても結構優秀なんだぜ? なんたって、考古学者の卵なんてゼミじゃ評判だからな!」
響「すごいッ!」
コウスケ「だーっはっはっは! ……まあ、春休みは何の活動もできねえんだけどな」
響「あー……聖杯戦争とか、あのイリスってサーヴァントとか色々あったもんね」
コウスケ「春休みのほとんどがリハビリで終わっちまったしよ。ったく、この骨折がなけりゃ、もうちとは楽しい大学生活を送れたのになあ」
響「名誉の負傷だねッ!」
コウスケ「明るい声で言うなや!」
響「でも、コウスケさんそれでもへいきへっちゃらだよねッ!」
コウスケ「それはオレが自分で言うことであってお前の主観で決めるもんじゃねえ!」
響「でもだいぶ良くなったよね。やっぱり魔法使いだからかな?」
コウスケ「みなまで言うな。このベルトのことだって、オレもまだよく分かってねえんだ。変身してなくてもオレに力が注がれててもおかしくねえ」
響「おお、わたしの世界でいうと聖遺物みたいだね……お?」
コウスケ「どした?」
響「なんだろ、あれ……?」
???「新店舗開店します! よろしくお願いします!」
響「あ、どうも」
コウスケ「チラシか?」
響「そうだね。えっと……うさぎ小屋本舗?」
コウスケ「ラビットハウスとテーマただ被りじゃねえか!」
響「へえ、でも面白そうだよ! 色んな漫画やアニメを見ながらお茶だって!」
コウスケ「マルチタスク感すげえ! 場所は……結構ラビットハウスに近いな」
響「行ってみようよッ!」
コウスケ「お前興味あるのかよ……んじゃ、道すがら今回のアニメ紹介もやっちまいますかね」
___信じるものがあって 守りたいものがあるから 私は強くなれる 昨日の自分を超えて___
コウスケ「ぱすてるメモリーズ!」
響「2019年の1月から3月まで放送していたアニメだね!」
コウスケ「無数の作中作が、ウイルスによって皆の思い出から消えていく世界、泉水たち思い人が、思い出の力メモリアでウイルスと戦っていくぜ」
響「ごちうさとか、色んなアニメを少し作り変えた作品世界も魅力だよね!」
コウスケ「どことなく原作に似か寄らせながら、アレンジも加えているのも特徴だな」
響「毎回違うジャンルに行くから、バラエティ豊かだよッ!」
コウスケ「まあ、分かりやすく言うと……」
???「おっと、それ以上はいけない」
コウスケ「うわっ! 誰だお前!?」
???「通りすがりの……これ以上は、本編のお楽しみってやつだ」
コウスケ「まだ本格登場してない先行キャラがメタ発言するんじゃねえ!」
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