ハッピークローバー
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第四十四話 夏休みがはじまってその二
「あの人については」
「ファンなのね」
「ファンだから尚更よ」
まさにというのだ。
「そう思うわ」
「そうなのね」
「そうよ、そんなに仕事したくないなら」
「実加が言うみたいに?」
「もう終わらせて」
即ち完結させてというのだ。
「それでよ」
「仕事しないことね」
「せめて今連載している作品はね」
「ちゃんと描いて」
「終わらせるのが漫画家でしょ」
この職業にある者の務めだというのだ。
「それ位しなさいよ」
「そういうことね」
「そう、本当に思うわ」
こう言うのだった。
「ファンとしてね」
「切実ね」
「私が死ぬまでに終わるのかしら」
「その前に作者さんがでしょ」
理虹は冷静に返した。
「あの人の方が年上なんだから」
「そういえばそうね」
「何でも昔は真面目に描いていたそうだけれど」
「今じゃね」
「そうなったのね」
「全く。ファンは待ってるのよ」
富美子は腕を組んで言った。
「最後まで描くのを」
「そういうことね」
「だからこそね」
「終わらせて欲しいのね」
「そうよ、あんなに仕事しないなんて」
それこそというのだ。
「ふざけてるわ」
「あの人は有名だからね」
留奈は両手を後ろにやって遠い目で言った。
「描かないので」
「あの雑誌の読者さんでなくてもね」
富美子は留奈に応えた。
「もうね」
「ネットでいつも話題になってる位だから」
「皆知ってるわよね」
「本当にね」
留奈も実際にと答えた。
「あの人については」
「仕事しろって誰もが言いたくなる」
「そこまでね」
「描かない人だって」
「だから」
留奈はさらに言った。
「私は読んでないけれど」
「知ってるでしょ」
「ツイッターでしょっちゅう連載再開って出るから」
そうなる度にだ。
「記事にもなってるし」
「連載がまた中断したら中断したらね」
「そうなってもね」
「あのね、ゴルゴ見習いなさいよ」
富美子は真顔で言った。
「感染症が流行しないとよ」
「連載中断しなかったのよね」
「それで作者さんがお亡くなりになっても」
それでもというのだ。
「続いてるでしょ」
「それは凄いわね」
「あれこそ巨匠よ」
富美子は言い切った。
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