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ムスヘルム

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第二章

「同胞達と共にだ」
「我等も小人達もだな」
「全てを焼き尽くしだ」
「この世を人に預かるか」
「そうする、兎角だ」
 オーディンはゲームを続けつつ話した。
「わし等にはだ」
「何も出来ないな」
「あの国にはな」
「忌々しいがな」
「滅びは避けられない」
 オーディンは言った。
「神々はな」
「だからあの国にもだな」
「何も出来ない」 
 一切というのだ。
「それが運命だ」
「出来ることと言えばだな」
「ニョルズの神託からだ」 
 神々の祭司である彼のというのだ。
「話を聞くだけだ」
「ラグナロクになれば奴等が動くな」
「そうなる、ロキがブリュンヒルトをジークフリートに委ねてな」
 そうなりというのだ。
「そしてだ」
「それからだな」
「このヴァルハラ、アースガルズの全てがな」
「焼かれるな」
「我等の敵も全てな」
「そうなるか」
「その時までな」
 ラグナロクで自分達が焼かれるその時までというのだ。
「我等は何も出来ない」
「神託で動きを聞くだけか」
「その時になれば動くが」
 ムスヘルムの者達はというのだ。
「それまではな」
「何もだな」
「聞けない、だがブリュンヒルテは今もここにいる」
 ヴァルハラにというのだ。
「まだまだだ」
「安心していいか」
「ロキもいるしな」 
 彼女を炎となり囲むことになるこの神もというのだ。
「まだだ」
「何もないか」
「奴等は動かん、安心するといい」
「あくまで今はだな」
「運命は決まっているがな」 
 それでもというのだ。
「今はだ」
「安心していいか」
「そうだ、奴等のこともな」
「わかった、だがな」
 トールもゲームをしつつ言った、負けているが楽しんではいる。
「しかしな」
「存在しているとだな」
「それだけでだ」
「警戒するな」
「何しろ俺達を滅ぼしだ」
 そのことが運命付けられていてというのだ。
「そしてだ」
「奴等のところには行けない」
「見ることもな」
 一切というのだ。
「出来ないのだからな」
「恐ろしいな」
「これだけ恐ろしいものはない」 
 トールは苦い顔になって話した。
「俺は怖いものはないと言われているが」
「それはだな」
「相手を知ることが出来るからだな」
「どういった者達かな」
「そうだな、だがあの連中はな」
「行くことも見ることも出来ずな」
 そうしてというのだ。
「神託を伺うしかないとなるとな」
「動かないということだけ聞いてな」
「それではだ」
 オーディンは隻眼に剣呑な色を込めて話した。
「知ることなぞ出来るものか」
「ロキに聞こうにもな」
「あの者もその時まで行けない」
「炎の神であってもな」
「あの者も神となってな」
 炎の精霊からだ。 
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