Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
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無印編
第十話 厄介事と平穏な学生生活
side ユーノ
なのはが無事にジュエルシードの封印を終えて一段落ついたとき、いきなり僕達の周りに剣が降り注いだ。
その数、六
剣の弾道から後ろと判断し、振り返るけど誰もいない。
恐らく後ろの僕達がいる建物より高い建物から投げたはずだ。
だがこの相手はとんでもなかった。
「無駄な抵抗はしないことだ。無益な殺生は好まん」
その言葉と共につい先ほどまで僕達が向いていたほうの塀の上に平然と立っていたのだから。
全身黒ずくめに、赤い外套とフードを纏って、白い髑髏の仮面をつけた人。
なのはとそんなに身長も変わらないので、恐らくなのはと同じ年頃の子。
だけどその子が放つ威圧感はとてもなのはと同じ年頃の子とは思えない。
さらに右手には指と指の間に三本の剣が握られていた。
その姿はまるで死神を連想させた。
「……っ」
頭を振り嫌な連想を振り払う。
気を引き締めろ。この子は油断できる相手じゃない。
いつでも動けるように身体に力を入れるけど僕じゃ恐らく敵わない。
持つ剣は僕らの周りに突き立つ剣と同じ形状。
それにわずかに魔力を感じるけどデバイスじゃない。
明らかに質量兵器。
こちらが警戒していると相手が静かに言葉を発した。
「貴様らは何者だ? 先の樹はなんだ? 何が目的で我が領域に侵入した?」
デバイスを見たのに僕達が魔導師だとわかっていない?
それに我が領域って
嫌な予感がする。
この世界には魔法技術はないはずだけど、それは単純に僕が知らないだけで秘密裏に存在したとすれば最悪だ。
彼から言わせれば僕らは自らを脅かす敵でしかない。
交渉する余地があればよかったんだけど彼にそんなものはない。
それどころか僕となのは、フェレットと少女相手に油断も慢心もない。
下手に動けば本当に殺される。
なら正直に答えるしかない。
「僕はユーノ・スクライア。
ミッドの魔導師で、この子は僕に協力しているだけです。
僕達の目的はロストロギア、ジュエルシードの回収。
先の植物もジュエルシードが原因です」
正直に答えるけどなのはの名前を出すわけにはいかない。
声からして男の子だろうけでど、彼はここを自分の領地といった。
どういった意味かは知らないけど、名前がばれればなのはの家がばれる可能性が高い。
そうなれば無関係な人達をさらに巻き込みかねない。
「魔導師……か。重ねて問う。
貴様、魔術師ではないのだな。
それとロストロギアとはなんだ?」
魔術師? この世界の魔導師のことなんだろうか?
どうやら魔導師やロストロギアに関しても一切知識がないみたいだ。
間違いない。彼は魔導師じゃない。
だからと言って油断できる相手じゃないけど
「僕達は魔術師ではありません。
ロストロギアとは過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称のことです」
僕の言葉に満足したのか右手に持つ剣をしまう。
それに僕も少しだけ安堵するけど
「この土地でしていることには眼を瞑ろう。
だがこれ以上一般人の平穏を脅かしたり、秘匿が出来ない場合、貴様を外敵と認識する。
よく覚えておけ」
彼はそう言い残し、一歩下がりビルの屋上から身を投げた。
それと同時に威圧感も消えた。
なのはも緊張してたのか座り込んでしまった。
と同時に周りに刺さっていた剣も消えてしまった。
「……ユーノ君、今の子って」
「多分この世界の魔導師。少なくとも僕達と同じ魔導師じゃないのは間違いない」
今回はどうやら見逃してくれたみたいだけど、今度会ったときはどうなるかわからない。
彼の事を少し調べないとまずい。
じゃないとこっちが常に後手にまわってしまう。
「なのは、レイジングハートを使って彼を追って」
「う、うん。お願いレイジングハート」
「Yes」
レイジングハートがデバイスモードになり、周りをサーチする。
だけど
「Sorry, target lost」
「だめ。全然見つからない」
相手の方が何枚も上手らしい。
彼の事をどうするべきか考えると頭が痛い。
side 士郎
ビルから飛び降りると同時に路地裏に入り、隠れながら遠回りをして家に戻る。
仮に探されたとしても魔力殺しのアミュレットを身につけているのだ。
魔術を使いでもしなければ魔力からは後は追えないはずだ。
黒鍵の方もビルから飛び降りると同時に破棄したので問題はない。
「だが魔術師じゃなくて、魔導師とはな」
しゃべるイタチ、ユーノ・スクライアの言葉に嘘がなければこの世界に魔術師の代わりに存在するモノと見て間違いないだろう。
それにしても術式がかなり違う。
なのはが持っている杖も魔術師が持つ礼装と違い、かなり機械的であった。
さらにユーノはロストロギアの説明の時に魔術ではなく魔法と言った。
根本的な概念そのものが違うとみていいだろう。
「それにロストロギア、ジュエルシード」
ユーノいわく、過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称。
ジュエルシード、あの青い宝石にどのような機能があるかは実物を手にしなければ理解も出来ないが、危険なモノとみて間違いはないだろう。
なにより
「シリアルナンバー10となのはが言っていたな」
あれが一体何個あるのかは知らないが、ナンバー10があるのだから最低でも10個は存在する。
あれはこの街の人々の平穏を壊すことになる。
俺はそれが見逃せない。
なのはにはそのうち俺の事もばれるかもしれないが、教える必要はない。
それにユーノはなのはを協力者と呼んだ。
ユーノが現れるまで表の世界で暮らしていたのなら、なのはは今、表と裏の境界線にいる。
なのはのような子供に裏に関わってほしくはないが、現状詳しいことが分からないので何もできない。
「巡回ぐらいはした方がいいか。あとは情報収集だな」
遠坂が宝石の鳥を使い魔として使っていたことがあるが、俺も鋼で鳥を作って使い魔にすることができる。
まとめて使えるのは三つが限界だが、ないよりはマシだろう。
それ以上は情報が多すぎて俺では処理できないしな。
とりあえずは食料の買い出しと夕食を摂ってからだな。
慌ただしい休日はまだ終わらない。
翌朝、通常通り学校に行くがなのはにはばれていないようだった。
そのことに安堵しつつ、その日の夜から俺は三羽の鋼の鳥と共に町を巡回していく。
だが残念ながらジュエルシードの発見や進展もなく再び週末がやってきた。
それはいつものようになのは達三人と食事を摂っている時の事だった。
「それにしても士郎のお母さんって料理好きなの?」
「ずいぶんといきなりだな」
お互いのお弁当の話からいきなりアリサからそんな事を尋ねられた。
「だってねえ」
「うん」
アリサとなのはの視線が俺のお弁当箱の中にいく。
ちなみに本日のお弁当はパニーニと魔法瓶に入った紅茶である。
種類は三種類。
片方はハムにレタス、トマト、チーズとシンプルの物
もう片方はエビとレタス、オニオンにオリーブソースをかけた物
さらに和風にレタスを少し多めにして、チキンを揚げてケチャップとマヨネーズに胡椒、レモン果汁を混ぜたソースをからめ挟んだ物だ。
ちなみにレタスが多いのは昨日のスーパーの特売が関係してたりする。
和洋どちらにでもレタスはよくあうのだ。
それに大きめのパニーニを挟んだ後にカットしているので食べにくいこともない。
まあ、多少多い気もするが男子ならこれくらい問題ない。
「あと言ってなかったが両親いないから作ったのは俺だ」
「あ、ごめん」
出来るだけ軽く言ったのだがアリサも申し訳なさそうに謝るし、なのはも俯いてしまった。
やっぱりこのぐらいの歳の子供が独り暮らしとなるとこうなるものか。
だがせっかくの昼食を暗くしても仕方がない。
「ん、よかったら一つどうだ?」
俺の言葉にアリサとなのはが顔を見合わせお互いに一つとる。
そして二人とも口をつける。
と固まった。
ん? どこか失敗しただろうか?
「……おいしい」
「うん。こっちもおいしい」
二人とも顔がほころぶ。
二人とも可愛いんだから笑顔が一番だ。
すずかが二人をうらやましそうに見ていたので、黙って差し出すと
「ありがとう」
笑顔で一つ受け取って食べてくれた。
その後、三人とも違う種類を取っているので互いに交換しつつ全ての種類を食べていた。
減った俺のお弁当に三人のおかずやおにぎりを分けてもらいながらのんびりと食事を続ける。
「それにしてもおいしいハムよね」
「うん。チキンのソースもおいしかったし」
「オリーブソースもちょうどよかったよね」
三人とも俺のお弁当に満足してくれたようだ。
「どこでこのハムとかソースとか買ってんの?」
アリサがそんな事を尋ねると同感と言わんばかりになのはが何度も頷いてる。
ちなみにすずかはその答えをわかっているためか苦笑している。
「ソースとハムは自家製だ。さすがに野菜は買っているが」
「は?」
「え?」
アリサとなのはが固まった。
ソースは手作り、ハムは生肉を買ってきて自宅で燻製。
かのはっちゃけ爺さんや黒の姫君の舌を満足させた衛宮印の逸品なのだ。
そこいらの製品に劣る気はない。
そんな事を思っているとまた三人が集まってコソコソ話をしていた。
「すずか、あんた知ってたの?」
「まあ、一応」
「士郎君、すごすぎだよ」
「というか女のプライドが……」
相変わらず聞こえないが何を話している事やら
としばらくして満足したのがコソコソ話も終わった。
そして
「士郎、明日空いてる?」
とアリサにいきなり尋ねられた。
どうやらお弁当ネタはここまでにして話を変えたいらしい。
で明日の予定だが学校は休みだが、また用が入っている。
「すまない。明日はまた用がある」
「そっか、残念ね。すずかの家でお茶会するから一緒にと思ったんだけど。
まあ、忙しいなら仕方がないわね」
「……多分会うと思うぞ」
「何か言った?」
俺の小さなつぶやきに反応したアリサに首を振る。
会ったら驚くだろうから、その時まで秘密にしておこう。
すずかも俺の意思を感じ取ったのか苦笑しながらも何も言わなかった。
さて、お姫様方がおいでになるのだ、明日は存分に腕を振るうとしよう。
アリサとなのはは驚くだろうなと思いつつ何を作るか考え始めた。
後書き
いつもの週一の日曜の夜中の更新です。
今夜は第十話と第十一話の二話です。
ではでは
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