| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ホモ爺

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「さっきは淳一さん来てらしたわ」
「あの如何にもホスト風のだな」
「あの人もね」
「親父は今日も親父だな」
「そうよね」
「夫婦で笑って話すことかよ」
 実篤は和気藹々とした両親にむっとした顔で突っ込みを入れた。
「あのさ、祖父ちゃんはな」
「同性愛か?悪いか?」
「私達はそっちの趣味はないけれどね」
 夫婦で息子に何でもないといった口調で話した。
「別に法律に触れてないし」
「浮気でもないからいいだろ」
「お義母さんも納得されてるし」
「別にな」
「家は祖父ちゃんのハーレムになってるのにかよ」
 始終彼の愛人達が出入りしてだ。
「いいんだな」
「お父さんが子供の頃からそうだったしな」
 父は息子に話した。
「もう別にな」
「そうかよ、しかし祖父ちゃんの相手って色々だな」
 実篤は先程の黒人の彼を思い出して語った。
「前は如何にも文学隙の美少年の人だったしな」
「昨日の彼だな」
「ああ、そうだったしな」
「彼は昌也君だったな、国立大の学生さんだよ」
 青森のというのだ。
「立派な人だ」
「学生さんか」
「そうだ、将来有望だぞ」
「それでも祖父ちゃんの愛人さんなんだな」
「今はな」
 父は息子にあっさりとした口調で答えた。
「そうだ」
「本当にあっさり言うな」
「駄目か」
「家族が普通に受け入れていて信じられないよ」
 これが息子の返答だった。
「俺としてな」
「これが浮気なら大変だけれど」 
 母も言うことだった。
「相手が男の人だったらね」
「浮気じゃないって言うんだな」
「だからね」 
 そうした解釈だからだというのだ。家族は。
「いいでしょ」
「そもそもお前祖父ちゃんをどう思っているんだ」
 一雄は実篤に真剣な顔で問うた。
「一体」
「祖父ちゃんがかよ」
「そうだ、駄目な人間とか思っているのか」
「いや、俺だってホモが悪いと思ってないよ」
 実篤は真面目な顔で答えた。
「別にな」
「そうだな」
「キリスト教とかが何であんなに厳しく禁止してたか意味がわからないよ」
「個人の趣味の話だからな」
「処刑されるとかな」
 その同性愛が罪とみなされてだ。
「それおかしいってな」
「思うな」
「ああ、それで俺が言うのは浮気じゃないかってな」 
 彦次郎のそれはというのだ。
「思っていただけで」
「浮気は女の人に対して行うものだろう」
「そうでしょ」
 父だけでなく母も言ってきた。
「結婚していたら」
「他の女の人と浮気したら駄目よ」
「それはな」
「けれど男の人が相手ならいいでしょ」
「武田信玄さんだってな」
 父はここでこの戦国大名の名前を出した。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧