スーツだと別人
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第一章
スーツだと別人
夫の川尻行成の家での姿、ジャージ姿のそれを見てだった。
直美は呆れた顔になってだ、こう言った。
「もうだらしなさ全開ね」
「そうか?」
「そうよ」
寝転がってテレビを観ている夫に告げた、直美は薄茶色の髪の毛をおかっぱにしていて楚々とした優しい感じの目で小さな頭で唇は小さく鼻は高い。一六〇程の背で胸は九十はある。白いエプロンと黒のセーターにクリーム色のスラックスという恰好だ。
「お家の中だと」
「まあこの恰好がな」
夫は眠そうな顔で応えた。切れ長の目で顔は長い五角形で薄い唇は真一文字である。眉は太く長く背は一七九位で痩せている。
「一番くつろげるからな」
「それで家の中はジャージね」
「いつもな、トランクスでいるよりいいだろ」
「ずっとね、けれどね」
ジャージ姿の夫を見て言うのだった。
「正直今のあなたからは何も感じないわよ」
「ジャージだとか」
「こうぐっとくる、恋愛とか」
「夜のこととかか」
「全くね、スラックスでもないとね」
着ているものはというのだ。
「感じるものはないわ」
「そういえばお前休日はしようって言わないな」
「そんな姿見たら」
日中にというのだ。
「思わないわよ」
「そうか」
「ええ、どうもね」
こうテレビを観ている夫に言って昼寝している二人の息子で小学校に入ったばかりの英雄のところに行った。
そして夜実際に直美は夫と同じベッドで寝てもただ寝ただけであった、だが次の日に。
朝スーツを着て出社する夫にだ、顔を赤くさせて囁いた。
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