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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十九話 ほたる、父を見るのことその十一

「ほたる、御前ともだ」
「私とも戦う・・・・・・」
「間も無く姿を現す」
 そうしてだというのだ。
「その時に御前達をこの手で消してやる」
「見上げた外道じゃな」
 黄蓋はその声の言葉にだ。これ以上はないまでの侮蔑を見せて話す、
「実の子を手にかけるというのか」
「それが修羅の道」
「ふん、御主に言っておく」
 修羅と言っただ。その彼にだというのだ。
「修羅は人より弱いのじゃ」
「ほう、それは何故だ」
「修羅は戦しか知らぬ。しかし人はその他のものも知っておる」
 だからだというのだ。
「人は修羅より強いのじゃ」
「初耳だな。戦いのみを知っていればそれだけ強くなる筈だがな」
「御主は牙刀殿とほたる殿に敗れる」
 黄蓋は断言すらする。
「そうなることを言っておく」
「果たしてそうなるか我が証明してやろう」
「するがいい。わしの言葉が正しいことをな」
「黄蓋といったな」
 声はその黄蓋にも言ってきた。
 抑揚は見られない。だが敵意と闘争心には満ちている。
 その声がだ。こう彼女に言ってきたのである。
「二人の後は貴様だ」
「ほう、わしと闘うというのじゃな」
「そしてこの手で殺してやる。我を侮辱したことは許せぬ」
「安心せよ。御主は二人に敗れる」
「まだ言うのか」
「わしは嘘もはったりも言わん」
 平然とだ。笑みさえ浮かべて返す黄蓋だった。
「御主は二人に敗れるわ」
「言うものだな。こちらの世界の女は」
「こちらの世界の女全てを知らぬがわしは嘘は言わん」
 またこうだ。黄蓋は声に返した。
「御主は敗れるわ」
「その言葉覚えておくことだな」
「うむ、御主もな」
「また来る」
 忌々しげにだ。声は言ってきた。
「ではだ」
「お父さん、どうして」
 ほたるの声も聞かずにだ。声の主は気配を消した。そうしてだった。
 残ったほたるはだ。怪訝な顔になりだ。黄蓋に顔を向けて尋ねた。
「あの、さっきの御言葉ですけれど」
「ああ、あのことじゃな」
「はい、私達がその」
「御主にも言うがわしは嘘もはったりも言わぬ」
 黄蓋は微笑みだ。ほたるにもこう言うのだった。
「御主達はあの者に勝てる」
「そうなのでしょうか」
「戦しか知らぬ者の強さは限られておるのじゃ」
「ああ、そういえば仏教だったわね」 
 この頃に入って来た宗教についてだ。孫尚香はふと気付いて話してきた。
「六界があって」
「あっ、それでしたら私も知ってます」
「そっちの世界にもあるのね」
「はい、仏教でしたら」
 ほたるは孫尚香に話していく。
「その六界で」
「修羅界があるわね」
「修羅界は人界より下にあります」
「修羅って人より低い位置にあるのは」
 ほたると孫尚香が話しているとだ。ここでだ。
 黄蓋が微笑みだ。その二人に話した。このことについてもだ。
「そういうことじゃ。奴等は戦しか知らぬからじゃ」
「だから人より低い世界にあるのね」
「そうなるのですか」
「そして戦しか知らぬのでは強さも限られてくる」
 これもあるのだというのだ。
「そういうことじゃ。ほたる殿も然りじゃ」
「私もですか」
「人であることを捨て修羅にあえて落ちた者よりもずっと強い」
「多くのものを知っているからですか」
「左様じゃ。安心して戦うのじゃ」
 微笑みだ。そうしてなのだった。
 黄蓋はあらためてだ。二人に話した。
「では。もう少し歩くか」
「森の中をね」
「いい匂いがしてきた。果物が近くにあるな」
「あっ、そういえば」
「アケビの香りがしますね」
 孫尚香とほたるもだ。その香りに気付いた。そして言うのだった。
「じゃあそれ食べましょう」
「そこまで行って」
「うむ。行こうぞ」
 こう話してだった。三人はだ。
 そのアケビを食べに行った。だがほたるはだ。父との戦いのことについてだ。不安を感じずにはいられなかった。黄蓋のその言葉を聞いてもそれでもだ。


第百二十九話   完


                           2011・12・12
 
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