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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十九話 ほたる、父を見るのことその三

 そしてだ。杯の中にあるその紅の美酒を見つつだ。彼女は言った。
「牙刀さんは目を潰された怨みを忘れていませんし」
「血の雨が降りますね」
 今言ったのは審配だった。
「その時は」
「親子が殺し合うってのは絶対に避けたいですね」
 文醜が言った。
「それだけは」
「そうよね。何とかしたいけれど」
 顔良も文醜に応えて述べる。
「その時は」
「だよな。まあ本当にいるかどうかわからないけれど」
「いる可能性高いしな、実際」
 文醜はその両手を自分の頭の後ろで組んで言った。
「こうまで色々来てたらな」
「そうですわね。その時は」
 袁紹は今はその眉を曇らせていた。
 そのうえでだ。自分の家臣達に話した。
「少し牙刀さんの周りにですけれど」
「はい、人をですね」
「人を置いてですね」
「最悪の事態を避けるようにしますわ」
 父子の殺し合い、それだけはだというのだ。
「それについてですけれど」
「では私が」
 張郃が名乗り出る。
「牙刀殿の傍にいます」
「頼みましたわ」
「お任せ下さい。私も牙刀殿に親殺しの罪はさせたくありません」
 張郃自身もだ。そうだというのだ。
「ですから」
「ではその様に」
「はい、それでは」
 こう話してだった。袁紹は牙刀について手を打った。そうしてだった。
 次の日だ。早速だ。彼の傍には張郃がいるようになった。そして彼女だけでなくだ。
 徐晃もいた。彼女もいてだ。牙刀と行動を共にする様になった。
 その二人にだ。牙刀は言うのだった。
「いいだろうか」
「はい、何でしょうか」
「何かありますか?」
「親父のことか」
 察していた。彼は既に。
「それで今傍にいるのか」
「それは」
「何と言いますか」
「隠さないでいい」
 既にわかっている。だからだというのだ。
「袁紹殿と曹操殿の気遣いだな」
「そうです。麗羽様はです」
「華琳様はです」 
 二人はそれぞれの主の名を出して牙刀に話す。
「牙刀殿にどうしてもです」
「親殺しの罪だけはとお考えなのです」
「それはわかる」
 二人の気遣い。それはだというのだ。
「二人の俺への配慮はだ。しかしだ」
「それでもですか」
「御父上を」
「そうだ。俺がやる」 
 強い目でだ。牙刀は言い切った。
「これは俺がやらなければならないことだからだ」
「その理由ですが」
「若しや」
「確かに目のこともある」
 一度潰されたその目への仇だ。それもあるというのだ。
 しかしそれ以上のものがあるとだ。牙刀は静かに話した。
「だが。親父は間違いなくだ」
「この世界に来ているならですね」
「そうならば」
「やはり。于吉やオロチ達のところにいる」
「そうだというのですね」
「そうだ。間違いない」
 彼等と共にいるというのだ。彼の父は。
 
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