子犬からのプレゼント
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第一章
子犬からのプレゼント
南アフリカケープ州でのことだ。
ゴミ捨て場で一匹の子犬がいると聞いた動物保護団体のスタッフを務めているレイチェル=グラッソンブロンドの長い髪で黒い目に面長の顔を持つ長身の若い女性である彼女は同僚と共に現場に向かった。
そしてそこにいる生後九週間位で茶色い毛の大きな耳が垂れた雄の子犬を見て言った。
「すぐにね」
「ああ、保護しよう」
同僚も是非にと応えた。
「かなり弱っているみたいだし」
「それで獣医さんに診てもらって」
「新しい家族の人達を探そう」
こう話してだった。
そのうえで子犬を保護しようとしたが。
「クゥ~~~ン・・・・・・」
「この子・・・・・・」
子犬はゴミ捨て場にあった唯一食べられそうな腐りかけの食パンを咥えてだった。
レイチェル達に差し出した、レイチェルはその姿を見て言った。
「私達が助けてくれると思って」
「お礼でだね」
同僚も言った。
「くれるんだね、パンを」
「そのつもりなのね」
「何ていい子なんだ」
同僚はその姿に感銘して唸った。
「こんないい子は滅多にいないよ」
「そうね、それじゃあね」
レイチェルも同じく唸って言った。
「保護して」
「素敵な家族を紹介しよう」
「獣医さんにも診せてね」
二人で話してだった、その彼を保護した。食パンは受け取らなかったがその代わりに彼にドッグフードを与えてだった。
たらふく食べさせてから獣医に診てもらってだ。
感染症等の治療を行い施設で育てつつ飼い主を募集すると。
ケープ州で夫と共に旅行会社を経営しているマリー=フリーヤ茶色がかったブロンドの髪と緑の目を持つ整った外見の彼女がガンナーと名付けられた彼のことを聞いて里親に申し出て迎え入れた、そして一年程経ってから施設を訪れレイチェルに彼のことを話した。
「とても元気でそれ以上に」
「いい子ですか」
「あんないい子はいないわ」
こう言うのだった。
「本当に」
「そうですか、やっぱり」
「お話を聞いたけれど」
「保護された時の」
「その時のままね」
「とてもいい子ですね」
「ええ、だからね」
ガンナーの性格がとても素晴らしいからだというのだ。
「幸せよ、素敵な子供よ」
「それは何よりです」
レイチェルは笑顔で応えた、素晴らしい心を持つガンナーが優しい人に家族に迎えられその心を讃えられていることが嬉しかった。
そしてタイに休暇中に旅行に行ってだった。
クラビ県を観光している時に近所の野良犬達にご飯をあげている黒髪を長く伸ばしたお婆さんが大きな耳に目の周りが茶色く身体は茶色と白の雄の子犬が彼女に木の葉を差し出しているのを見て言った。
「プレゼントかしら」
「ええ、そうよ」
老婆は犬達にご飯をあげつつ答えた。
「この子はいつもこうなの」
「プレゼントをしてくれるの」
「私は主人と一緒に居酒屋をやってるオラワンっていうけれど」
自分の仕事と名前も話した。
「余ったものをね」
「犬達にあげているのね」
「毎日ね。捨てるのも勿体ないから」
こう思ってというのだ。
「そうしているけれど」
「その中でなのね」
「この子、トゥアプーはね」
自分と同じ模様の大きな犬と一緒にいる彼を見つつ話した。
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