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泳がない時は

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第二章

「わかりやすいみたいだな」
「症状出るの」
「変に狂暴になったりな」
「だから狂犬病ね」
「それに化け猫みたいに油だってな」
「舐めるの」
「そして水もな」
 これもというのだ。
「怖がるんだ」
「お水もなの」
「そうした症状が出るからな」
「わかりやすいのね」
「ああ、だからふわりがな」 
 予防接種を終えて今は自分の家であるケージの中に自ら入って寝転がりだしている彼女を見て話した。
「泳いだり水を飲むのも怖がったらな」
「狂犬病ね」
「そうなってるかもな」
「そうなのね」
「日本には今は狂犬病はないがな」
 昭和三十二年以降そうなっている。
「将来予防接種をさせていない奴のせいで出たり海外だとな」
「まだ狂犬病の生きものいるわね」
「そうだからな」
 それでというのだ。
「そうした風な生きものがいたらな」
「注意することね」
「近寄ったら駄目だ」
 そうした風な生きものがというのだ。
「注意しような」
「そうね、絶対に」
「それで本当に予防接種はしないと駄目だ」
 妻にふわりを見つつ話した。
「なってからじゃ遅いんだ」
「なったらほぼ確実に死ぬから」
「だからな、そのことはな」
「本当に注意ね」
「ああ、ふわりもいいな」
 予防接種の時は怖がって硬直していた彼女自身にも言った。
「予防接種はしていくぞ」
「クゥ~~~ン・・・・・・」
 ふわりは嫌そうだった、だが彼女が幾ら嫌でもだ。 
 文太は百合子にまた連れて行くと言った、妻もそうしてと答えた。狂犬病のことを知っているが故に。


泳がない時は   完


                   2022・11・23 
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