フィンガーボールを見て
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第一章
フィンガーボールを見て
この日又吉家の一家は格式のあるレストランの中にいた、そこで息子の修治まだ小学三年の彼は両親に言った。
「何で僕達皆奇麗な服着てるの?」
「今日は凄い高級なお店だからな」
「それでなのよ」
父と洋太郎と母の吉能は微笑んで応えた、父は普段はセットしていない黒髪をオールバックにしているがそれが細面で切れ長の目と薄い小さな唇を持つ顔に似合っている。一七七程のすらりとした長身にもタキシードが似合っている。母も普段は長い髪の毛を後ろで束ねているだけだが今はセットしている。そして薄化粧も今はしっかりしていて黒いはっきりした目と赤い唇にホームベース型の顔は普段から整っている方だがそれが五割増しになっている、そして一五六位の整った身体をスカーレッドのドレスと赤いハイヒールで包んでいる。
「今日は皆お洒落してるのよ」
「そうしたお店だからな」
「何かお城みたい」
娘の小学二年生の愛理も言った、見れば息子は母に娘は父によく似た顔だ。
「ここって」
「ははは、欧州のだな」
「そのお城みたいなのね」
「前にテレビでやってたベルサイユみたい」
娘はこうも言った。
「ここって」
「そうだな、大理石の彫刻もあるしな」
「絨毯もカーテンも豪華だし」
「世の中こうしたお店もあるんだ」
「凄い高級なお店もね」
夫婦で子供達に話した。
「ラーメン屋や回転寿司のお店だけじゃないんだぞ」
「そうしたことも覚えておいてね」
「うん、チケット当たって」
息子は一家で来ている事情をここで言った。
「よかったね」
「そうだな」
「本当に運がいいわ」
サラリーマンと実家のパン屋のパートの両親も素直に喜んでいた、そうして一家で予約されていた席に座ってだった。
コースを待ったが最初にだった。
水が入った陶器製のボールを見てだった、息子も娘もだ。
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