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急に髪の毛を伸ばして

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第二章

「私あんたのこと好きだから」
「それって告白だよな」
「そうよ、返事聞きたいけれど」
 二人用の席に向かい合って座ったうえで言って来た、見れば必死の顔だ。
「是非」
「まさかな」
 才蔵は戸惑ったまま応えた。
「そう来るなんてな」
「思わなかった?」
「ああ、まさか髪の毛伸ばしたのも」
「あんたが黒髪ロングのアイドル好きって聞いて」
 それでというのだ、見ればもう結構伸びている。
「それでよ」
「そうだったんだな」
「ええ、それでまた言うけれど」
「返事か」
「どうかしら」
「俺の為にしてくれたんだよな」
 髪の毛を伸ばしたことを話した。
「そうだよな」
「ええ」
「俺のことが好きで」
「そうよ」
 その通りだとだ、才蔵に真っ赤な顔で答えた。
「それでなのよ」
「コンクールのことも」
「入賞したらね」
「言うつもりだったんだな」
「自分に何か出来たら言おうと思って」
 才蔵にというのだ。
「それでよ」
「そこまでしてくれて断わる筈ないだろ」
 才蔵は真顔で答えた。
「俺だって嫌いな奴と話しないさ」
「それじゃあ」
「ああ、俺でいいんだよな」
「あんたじゃないと駄目なの」
 決死の顔で答えた。
「だから入賞目指して頑張って」
「髪の毛も伸ばしたんだよな」
「そうよ、じゃあね」
「これまでは幼馴染みだったけれど」
「彼氏彼女にね」
「今なったな、じゃあな」
「ええ、宜しくね」
 理佐は真っ赤になった真剣な顔で答えた、こうして二人は交際する様になったが。
 理佐は髪の毛を伸ばし続けた、才蔵はその彼女に言った。
「実は俺黒髪ロングじゃなくてもな」
「よかったの」
「別にな、ただ今はな」
 すっかり伸びて胸まであるその髪の毛を見て話した。
「好きだぞ」
「そうなの」
「ああ、お前が俺の為にしてくれたからな」
 優しい笑顔での言葉だった、そうしてその髪の毛に彼女の笑顔も見たのだった。


急に髪の毛を伸ばして   完


                 2022・11・22 
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