| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-

作者:セリカ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

無印編
  第四話 新たな住処

 街を抜けて、図書館に向かう。
 これが当初の目的だったのだが、その前にすることができた。
 理由は簡単。
 俺のあまりの恰好に誰かが通報したのか、警察に呼びとめられたのだ。
 だが自身を証明する物を持っているはずもないので暗示を使いやり過ごした。

 その後は路地裏を使い、目立たないように移動し、再び暗示を使い、魔力のこもっていない宝石を換金する。
 そして、ズボンやシャツ等の当面の着替えと目立つ白髪を隠すために帽子を購入した。
 死徒になり魔眼を持った事によりこういった暗示が簡単にできるのは助かる。

「しばらくはこれで大丈夫だな。次は」

 そのあと不本意だがコンビニでおにぎりと飲み物を買い食べる。
 本当なら手作りをしたいのだがそんな場所もない。
 死徒なんだから食べなくても死にはしないが、空腹がそのまま吸血衝動に変わることがあるので腹に何か入れておく必要はある。

 そんな事をしてせいで時間がかかり、昼前にようやく図書館に辿りついた。
 まずは地図を使い日本における海鳴市の位置を把握する。
 その後、冬木をはじめとする日本の霊地を調べてみるが

「……冬木はないか」

 冬木は存在せず、その他の霊地も存在していなかった。
 だがこの図書館に辿りつくまでの間に多少ではあるが霊脈を感じることは出来た。
 つまりは海鳴市の中に遠坂の土地には及ばなくても、それなりの霊地がある可能性も否定できない。

 その後、国内外問わず過去の新聞や事件を調べ、読み漁ってみるも魔術が関与したような事件、事故は見つけることができなかった。
 図書館が閉館時間になったので、図書館を出て、歩きながらこれからの事を思考する。

 当面は図書館に通って一日では調べきれなかった事件事故の資料に目を通す。
 それと同時に海鳴市の霊地を散策するのが一番だろう。
 それにいい物件もちょうど見つけた。

 図書館を出た後に、俺が向かっていたのは図書館のすぐそばを通る太い霊脈の先。
 それなりの太さがあったから霊地にたどり着くと予想したのだ。
 そして、辿りついたのは街から少し離れたところ。
 周りに家もなく、辺りには木々も多く残っている。
 さすがに遠坂の土地には及ばないものの予想以上の霊地だ。
 そして、そこには見覚えのある洋館が建っていた。

「見覚えのあるというよりほとんど遠坂の洋館と同じ造りだな」

 これならば文句のつけようもない。
 洋館には人の気配もないし、解析をしてもトラップの類も見当たらない。
 と雑草の中にボロボロの看板があった。

「一応売り家か。念のために調べておくか」

 看板に書かれた不動産会社を記憶し、街に戻る。
 交番で道を尋ねて不動産会社を見つけ出し、家の事を尋ねてみる。
 勿論、子供がそんな事をいきなり尋ねても教えてくれるはずはないのでまた暗示を使わせてもらった。

 不動産屋の話によると前の持ち主が亡くなり相続人もいない上にいろいろといわくがあり買い手も決まっていないらしい。
 本音でいえばこの土地は拠点としては申し分がない。
 借りるなり買うなりしたいのだが換金した金額ではとても足りるはずもないし、身分書もない。

 そういうわけで内心で謝りつつ、もともと俺がこの屋敷の相続人であるように暗示をかける。
 そして書類一式全てを貰いうけた。
 その際ここ十年の管理費用もすでに払っていると暗示をかけたので購入費は0円である。

「……俺もこれで犯罪者だな」

 この場合、詐欺になるのだろうか……気にするのはやめよう。

 そんなわけで郊外の空き家を自身の家として住み始める。
 中に入って驚いたのが家の間取りも遠坂の家とよく似ている。
 さらにありがたい事に大きな振子時計など放置されている家具もある。
 少し手を加えてればすぐに使えそうだ。

 それにこのレベルの霊地なら結界などの準備もすぐにできる。
 それから一週間ほどは午前中に図書館で調べ物をして、午後からは家の大掃除と結界等の準備を着々と進めていくことにした。

 であっという間に十日経ったのだが、結構いい感じというか予想以上である。

「あと一つほしいものがあるが、これでとりあえずは十分か」

 冷蔵庫やテレビなど必要な家電もリサイクルショップなどから故障品を貰い、自分で修理して揃えた。
 結界も十分なモノが用意できた。
 後は鍛冶場があれば工房としても機能し始める。
 さすがに鍛冶場はこれからだろう。
 それにこの家、台所に遠坂の家にもなかった石窯があった。
 これならば家で自家製のパンも焼ける。
 そう考えると本当にいい物件だ。
 ただで貰った不動産会社には申し訳ないが

 それから、俺は改めて海鳴市の他の霊地を調べ始めた。
 これだけの土地ならば魔術師がいてもおかしくはない。
 そして、調べて判明した海鳴市の主な霊地は三つ。
 一つ目は今俺が住んでいる土地。
 二つ目は神社。
 もっともこの神社は霊地とはいえ柳洞寺程ではない。
 もちろん周りが結界で覆われていることもない。

 そして三つ目が海鳴市外れにある最大の霊地。
 その霊地には俺が住んでいる洋館より遙かにでかい屋敷が建っており、その屋敷の所有者が

「……月村か」

 これだけの霊地の上に屋敷を構えているのだ。
 この屋敷の主に関しても少し調べる必要はあるか。
 屋敷を見ながら色々と思案するが、少し迂闊だったかもしれない。
 監視カメラがこっちをじっと見ている。
 カモフラージュしたものも含めおよそ二十。
 面倒事にならないことを願いたいものだ。
 踵を返し、帰路につく。

 だが俺の願いも虚しく、すぐに俺の背後を一定の距離を保ち、ついて来る者がいた。
 家についても特にアクションはなかったが、内心ため息をついていた。




side 忍

 部屋で恭也とのんびりとお茶を楽しんでいる時

「妙な子供がいるのですが」

 ノエルが困惑したような表情を浮かべ、部屋に入ってくる。
 ノエルの言葉に恭也と頷きあい、共に監視室に向かう。
 そして、その少年を確認する。
 ジーンズに黒の長袖のシャツを着て、帽子をかぶっている少年。
 年の頃は背丈から見て、すずかと同じぐらいかしら。
 パッと見は門から月村の屋敷を見ているようにしか見えない。
 だけど

「ただの子供っていうわけじゃなさそうね」

 立ち方が違う。
 明らかに素人ではない。

「それに全ての監視カメラに気づいてるな。さっき視線を動かして確認してた」

 恭也の言葉に驚くばかりだ。
 あからさまに設置している監視カメラは五台。
 それ以外はすべてカモフラージュしており、並の実力では見つけ出せるものではない。
 それをあっさり見破り、この屋敷のことを見ているという事は

「……敵なのかしら?」
「さすがにそれはわからないが、少しつけてみる。俺も気になるしな」

 踵を返した少年を追って恭也が外に駆ける。

 そして、しばらくして恭也が戻ってきて少年が住む場所は判明した。
 判明したのだけど

「……元空き家……ね」
「だな」

 恭也がたどり着いた家というか洋館を調べたら完全に空き家。
 いえ、正確には二週間程前までは空き家だった物件。
 だけど二週間程前にいきなり相続人が現れ、書類はその人に渡っている。
 だがその書類の受け渡しの経緯が明らかに不自然だ。
 今まで管理していた不動産会社には書類の受け渡しや管理費支払いの記録は残っている。
 だけど実際に受け渡しを行った人物の人相などは誰ひとり覚えていない。
 そして、その家の所有者が『藤村雷画』
 一応、確認したがそのような人物は過去百年には存在しなかった。
 だけどそれで書類は通っているし、少年が住んでるのも事実。
 しかし少年の情報は一切ない。
 いや、正しくは出てこない。

「……なんなのよ、これは」

 私の言葉に恭也もノエルもなんと反応すればいいか迷ってようだ。
 どちらにしても一度会う必要はあるでしょうね。
 そんな事を思いつつ私はため息をついた。




side 士郎

 霊地が見つかったので、それ以降はこの街の中で魔術の痕跡を探している。
 もっとも今まで特に痕跡が見つかったことはない。
 裏の世界のコネもないものだから海鳴市以外の情報も限られてくる。
 これでは調べ物にも時間がかかりそうだ。
 そんなことを考えつつ、夕飯の買い物をして家に戻ってくる。
 と家の扉の前に白い封筒が置かれていた。

「そういえば郵便受けを用意してなかったな」

 白い封筒よりそんな事を気にしつつ、封筒を解析する。
 特に怪しげなものは混入してはいない。
 魔術的な痕跡もない。
 結界が働かなかったという事はこれを持ってきた人物は敵意を抱いてはいない。
 家の中に入り、封を開ける。
 封筒の中には便箋が一枚入っており、書かれていたのは

「今週の日曜、月村邸にお越しくださいますようお願い申し上げます……か」

 要するに月村邸への招待状だった。
 最近、俺の周りをいろいろ嗅ぎまわっているのがいたが月村家の者か。
 だがいくら調べても俺の正体が割れない。
 さすがにしびれを切らしてアクションを起こすことにした、といったところだろう。
 こちらとしてもどうやって接触するべきか考えていたところだ。
 この招待、受けさせてもらうとしよう。
 だが準備するものがある。
 もっとも時間はまだあるからそれまでに準備できるだろう。

 というわけで赤竜布を投影し、裁縫を行っていく。
 今まで使ってきた赤竜布は将来のことを考えて残しておく。
 そして、今の肉体に合うサイズの外套を作り、余った布で暇つぶしがてら髪と口元を隠すフードを作っていく。
 ついでなので今回は着ては行かないが今の体にあう黒のズボンとシャツ、手袋、ブーツを購入する。
 本来、戦闘時に手袋をつけたりはしないのだが正体を隠すのに便利だから用意だけはしておく。
 それらを全て戦闘用に改造し、着々と準備していった。 
 

 
後書き
久しぶりの投稿の第四話です。

これからまた毎週チェックが済んだものから公開していきます。

ではでは 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧