Fate/WizarDragonknight
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超遺伝子獣
「変身!」
「変身!」
ウィザードと龍騎。
それぞれの変身が完了した。
龍騎が「っしゃあ!」と気合を入れると同時に、ウィザード、龍騎、可奈美、友奈、響はそれぞれ駆け出した。
さらに、狂三は影へ潜り、リゲルとえりかはそれぞれ飛翔した。
一方、イリスの体にも変化が生じる。その胸に埋め込まれた結晶のような器官が青く発光。すると、その体を突き破り、同じく青い生物がその肌を突き破って出てきた。
ギャオ、ギャオ、と産声を上げる生物たち。
矢じりのような頭部と、左右に大きく広がる翼をもつそれ。その姿を見た途端、ウィザードと響、そして奥の安全地帯で見守るアンチの表情に戦慄が走る。
「見滝原南にいた……」
「怪鳥……ッ!」
怪鳥たちは、目下の獲物たちを見定めると、それぞれ猛スピードで急降下。それぞれ狂った目つきで参加者達へ襲い掛かる。
「来るよ!」
可奈美の叫び声に、ウィザードは我に返る。
襲い来る怪鳥たち。ウィザードはソードガンで斬りつけるものの、頑丈な肉体を持つ怪鳥たちは以前以上に頑丈になっていた。
「コイツら、イリスと同じ体の作りをしているわ!」
「子供ってこと!?」
怪鳥を地面に叩き落とし、トドメにかかと落としを見舞う友奈が聞き返す。彼女の右足は怪鳥の矢じり型の頭部を粉砕し、青の体は動かなくなった。
リゲルは右手に持った剣で怪鳥の腹部を刺す。悲鳴を上げて動けなくなっていく怪鳥の体を分析し、叫び声を上げた。
「違うわ! これは……むしろ、コイツが通常……っ!」
「リゲル、後ろ!」
ウィザードがソードガンを発砲する。
リゲルの背後から、彼女を捕食しようとするもう一体の怪鳥。銀の弾丸を弾きながらリゲルを食らおうとするが___
「刻々帝 二の弾」
発射された弾丸が、怪鳥の体を穿つ。すると、怪鳥の動きが一気に鈍り、その速度が低下した。
影から現れた狂三が、リゲルと背中を合わせる。種類が異なる拳銃の威力では、怪鳥を倒せない。
だが、ならばと狂三は、その拳銃を無数に打ち鳴らす。怪鳥の体を破壊するほどの数を増やしたそれは、やがて怪鳥を蜂の巣にした。
「続きをどうぞ。ガンナー」
「……フン」
リゲルは怪鳥の腹を貫通した剣を放り捨てる。
「むしろ、イリスが変異体よ。この遺伝子配列……コイツラもまともとは思えないわね。染色体が一対しかないのだから」
「何言ってるのかわけわかんねえよ!」
龍騎が二体の怪鳥を相手に、ドラグセイバーで奮闘していた。だが、イリスの近くで戦っていることもあって、イリスの超音波メスも遅いかかってくる。
「危ない!」
えりかが叫ぶ。
彼女の盾は、イリスの超音波メスをはね返し、怪鳥一体の体を真っ二つにした。
「シールダー……!」
「はい。それで、この鳥たちは一体何なんですか?」
えりかの問いに、リゲルは一瞬だけ躊躇を見せる。だがその間にも、怪鳥はどんどん群がって来る。
「リゲル! 今は、敵だの味方だの考えている場合じゃないでしょ!」
『コネクト プリーズ』
ウィザードは空間湾曲の魔法を発動し、マシンウィンガーを呼び出す。即座に乗車したウィザードは、そのままリゲルへ牙を向ける怪鳥を轢き飛ばし、その脳天をウィザーソードガンで叩き割る。
「何か分かったなら、話してよ! 俺たちも、リゲルのことは命がけで助けるから!」
「この状況で、よくもそんなことを……」
「リゲルさん、つまり、この生物は進化の歴史を辿っていないということですか?」
えりかが怪鳥を頬り投げ、再び盾で両断した。さらに、盾を円状にすることで、その中心より光線を放ち、別の怪鳥の胴体に穴を開ける。
リゲルは「ええ、そうよ……」と頷き。
「言ってしまえば、最強の遺伝子を持つ生物ね。聖杯戦争も、何でこんな奴を選んだのよ……!」
リゲルは吐き捨てながら、背後の怪鳥へ砲弾を発射する。光の柱となったそれは、怪鳥を押しのけながら上昇。天井付近で爆発した。
「もし奴を名付けるなら、超遺伝子獣とでも呼ぼうかしら?」
「ギャオギャオ言ってるからギャオスでいいんじゃないかな?」
「こんな時に名前なんてどうだっていいよ!」
参加者の誰かが名付けた、ギャオスという名前。
ウィザードは突っ込みながら、マシンウィンガーの位置を調整、イリスへ向かった。
「ハルトさん!」
さらに、無数の怪鳥たちを切り刻んだ可奈美もまた、マシンウィンガーに並走する。
「行こう!」
「ああ!」
『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』
ウィザーソードガンの手の形をしたパーツが光る。ウィザードはそのまま、マシンウィンガーのアクセルを強めた。
マシンウィンガーは、イリスの体を伝ってどんどん上昇していく。肩口から飛び出したウィザードは、そのままマシンウィンガーから飛び降り、さらにウィザーソードガンにルビーの指輪を押し当てる。
ウィザードの銀の刃に走る、赤い炎の魔力。
可奈美もまた、ウィザードに合わせて体を真紅に染め上げる。
『フレイム スラッシュストライク』
「太阿之剣!」
二つの赤い刃が、そのままイリスの肩を切り裂いた。
だが、それぞれは小さな爆発をイリスに刻んだのみで、大きなダメージは見積もれない。それどころか、攻撃の隙に、無数のギャオスたちが殺到してきた。
「くっ……!」
「我流・星流撃槍!」
だが、ギャオスたちを、黄色の槍が薙ぎ払う。
一気に怪物たちを薙ぎ払った響は、そのまま着地し、今なおイリスから発生し続けるギャオスの群れを睨み上げる。
「ハルトさん……あいつら、前に見滝原南で戦った時よりも強くなってません?」
「ああ、それは俺もうすうす感じてた。強いというより、打たれ強くなってる」
ウィザード、可奈美、響はそれぞれ背中を合わせながら、天井を所せましと埋め尽くすギャオスの群れを見上げる。
「ハルトさん、響ちゃん。前に戦ったなら、倒し方とか分からない?」
肩で呼吸しながら、可奈美が尋ねる。
ウィザードと響は眉をひそめながら目を合わせた。
「前に戦った奴は、素早かったけど正直脆かった。スラッシュストライクでアッサリ斬れたから、コイツらと一緒だと考えるのは危険じゃないかな」
やがてギャオスたちは、それぞれ凶悪な目つきをしながらウィザードたちを襲う。
それぞれと格闘しているときでも、イリスの援護射撃が止まることはない。たとえ配下たちを巻き込んだとしても、黄色の光線は次々とウィザードたちを襲い、ボロボロのコンクリートをさらに傷物にしていく。
さらに、ギャオスのうち何体かは、地上へ降り立ち、その翼を前足のように駆使しながら近づいてくる。
「刻々帝 七の弾」
唱えられる、オレンジの銃。
弾丸が命中したギャオスたちは、全て動きが止まる。
「あらあら」
上のフロアでよりかかったままの狂三が、笑みを浮かべたままウィザードたちを見下ろしている。露出した肩に何度も長い銃を当てながら、その金色の眼で参加者たちを見下ろしている。
「ムーンキャンサーに届く前に、雑兵たちにやられて壊滅してしまいそうですわね。ウィザード」
「だったら少しは手伝ってよ!」
ウィザードはそう叫びながら、再びスラッシュストライクを発動させる。
同時に隣にやってきた龍騎も腰を落とし、ドラグセイバーから赤い炎が沸き上がって来た。
二つの赤い斬撃により、ギャオスたちが次々に爆発していく。
だが、まだその数に底は見えない。
ウィザードがげんなりとしている一方、龍騎はドラグセイバーを左手に持ち替えて、新たなカードをデッキから引き抜く。
『ストライクベント』
掲げた右腕に装備されたドラグクロー。同時に、天井に空いた穴より赤い影、ドラグレッダーが飛来する。
ドラグレッダーは天井の穴の縁を旋回。穴から外に出ようとするギャオスたちをその体で薙ぎ払いながら、龍騎の動きを窺っている。
「ハルト! 手伝ってくれ!」
「分かった!」
『ビッグ プリーズ』
昇竜突破が発動する前に、龍騎、そしてドラグレッダーの前に魔法陣が現れた。
そして、龍騎がドラグクローを突き上げるのと同時に、ドラグレッダー口から火炎を吐き出した。
ウィザードの助力により、巨大になったドラグレッダーとドラグクローの炎。ギャオスの大群を挟み込む炎の牙は、一口で全てのギャオスを飲み込み、轟音とともに一気に焼き尽くした。
「ふう……」
肩を撫で下ろした龍騎は、イリスへ振り替える。
「なあ、ハルト……ムーンキャンサーの目的って……」
「あの怪鳥……ギャオスを、大量に世に放つことだろうね。その能力はもともと持ってるみたいだし、言ってしまえば、奴の願いは召喚された時点で叶ってるってことになるね」
「間違いないわね」
続けるのは、着地したリゲル。
彼女は、イリスの分析を続けながら言った。
「さっきも言ったけど、イリスとマスターの同化は、こうしてギャオスと戦っている間にもどんどん進んでる。助けると一口に言っても、相当大変よ」
「分かってるよ。もともと、楽に助けられるとは思ってないから」
次々と落ちてくるギャオスの死骸を茫然と眺めながら、ウィザードは再びウィザーソードガンを構えなおした。
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