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<ポケットモンスター トライアル・パレード>

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1章「新しい旅先」
  6話「ハルタス地方・ヨヨミキシティ トレーナー・ベストカップへの挑戦」

 
前書き
ポケモンの二次小説です。主人公はサトシです。ご興味あれば、1話からお読み下さい。

(注意)
掲載された作品で、文章の変更や文章ミス・誤字脱字などに気付きましたら、過去のも含めて後日改めて修正する可能性もあります。 

 
サトシが、ミョウコシティから旅立って7日目。
サトシとピカチュウは、ヒョウリに加えて、新しく旅の仲間となったマナオと共に、ヨヨミキシティに向かって歩いていた。
「お、見えてきたぞ」
「あれが、ヨヨミキシティか」
「あぁ、ハルタス地方の中心にある大きい街だ」
森を抜けたサトシ達は、行く先に目的地の街が見えてきた。
「よし、早く行こうぜ」
サトシが、そう言って急に街へ向かって、走り出した。
「あ、師匠待って下さい」
「たく、なんで走るんだよ。ここで」
マナオとヒョウリも、彼に続いて街へ向かって走って行った。5分程、駆けて行くと、街の中に入れた。
「やっと、着いた!」
「ピカァ!」
サトシと肩に乗るピカチュウは、共に大声を上げて、両腕を上げた。
「喜ぶのはいいが、急に走るなよ」
「あ、ごめん」
後ろから駆けてきたヒョウリに、一言謝りを入れる。すると、その隣に居たマナオが街の風景を見渡して、喜んだ。
「久しぶりに来ました。ミョウコシティ」
「マナオは、ここに来たことあるのか」
「はい。3ヶ月前、最初に旅立った後、この街に来ましたから」
「そうなのか」
「もしかして、ここで登録をしたのか?」
ヒョウリが、マナオにそう聞く。
「え、えぇ。ここで、しましたよ」
「登録?あぁ、ポケモントレーナーの登録のことか」
「はい、私の村で一番近くのポケモンセンターがあるのは、ここだったので」
本来、ポケモントレーナーになるには、条件がある。年齢を10歳に満たし、ライセンスを持つ者。ポケモントレーナーのライセンスとして、ポケモン取り扱い免許証が発行される。これにより、正式なポケモンの捕獲、モンスターボールの購入と正式な所持、公式のポケモンバトルやジム戦、大会にも挑戦・参加が可能となる。一方、トレーナー資格が無い者、10歳未満の者について。基本、資格保有者や関連指導者の元で、許可・指導を受けている者、経営や設営されたポケモン使用の商業と行事での場合等、ある一定の条件下でのみ許されている。
そして、ポケモントレーナーのライセンスを取るには、決まった場所と手順がある。まずは、10歳を迎えた後に、審査と講習・試験がある。一般的に、審査はトレーナーへの申込みを行い、ポケモン協会にあるポケモントレーナー運営委員会が申請者の経歴を査定し、特に問題が無ければ、すぐに通過となる。そして、講習や試験は決まった場所や試験監督資格を持つ者の元で行われる。サトシの場合は、10歳になった年で、監督資格を持つオーキド博士の居る研究所で行った。一般的に、ポケモン関連の研究所やポケモンセンター、ポケモンスクール等で、講習と試験が行われる事が、殆どで研究施設や資格保有者が居ない場合は、近くのポケモンセンターで受ける事が可能。10歳になったらポケモントレーナーになりたいと言う者が、年々増える為に、ポケモンセンターやポケモンスクールが増えて行っている。
そもそも10歳から小卒での成人法がある世の中、ポケモントレーナー以外でも中学への進学やポケモン関連の業務、小卒でも可能な就職等の進路もある。その中で、全体の半数近くを締めているのが、ポケモントレーナーだ。ポケモントレーナーは、一般的にはポケモンの捕獲とバトルを基本とするが、他にもポケモンの育成・教育を目的したポケモンブリーダーやポケモンコンテストを専門とするポケモンコーディネーター、トレーナーとポケモンの相性を診断し、トレーナーへのアドバイスを行うポケモンソムリエ等といった様々なトレーナーがある。
「それじゃあ。まずは、ポケモンセンターに行って、ポケモンを診て貰うか」
「あぁ。その後で、買い物と昼飯にしよう」
「はい。ポケモンセンターは確か、こっちです」
マナオは、過去に行った事のあるポケモンセンターへ、サトシ達を案内した。


「すいません」
ポケモンセンターに着いたサトシ達は、中に入ってから正面にある受付へ歩いた。受付では、ポケモンセンターの責任者であり、治療を行うジョーイが居た。
「はい。ポケモンセンターに、ようこそ。治療ですか?診察ですか?」
「はい。診察です」
「それでは、こちらのプレートに、各自のモンスターボールを置いて下さい」
「はい。俺のピカチュウは、ボールに入らないので、このままで」
「はい、それでは、こちらの台に乗って下さい」
「ピカ」
ピカチュウは、自分で台に乗ると、サトシ達も自分達のボールを預けていった。
「はい。それでは、暫くお待ち下さい。ラッキー、ハピナス」
ジョーイは、診察室の方に向けてポケモン達の名前を呼ぶ。診察室から、ナース姿のラッキーとハピナスが出てきた。
「ラッキー」
「ハピ」
「診察するから、モンスターボールとピカチュウを運んで頂戴」
「ラッキー」
「ハピ」
返事をしたラッキーとハピナスは、診察室へとモンスターボールとピカチュウを運んでいく。
「ピカピカ」
「じゃあ、ピカチュウ後で迎えに来るからな」
「ピッカ」
運ばれていくピカチュウに、サトシは手を降って言った。
「さて、この間に買い物と昼飯を済ませよう」
「はい」
「あぁ」
そうして、サトシ達はポケモンセンターを出ようと、出入り口へと向かって行った。すると、サトシが、壁にあった掲示板に目が移って、何かを見て立ち止まった。
「あれは」
「ん?どうした?」
「師匠?」
サトシが、急に立ち止まった事に、ヒョウリはすぐに反応した。すると、サトシが掲示板の方を見ているのに気付いた。
「なんだ、これ」
サトシは、掲示板へ近づいて、目に止まったポスターを見て、内容を読んだ。
「ポケモントレーナー・ベストカップ?」
そう呟くと隣になったヒョウリもポスターを見た。
「まだ、この大会やってるんだな」
「ヒョウリ、知ってるのか」
「あぁ、ポケモントレーナー・ベストカップ。ポケモン協会公認で、ポケモントレーナーの為に出来たイベントみたいな奴でなぁ。ポケモンリーグやポケモンコンテストとは別で、ハルタス、アハラ、シントー、フィオレ地方で行われているポケモントレーナーによるイベントの1つさ」
ヒョウリがそう説明していると、反対側からマナオも話に入って来た。
「あ、ベストカップですね。話には、聞いたことあります。確か、いくつか用意された試練を乗り越えて、優秀なトレーナーとして認められる試練の大会とかだったような」
「試練の大会?」
「そうです。ポケモントレーナーと手持ちのポケモン1体のみで参加して、試練に挑戦するとかだったような」
「その試練ってどんなものなんだ?」
「すいません。私、参加したことも無いので、それ以上は」
「俺も参加した事も無いが、聞いて調べた程度なら分かる。各指定された会場で挑戦が受けることが出来る。第一の試練から最終の試練までが用意された施設を順番に巡っていき、達成した者が次の試練に挑む権利があるとか。毎年、2シーズン毎に行われていて、開催場所や試練の内容は、シーズン毎にランダムだったはずだ」
「へぇ」
「それと、各試練の内容は、当日の開始時に挑戦者達に明かされて、毎回内容も変わるから対策も難しい。何より難易度も試練の順を追う毎に高くなっていくとか。確か、最初の試練に千人が挑戦して、最後の試練に達成出来る者は両手程度しかいないとか」
そう言いながら、ヒョウリは両方の手を上げると、指達を軽く動かして見せる。
「聞いた話だと、最初の試練となる第一の試練だけは、複数の会場でやると聞いたが、場所を書いていないか?」
サトシは、ヒョウリから正面のポスターへ顔を戻すと、記載されていた内容を改めて読んだ。
「えーと、えーと、あった。・・・第一の試練会場は、以下の通りです。アハラ地方・モモメンシティ、フィオレ地方・クバノキシティ、それとハルタス地方・ヨヨミキシティ・・・って、ここだよな」
「あぁ、そう書いているな。そうか、今シーズンの第一の試練は、ここでもやるのか」
「開始日は、明日の9時って書いていますね」
「「「・・・」」」
サトシ達は、ポスターを見ながら、そう話していき、暫く沈黙となった。そして、サトシが第一声を上げる。
「よし。俺、そのトレーナー・ベストカップに出場する!」
「師匠、参加するんですか?」
「おいおい、何となくそんな気はしたが、サトシ。お前、今はリーグ戦、ソウテン大会を目指しているんだろ?」
サトシの突然の発言に、マナオとヒョウリは反応をする。
「それは、それ。これは、これだ。トレーナーとポケモンが頑張って試練に挑む。そんな、楽しそうなイベントあるなら、参加するしかないだろ」
「はぁー、そうか」
熱くなったサトシは、ヒョウリにそう答えると、次にマナオに向かって言った。
「なぁ、マナオ。お前も参加しないか?」
「え?えぇ!わ、私もですか?」
「あぁ、お前の修行にもなるし、きっと参加することで、よりマナオもカラカラも強くなれるはずだ。そして、何かを学ぶことも出来る」
「で、ですけど、私じゃあ。それに、ベテランのトレーナーでも達成が難しいのに、私なんて」
「やる前から、何諦めてるんだ。失敗なんか恐れちゃ駄目だ。それに、例え失敗しても、それはただ負けたんじゃない。より、自分が強くなれるチャンスなんだ」
「強くなる・・・チャンス」
「あぁ、どんな事にも無駄なんてない。今まで、俺だっていろんなバトルや大会にも出場したけど、何度も負けたり、失敗もした。そうして、ドンドン強くなって来たんだ」
「・・・」
サトシが、そうマナオに説得をするのだが、俯いてしまった。
「あ、どうしても、嫌ならいいんだ。無理してでも、参加して欲しい訳」
「分かりました」
「!」
「やってみます。私も、試練に挑戦します」
「あぁ。そのいきだぜ、マナオ」
「はい」
「それじゃあ。早速、特訓に行くぞ!」
「はい、師匠!」
「おい、お前ら」
「なんだ、ヒョウリ。お前も参加」
「お前ら、自分のポケモンを預けたのを、忘れたのか?」
「あっ」
「そうでしたね。てへ」
「たくよぉ」
「「あ、は、は、は」」
サトシとマナオを見て、呆れるヒョウリ。そして、苦笑いで返す二人。
「さて、予定通り買い物行くぞ。キズぐすりや食料とか、いろいろ買う物多いからな。特訓は、戻ってからだ」
「そうだったな」
「では、行きましょう。いやぁ、街での買い物久しぶりです。あ、けど。私、あんまりお小遣い無いんですよね」
「じゃあ、師匠に奢って貰え」
「えぇ、俺が?てか、まだマナオを正式に弟子入りさせてないんだぞ」
「けど、お前が誘ったんだから。似たようなもんだろ」
「師匠、お願いします。いつか、お返ししますから」
マナオは、両手を合わせてお願いをするポーズを取り、それを見て、サトシは折れた。
「・・・ハァー」
ポケモンセンターを出たサトシ達は、そうやって街へ買い物に向かった。


2時間後、買い物と昼食を終えたサトシ達は、ポケモンセンターに戻って来た。
「はい、貴方達のポケモンは、元気になりましたよ」
受付で、ジョーイから預けた自分たちのポケモンの入ったモンスターボールやサトシのピカチュウを返された。
「ありがとうございます」
「ピカピ」
「ピカチュウ」
「チャ~」
サトシに飛びついて来たピカチュウを、サトシは抱きしめて受け止める。そして、サトシは、ピカチュウの顔を見て話をする。
「ピカチュウ。元気になって早速だが、特訓だ。明日、俺とマナオは、トレーナー・ベストカップに出ることになった」
「ピカ?」
サトシ達は、ポケモン達を受け取ると、ポケモンセンターを出た。そして、近くにあるトレーナーご利用のポケモンバトル練習場に来た。ここで、明日のベストカップに備えて、サトシとマナオが特訓を始めることにした。
「それじゃあ。俺は、見学するよ」
参加しないヒョウリは、近くのベンチで座りながらそう言って、寛いだ。その前では、バトルフィールドの中で特訓をはじめるサトシとピカチュウ、マナオとカラカラが話していた。
「よぉし。早速、特訓をやるぞ!ピカチュウ、マナオ、カラカラ」
「ピカァ!」
「はい!師匠」
「カラァ!」
始める前に、気合を入れる為か、皆で大声を上げた。
「はぁー、全く。元気だな、あいつら」
彼らを見たヒョウリは、彼らを見届けていった。
「まずは、マナオ。お前のバトルとしての特訓だ」
「はい」
「ところで、マナオのカラカラだけど。何のわざが使えるんだ?それと、とくせいは?」
「はい。この子は、ホネブーメランに、ホネこんぼう。あとは、ずつきに、ええと。あ、にらみつけるときあいだめです。とくせいは、いしあたまです」
「攻撃わざ3つと、変化わざが2つ。それと、いしあたまか。うーん」
「あの何か?」
「うん?いや、カラカラのわざで、どう戦ったらいいか、どう攻め方をすればいいかなぁって。あとは、合わせ技とか」
「合わせ技?」
「あぁ、わざとわざを組み合わせて、より良い動きがしやすくなったり、わざが決まりやすくするコンボみたいなものさ」
「は、はぁ、コンボ・・・ですか」
「そうだ。俺とピカチュウで手本を見せるよ」
そう言って、ピカチュウに指示を出す。
「行くぞ、ピカチュウ。まずは、でんこうせっか」
「ピカァ」
サトシが指し示した方向へピカチュウが(でんこうせっか)で一気に加速する。向かう先には何も無いが、サトシは続いてのわざを指示した。
「続いて、アイアンテール」
「ピィーカァー!」
ピカチュウは、指示通り何もない所で、尻尾を光らせ、(アイアンテール)を繰り出す。すると、(アイアンテール)によって、突風を巻き起こった。
「す、凄い。これって、此間私に出したやつですね」
「あぁ、ピカチュウの得意な合せ技だ」
「ピカ」
わざを出したピカチュウは、サトシの元に戻った。
「ピカチュウのでんこうせっかで、一気に敵に詰めて、その勢いに乗ってアイアンテールを繰り出す。この合わせ技は、でんこうせっかのスピードで、間合いを詰めながら相手のわざを躱せるし、相手のわざで足場が不利や障害物が出来ても上に躱して飛ぶことも出来る。そして、でんこうせっかの勢いを使って、アイアンテールの威力も上げられる。それに、でんこうせっかがそのまま相手に当たれば、怯んだ相手に続けてアイアンテールを出せる。例え、躱されても、タイミング次第で相手の背後からアイアンテールを当てれるってことさ」
「へぇー、師匠もピカチュウも凄いですね。私達じゃあ、今すぐには難しいですね」
「まぁ、この戦法は、俺とピカチュウが長いバトルの中で編み出したやつだからな」
「ピィカ~」
「今すぐは、難しいかもしれないけど。いつかは、作れるさ。だから、マナオのカラカラも焦らず、日々特訓しながら学べば良いよ」
「はい、分かりました。頑張ろう、カラカラ」
「カラァ!」
「じゃあ、まずはバトルの練習からはじめるか」
「はい」
あれから、サトシ達は、バトル形式での特訓を始めた。
「ピカチュウ、エレキネット」
ピカチュウは、尻尾から放つエレキネットを、カラカラへ目掛けて放つ。
「カラカラ、躱して」
「カラ」
カラカラは、エレキネットを躱そうとするのだが、ギリギリでカラカラの体に引っ掛かってしまう。
「カッラ!」
「あっ」
「マナオ。まずは、落ち着いて相手とわざを見るんだ。ここぞという、タイミングが必ずある」
「は、はい」
「相手のわざを1つ1つよく見て、どんなわざを持っていて、どのように戦ってくるかをしっかり見て覚えるんだ」
「はい」
「フィールドの周りをよく見るんだ。時に、地形を利用して勝利を導く事もある」
「はい」
サトシは、次々とバトルをしながら、マナオにポケモンバトルのレクチャーをしていく。ポケモンの息の合わせる、次々と指示を出しと判断、マナオは1つ1つ覚えていく。ポケモンのカラカラは、マナオに従い、素早く移動、わざを繰り出していった。そして、特訓をはじめてから時間は1時間、2時間と経過して行った。
「ハァー、ハァー」「カラァー、カラァー」
マナオとカラカラは、バテててしまい息が上がって、激しく呼吸をする。二人とも疲れてしまったのか。地べたに座り込んでいた。
「二人は、ちょっと休憩しようか」
「は、はぁい」「カ、ラ」
そう言って、マナオはベンチの所へ向かって行き、カラカラは近くにあったポケモン用の水飲み場に行った。
(まぁ、最近トレーナーになったばかりなら、こんなものかな)
サトシとピカチュウは、日頃やっている事もあるのか、彼女達に比べて、それ程息も上がっていなかった。
「ピカチュウ、お前も飲んでこいよ」
「ピカ」
ピカチュウもカラカラに続いて、水分補給を取りに行った。そして、マナオが休憩でベンチに向かっていると、座っていたヒョウリが立ち上がって、彼女に何かを渡した。次に、彼はサトシに向かって話しかける。
「おい、サトシ」
「ん?」
サトシは、彼の方を振り向く。すると、ヒョウリが何かを軽く上に投げて、それはサトシに向かって落下していく。
「おっ」
サトシは、落ちて来るそれを両手で上手く受け取った。見ると、スポーツドリンクのペットボトルだった。サトシは、それを見てヒョウリに礼を言った。
「サンキュー」
受け取ったサトシは、礼を言うと、早速飲み始めた。それから、水分補給を取り、5分程の休息を取ったサトシは、ピカチュウを呼びかけた。
「ピカチュウ、まだ大丈夫か?」
「ピッカ!」
「よぉし。マナオ、続きを」
サトシは、マナオとカラカラの方を見て、特訓の続きをしようと言うのだが、肝心の二人はというと。
「・・・疲れた~」
「カラァ~」
ベンチの上で、疲労感を漂わせて、伸びていた。
「ありゃ、駄目だな」
「ピカ~」
二人を見て、サトシもピカチュウも特訓の続きは難しいと悟った。
「よし、それじゃあ」
すると、サトシは、その隣のベンチに座るヒョウリに声を掛ける。
「おい、ヒョウリ。そこで、座ってないで。お前も特訓の手伝いをしてくれよ」
「え?俺もか」
突然、サトシに誘われたヒョウリは、少しだけ面倒くさい顔をして、返事をする。
「参加しないかもしれないけど、いいだろ」
「たく、仕方ないな。ちょっとだけ、だからな」
そう言って、ベンチから立ち上がるヒョウリは、腰のモンスターボールを1つ手に取り、上に放り投げ得る。そして、中から出てきたの、こないだのロケット団戦でサトシとのタッグバトルで出したルカリオだった。
「ルカリオ」
「ファル」
「サトシ達の特訓に付き合うぞ」
そうして、サトシとヒョウリの特訓、バトルがはじまった。
「よし、ピカチュウ。10マンボルト」
「ルカリオ、はどうだん」
「ピカチュウ、でんこうせっか」
「ルカリオ、カウンター」
ピカチュウとルカリオのバトルは徐々に激しさを増して行った。
「す、凄い」
「カラァ」
そんな彼らのバトルを、目の当たりにするマナオとカラカラは、瞬きも忘れる程、真剣に見ていた。


そんな中、サトシ達が特訓している所を、上空から見ている者達が居た。空を飛ぶニャース柄の気球。そこから吊り下げられている緑色のバスケットの中に、搭乗している人間2人とポケモン2体が乗っていた。彼らは、デジタル型の双眼鏡で特訓をしているサトシ達を見つつ、パラボラアンテナの形状をした指向性の集音マイクで、拾った彼らの会話を聞いていた。
「ジャリボーイ。こんな所に、居たのね」
「一緒にいる女は、此間のカラカラのトレーナーだな」
「さっきから、ジャリボーイのことを師匠と言っているにゃ」
「もしかして、あいつ弟子でも取ったのか?」
「ソーナンス」
正体は、ロケット団のムサシとコジロウ、ニャースに、ソーナンスだった。此間のノウトミタウンで、サトシのピカチュウとヒョウリのルカリオによって、吹き飛ばさた彼らは、ジャリボーイことサトシを見つけたのだ。
「さぁ、どうでもいいわ。あのジャリガールとカラカラ、結構弱いみたいだから、驚異じゃないし、無理してゲットしなくてもいいわね」
「あぁ、ただ。ベンチに座っているあいつ。あの暴力ジャリボーイが居るな」
「どうやら、今回のジャリボーイの仲間は、あの暴力ジャリボーイに、貧弱ジャリガールみたいだにゃ」
「奴らが特訓で疲れている所を狙う。これは、ピカチュウゲットのチャンスよ」
「あぁ。確かに、そうだけど。問題は」
「あの暴力ジャリボーイだにゃ」
「此間使ってきたルカリオに、飛んできたハッサム、そしてピカチュウと互角に戦えていたラグラージ、あいつら結構強かったからな」
「それと、トレーナー本人もにゃ。気球にまで乗り込んできて、にゃー達をボコボコにした奴は、結構手強いにゃ」
「ちょっと、面倒そうだな。どうする・・・辞めとくか」
「何言ってんの!私達は、今まで、どんな仲間もポケモンも相手にして来たじゃない。ビビってどうすんのよ」
「ソーナンス」
「けど、あの暴力ボーイとポケモンは、厄介だぞ」
「そうだにゃあ。恐らく、失敗するにゃ」
「じゃあ、何か良い手を考えないさい」
「そんな急に言われても」
「ニャース、あんたの知恵で何とかしなさい」
「そう言われてもにゃ。どうにか奴が居ない状況になれば楽になるのだがにゃあ」
ロケット団は、そうやって計画を考えつつ、時を待った。


時刻は、流れていき夕日へと変わっていた。
「ピカァー、ピカァー、ピカァー」
「ファッー、ファッー、ファッー」
ピカチュウとルカリオは、互いに息が上がり、激しい呼吸を繰り返す。
「「ハァー、ハァー」」
トレーナーであるサトシとヒョウリも同様、ポケモンへの指示を次々と繰り出し、喉が渇き、集中力と体力が共に、削れていた。バトルはまだ決着も中断もしていないが、互いに戦いと指示を出し続けた結果、バトル中の一息として、暗黙の休憩タイムとなっていた。
「おい、そろそろ降参したらどうだ」
「ふん、まだ俺とピカチュウは、この程度じゃあくたばらないぜ。そうだろ」
「ピカァ!」
「くそ。トレーナーに似て、こいつもしつこいな。なら、さっさと倒すしかないか。ルカリオ、ケリをつけるぞ」
「ヴァル!」
「ふん。こっちだって、勝ちに行くぜ。ピカチュウ、次で終わらせるぞ」
「ピカ!」
先程から、サトシとヒョウリのバトルを横で見ていたマナオとカラカラは、汗を掻いていた。ただ、それは特訓で動いた出た汗では無かった。先程から強いトレーナー、強いポケモン同士によるバトルを見て、凄く興奮と驚きによるものだった。
「いつの間にか、特訓でも模擬戦でもなく、ガチガチの熱いバトルになっちゃたね」
「カラァ~」
「あの人も、やる気無かったのに、夢中になっちゃたし。けど、これは勉強になるから、しっかり見よう」
「カラァ!」
そう会話をしていると、サトシとヒョウリがまた動き出した。
「いくぞ、ピカチュウ」
「構えろ、ルカリオ」
互いに休憩を終え、バトルを再開しようとした瞬間だった。ピピピッピピピッと何かの電子音が鳴り響いた。
「!」
それに気付いたのは、ヒョウリだった。そして、自分の腕輪を見た。
「よし、ピカチュウ。アイアン」
「タイム!」
「えっ?」
突然、ヒョウリが両手でTの字を作りながら、止めてきた。ピカチュウへわざの指示を出す瞬間だった為、サトシは急に気が抜けてしまった。
「なんだよ、いきなり」
サトシは、ヒョウリに向かって文句を言っていると、それを無視して彼は、自分の腕輪からモニターを表示させて何かを見ていた。
「・・・」
すると、ヒョウリはモニターを消して、サトシに告げる。
「悪い。俺は、ちょっと用事があるから、ちょい抜けるわ」
「え?どこ行くんだよ、ヒョウリ。まだ決着もついてないし。それに、最後はマナオも混じって、特訓を」
「ちょっと、仕事の連絡だ。バトルはお預けだ。安心しろ、すぐ戻るし、特訓相手にルカリオは残すから。ルカリオ、サトシたちの練習相手に少し付き合ってくれ」
「ヴァル」
そして、ヒョウリは練習場を離れていき、彼の後ろ姿を見るサトシ。
「まぁ、仕方ないか。マナオ、カラカラ、もう大丈夫か」
「はい、もう大丈夫です」
「カラァ」
「よし、じゃあ。特訓再開だ。ピカチュウ、最後の特訓頑張るぞ」
「ピッカ」
「ルカリオも、続けて頼むぜ」
「ファル」
残ったサトシ達は、特訓を再開した。
「マナオ。それじゃあ、ピカチュウの攻撃を躱す特訓だ」
「はい」
「ピカチュウ、エレキネット」
「ピカァ」
ピカチュウの尻尾から放たれた球体が網状に変化して、カラカラを捕らえようとする。
「カラカラ、躱して」
「カッラ」
カラカラ、素早く移動して、(エレキネット)の範囲外へ逃げる。
「よし、いいぞ。続いて、でんこうせっかだ」
「ピカァ」
「カラカラ、ピカチュウをよく見て」
「カラ」
カラカラは、マナオの指示を受けて、ピカチュウを目で見張る。ギリギリまで、引き寄せてから躱そうとしているのだ。
「今よ」
カラカラは、躱そうと動き出した。ピカチュウの動きにタイミングに合わせて、動いたお陰で、最小限の動きできれいに躱せた。
「上手い上手い。さっきに比べて、ドンドン調子が良くなってるぞ」
「はい」
「よし、次は」
サトシが、続いてピカチュウに指示を出すその時だった。上空から何かが降ってきた。
「ピカ!」「カラ!」「ヴァル!」
サトシ達よりもピカチュウ達、ポケモンが本能的にそれに気付いた。落ちてきたのは、黒い球体状の何か。それは、サトシ達の中心に落ちていき、地面に接触と同時に破裂、中から大量の黒い煙が勢いよく吹き出した。
「うわぁ、なんだ」「きゃあ」
突然の事に、サトシとマナオは声を上げる。更に、その場に居たポケモンの上空には、小型の機械的な立方体のブロックが降ってきた。そして、ブロックから光の線が複数伸びていき、ピカチュウとカラカラ、ルカリオを取り囲んだ。
「ピカッ!」
「カラッ!」
「ヴァル!」
ピカチュウ達を包んだ光は、次第に鉄条の棒へと変わっていき、鉄の檻となり、ポケモン達を閉じ込めた。ポケモン達の慌てる声を聞いたサトシ達は、声を上げる。
「ピカチュウ?!くそ、見えない」
「カラカラ、どこなの?」
煙のせいで、視界が無くなり、ピカチュウ達の方向や周囲の状況が分からない二人。そして、ポケモン達を閉じ込めた檻は、捕らえた状態のまま上へと上がっていった。
「ピィカァ」
すぐさま、ピカチュウは(アイアンテール)で檻を壊そうとし、それに続いてルカリオやカラカラも行動に出る。だが、檻は壊れる事が無かった。
「ピカピ」
「ピカチュウ、どこだ」
ピカチュウは、慌ててサトシを呼ぶが、その声を聞いたサトシはピカチュウの場所が分からないでいた。すると、捕われたルカリオが、檻から腕を出し、両手を構えた。
「ピカッ?!」「カラァ?」
その行動を見たピカチュウとカラカラは、ルカリオが何をするのか理解出来なかったが、すぐに分かった。ルカリオは、檻の外へ突き出した両手で大きい(はどうだん)を作り、それを発射した。狙った先は、黒い煙で覆われている外側の誰も居ない練習場。そして、(はどうだん)は見事に着弾し、それによって発生した爆風で、煙はたちまち吹き飛ばされた。
「うあぁ、今度はなんだ」「くっ、風が」
サトシ達は、突然の爆風に驚くが、その風で視界が晴れていき、周囲を見渡す事が出来た。
「あれ、どこだ」
サトシとマナオは、周囲を見てから、ふっと空を見上げた。
「ピカピ」
「ピカチュウ」
「カラァ」
「カラカラ」
空へ上がっていく檻は、次第に宙に浮かび上がっている何かに引き寄せられて行った。檻を吊っているものは、ニュース柄の気球をしていて、それに繋がっているバスケットからだった。
「あれって、気球ですか?」
「あぁ。やはり、お前達か」
サトシは、気球を見て何かに気付いたようで、それに向かって大声で怒鳴った。
「お前達かと言われたら」
「挨拶を返すのが世の情け」
すると、気球から人の声が返ってきた。
「あれ。この台詞、どこかで」
マナオは、そのセリフを聞いて、何かを思い出す。
「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の悪を貫く」
「ラブリーチャーミーな敵(かたき)役」
「ムサシ!」
「コジロウ!」
「銀河を駆ける ロケット団の二人には」
「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」
「ニャーんてにゃ!」
「ソーーーナンス!」
「ロケット団!」
「あぁ。あの時の、訳分かんない人達」
ロケット団の挨拶が終わり、サトシとマナオが叫ぶ。
「誰が訳分かんない人だ」
マナオに言われた言葉に、怒るコジロウ。だが、続けてマナオは言う。
「だって、世界征服とか。大の大人が、そんな馬鹿なこと言っていたじゃない」
「ば、馬鹿なことだと」
「ちょっと、そこの小娘。あんた、ロケット団を馬鹿にしたわね」
隣のムサシもキレ気味に言い返すが、そんな事を無視して、サトシはロケット団に文句を言った。
「おい、ロケット団。ピカチュウ達を返せ!」
「そうよ、返しなさい!」
「ふん、毎回言われるけど、誰が返すもんですか」
「そうだ。お前のピカチュウと強いルカリオ、おまけでカラカラも貰っていくよ」
「くそっ」
サトシは、不意に腰のベルトに手を当てて、モンスターボールを触ったが、不意に手を止めた。
(あっ、そうだった。俺、他のポケモンを持ってない)
そんなサトシの行動を上から見ていたロケット団達から質問が来た。
「ところで、ジャリボーイ。あんた、どうして他のポケモン持ってないの?」
「いつもみたいに、こっちで新しい仲間でもゲットするのか?」
「お前らに、関係ないだろ」
「まぁ、別にいいけど。お陰で、こっちはこのまま退散するだけだし」
「こういう時は、ひこうポケモンを出されて、よく気球を落とされるからな」
「それで、いつも酷い目に会うのにゃ」
「ソーナンス」
「さて、邪魔ものが帰って来る前に、おさらばするわよ」
「了解にゃ」
気球は、次第に上がって行き、サトシ達と距離が離されて行く。
「あぁ、逃げていきます」
「ピカチュウ、10マンボルトだ」
「ピカ。ピカァチュ―!」
ピカチュウは、すぐさま(10マンボルト)を放つが、効果はなく。
「アイアンテール」
続けて、(アイアンテール)を打つが、やはり壊れなかった。
「無駄無駄無駄」
「この檻は、対ピカチュウ対策の他、アイアンテールを含めて、通常のわざ全てに耐えられる素材と設計になっていえるのにゃ」
「どうしましょう。師匠」
「くっ」
(どうすれば)
サトシは、考えた。いつもの彼なら、すぐさま考えるよりも前に行動をするのだが、流石に今回は手が無いと分かった。そんな彼に、ピカチュウが名前を呼ぶ。
「ピカピ」
「ピカチュウ・・・くっ」
サトシは、歯を食いしばり、ピカチュウに向かって、大声で叫んだ。
「諦めるな!こんなピンチ、何度も俺たちは、乗り越えてきただろ。諦めるな」
そう言って、サトシは急いで走り出した。
「し、師匠、どこへ」
「ヒョウリを探してくる。まだ、近くにいるはずだ。あいつのポケモンで」
サトシは、すぐさまヒョウリを探しに駆けていく。だが、サトシの行動に気付いたロケット団達。
「そうはさせないわよ。ジャリボーイ」
「そうだぜ」
ムサシとコジロウは、下に向かって何かを投げた。それは、<?>のマークが付いた紫色のモンスターボールだった。そう、以前ロケット団とポケモンバトルをした時に使ってきたシークレットボールというものだ。2つボールは、空中で開くと中からポケモンが飛び出した。
「グオォォォ」
「マッニュ」
飛び出したのは、此間のニドキングとマニューラだった。2体は、サトシの目の前に現れて、道を塞いだ。
「くっ」
「さぁ、お前たち。少し、ジャリボーイを可愛がって上げなさい」
「グオォォォ」
「マッニュ」
「くっ」
(どうすれば)
サトシは、ニ体のポケモンに対峙する。すると、後ろからマナオが叫んだ。
「師匠、逃げて」
「ピカァ!」
ピカチュウも、上からサトシ達の状況を見て、不安な顔で叫ぶ。だが、サトシの言葉を思い出したピカチュウは、側にいるルカリオとカラカラに話しかけた。
「ピカピカ、ピィカッチュ、ピカピカ、チュー」
「ヴァルヴァル、ガァルーーー、ファルファル」
ピカチュウとルカリオは、何かを話し合う。そして、最後にルカリオは首を縦に振った。
「ピカ、ピピカッチュー」
「・・・カラァ」
次に、カラカラにも話すピカチュウ。そして、カラカラも同様に首を縦に振った。お互いに目を合わせて、すぐに行動へ移した。ピカチュウとカラカラは、共に端へ移動すると。ルカリオは、何かを用意した。
「ピィーカァーーー」
「カラァーーーー」
ピカチュウとカラカラは、わざの力を溜めていると、ルカリオは彼らの方を見て、身構えた。
「ヴァル」
そして、ルカリオが合図を出した。すると、ピカチュウとカラカラは、一気にルカリオ目掛けて、(アイアンテール)と(ホネこんぼう)を連続し繰り出し始めた。その音と振動は、上にある気球のバスケット。それに乗るロケット団にも伝わった。
「ん?なんだ?」
「何よ、この振動は」
「どうやら、檻の方でピカチュウ達が暴れてるにゃ」
「大丈夫なんでしょうね」
「一応、ピカチュウをはじめ大抵のわざのダメージには耐えられる用になってるにゃ」
そう言い、特に気もしなかった。一方で、檻の方では、ピカチュウ達は、ルカリオへの攻撃を辞めた。既に、三匹の内ピカチュウとルカリオは体力の限界だった。
「ヴァル」
「ピカッ」
「カラッ」
すると、ピカチュウとカラカラは、ルカリオの左右に移動して、三匹で檻に向かって並び立つ。そして、それぞれはわざの構えに入った。
「・・・ピカ!」
ピカチュウの合図と共に、三匹は檻に向かって攻撃をした。
「カァーラァーーー!」
カラカラの渾身の(ホネこんぼう)で檻を殴り。
「ピィカァーーー!」
ピカチュウは、全力で(アイアンテール)で檻を殴る。
「・・・」
ルカリオは体に溜め込んだ何かを拳に集中させていた。そして、それを解き放つ時が来た。
「!」
ルカリオは、その拳を檻に目掛けて突き出し、一気に力を爆発させた。ドガァァァンと檻で大爆発がなった。
「「「!」」」
その爆発に、地上のサトシ達に上空のロケット団は、驚いた。
「何が」
「まさか」
ロケット団達は、顔色を青くすると、爆発が起きた檻から何かが落ちてきた。
「あっ」
サトシは、それを見て、受け止めようとした。落ちてきたのは、ピカチュウ達だったからだ。吊り下げられている檻は、爆発で壊れていた。
「なっ」
「壊れたにゃ」
「なぜだ」
理由は、ルカリオのわざだった。最初に、ピカチュウとカラカラがなぜかルカリオに目掛けて攻撃を繰り出して、途中で檻へと攻撃をした。そして、ルカリオは彼らの攻撃をただ受け止め、何かを溜めていた。そして、他の二匹に合わせて檻へわざを出した。そのわざは、彼が覚えているわざ(カウンター)だった。受けたダメージを倍にして返す反射わざのカウンターを、ルカリオは放たないように必死に我慢して、ピカチュウとカラカラの攻撃を受けていた。そして、ピカチュウとカラカラに合わせて、溜めていたダメージを倍増した反射(カウンター)を放ったことで、素材や設計を凌駕して檻を破壊する事に成功した。
「ピカチュウ!」
サトシは、落下してくるピカチュウを受け止めた。
「カラカラ」
続いて、マナオもカラカラを見事に受け止めて、尻餅を着いた。
最後に、ルカリオは何とか自力で着地に成功した。
「ピカピ」
「ピカチュウ」
「あぁ、くそ。やっぱり、こうなったじゃない」
「くそ、頑張って檻作ったのに」
「そうだにゃ。このまま黙って引き下がる訳には、いかないにゃ」
ポケモン達に逃げられたロケット団は、怒りが湧いた。そんなロケット団に、サトシは言う。
「くそ、お前ら。いい加減に、ピカチュウを諦めろ」
「諦めるものですか」
「そうだ。1年間の苦労を思い知れ」
「行きなさい、ニドキング!」
「お前も行け、マニューラ!」
「グオォォォ」
「マッニュ」
「くっ」
サトシの前に居るニドキングとマニューラは、徐々にサトシ達へ詰め寄っていく。
「ピカ」
それを見たピカチュウは、サトシから離れて、相手に戦おうとするのだが。
「ピッ、カ」
「あ、ピカチュウ」
ピカチュウは、一歩前に出ると同時に倒れてしまった。既に体力の限界だったのだ。
「ヴァ、ル」
その側に居たルカリオも膝を突き、今にも倒れそうだった。二匹とも、特訓でのバトルから続けて、体力を使い、挙げ句にロケット団からの逃亡にも体力を削り、ダメージも負った。現状で最も戦えるのは、マナオのカラカラのみとなった。
「どうやら、ピカチュウもルカリオも動けないみたいだぞ」
「アンラッキーかと思ったけど、ラッキーはまだ私達に付いているようね。さぁ、ジャリボーイ達からポケモンを奪うのよ」
「くそ、このままじゃあ」
サトシは、ピカチュウを抱き抱えながら、後退る。
「どうしよう、どうしよう」
「カラカ」
「!」
「カラァ」
「・・・うん」
「行くよ!」
「カラァ!」
マナオとカラカラは、サトシ達の前に立ち、ニドキングとマニューラに向かい合った。
「わ、私が相手よ」
「ほお、ジャリガール。あんたが相手するの」
「マナオ」
「え、えぇ、そ、そうよ。せ、正々堂々、私と1対1で、勝負しなさい」
マナオは、強気でロケット団に向かって発言するが、その体と声は、震えていた。
「ふーん」
その事に、ムサシは気付いたようで、彼女に答えた。
「いいわよ。行け、ニドキング」
「グオォォォ」
「いけ、カラカラ。ホネこんぼう」
カラカラは、相手に突っ込んでいき、(ホネこんぼう)を構える。
「ニドキング、どくばり」
向かってくるカラカラへ、どくばりを放つニドキング。
「はっ、躱して」
「カラ!」
カラカラは、咄嗟にマナオの指示で右へ身を翻して、攻撃を躱し、背後を取る。
「よし、ホネブーメラン」
そして、ニドキングの背中に目掛けて、(ホネブーメラン)が投擲された。
(当たれ!)
(ホネブーメラン)が直撃するまで、あと一歩という所まで行ったその時。
「マニュ!」
突然、カラカラの(ホネブーメラン)をマニューラが割り込んできて、払い除けたのだ。
「カッラ!」
「あっ!」
「ナイス、コジロウ」
「おうよ」
「ちょ、ちょっと、何するの。2対1なんて卑怯よ」
「そうだ。ロケット団」
「え?俺たちが卑怯だって?特に、ジャリボーイ。何言ってんだ」
「私達は、卑怯で悪いロケット団なのよ。いい加減に理解したらどうなの。さぁ、ニドキング。とっしんよ」
「グオォ!」
「あっ、避」
「カッラァ!」
マナオは、突然の事にすぐ対応が出来ず、カラカラへの指示が遅れてしまった。そのせいで、ニドキングの(とっしん)が決まってしまった。
「カラカラ」
マナオは、ふっ飛ばされたカラカラの元へ寄って行く。
「ふん、お前の実力は特訓を盗み見ていたから、とっくに分かってたんだよ」
「そのカラカラ、どうよう弱いという事は、お見通しなのにゃ」
「くっう・・・」
ロケット団に、そう言われて悔しがるマナオだが、言い返す事が出来なかった。
「さぁ、やっておしまいなさい。ニドキング、メガホーンよ」
「マニューラ、お前もだ。メタルクロー」
「あっ」
「マナオ。逃げろ!」
サトシは、急いで彼女を逃がそうとするが、彼女もカラカラは迫りくる2体のポケモンに
萎縮してしまった。
(私、・・・また)
マナオが、諦めかけたその時。
「ハイドロポンプ!」
突然、その言葉が彼らには聞こえた。
「「「!」」」
サトシやマナオ、ロケット団は、その言葉を聞いて、一瞬動きを止めた。そして、マナオとカラカラ目掛けて突っ込んでいくニドキングとマニューラが、何かの水で勢い良く吹き飛ばされた。
「あぁ」
「え?」
「なっ」
その場に居た全員が、その光景に驚き、水が飛んできた方を見た。
「おい、サトシ、マナオ。何、やってんだよ」
そこには、ヒョウリとラグラージが居た。
「ヒョウリ」
「ヒョウリさん」
「あいつ、もう戻ってきたぞ」
「くっ、邪魔な奴が増えたじゃない」
彼の登場に、焦るロケット団。そして、サトシとマナオは、彼を見て少しだけ元気になる。
「ヒョウリ、ナイスタイミングだ」
「ナイスじゃねぇよ。俺が居ない間に、何してんだよ」
ヒョウリは、そう言ってサトシ達の元に走って行くと、ルカリオの側に寄った。
「ルカリオ」
「ヴァル」
「済まなかったな。戻ってくれ」
ヒョウリは、助け出したルカリオをモンスターボールに戻した。
「はぁー、助かった。・・・これでもう大丈夫だね」
「カラァ」
ヒョウリの登場で、マナオとカラカラは一安心した。これで、もう自分がバトルせずに、彼が変わりに戦ってくれると。自分もサトシ師匠も守ってくれると考えたのだが。
「おい、マナオ」
「は、はい?」
ヒョウリが助けに来たことで、一安心していると不意に本人から名前を呼ばれたマナオ。
「丁度いい機会じゃあねぇか」
「え?」
「お前もバトルしろよ」
「わ、わ、私も、バトル、ですか?!」
「当たり前だろ。お前、さっき自分から前に出てただろう」
「あれは、その、師匠達があぁでしたし、私とカラカラしか戦えなかったから、その」
「あぁ、分かってるよ。だから、だよ。あと、明日の為に、良い練習相手になるだろ。さぁ、スタンダップ!」
「いや、だって。私達じゃあ。まだ、あんな強いポケモンに」
マナオは、予想外の展開に驚きながら、バトルを拒む。そんな彼女を見たヒョウリは。
「そうか。分かった」
「?」
「明日、試練に挑戦するなら、丁度いい練習になると思ったけどな。・・・その程度の覚悟と弱腰なら、明日も辞めとけって」
「え?・・・ど、どうして」
突然、ヒョウリに言われた言葉に、マナオは動揺しつつ問う。
「どうしても何も。戦えないっていうなら、俺が変わってやるさ。ただし、明日の試練も辞めるんだな。こんなバトルで、戦えない奴が、明日の試練に達成出来ると思うか?カラカラが弱い?バトルの才能がない?笑っちまうぜ。肝心な事が分かってないから」
「・・・」
「お前の心が負けてんだよ。鼻っから」
「ッ」
マナオは、黙ってしまう。
「おい、ヒョウ」
「サトシ」
「!」
「お前は、どうなんだ。マナオは、出来ると思うか?」
「ッ」
ヒョウリの問いに、サトシも黙ってしまった。
「ンンンンンン、ちょっと!」
そんなやり取りを横から黙って見ていたロケット団。徐々に苛立ちを覚えていき、遂にムサシが大声を上げてきた。
「何、私達を無視して話を進めてんのよ」
「そうだ。無視するんじゃない!」
「にゃー達を、舐めてるなら痛い目を見るにゃ」
「ソーナンス」
「はいはい、ちょっと待て。今すぐ相手してやるから」
彼らのクレームを軽く返し、ヒョウリが手の平を向ける。そして、黙っていたサトシは、マナオを見て、口を動かした。
「・・・マナオ!」
「!」
サトシに呼ばれ、
「お前なら、出来る。自信を持て!」
「し、師匠」
サトシに、そう言われたマナオ。続いて、側にいたカラカラにも話しかけられる。
「カラカ」
カラカラを見たマナオは、彼の目をじっと見た。
「・・・」
そして、彼女は立ち上がり、ヒョウリに並んで、ロケット団に立ち向かった。
「やれるんだな?」
「はい」
「よし。お前は、出来るだけニドキングの相手をしろ。じめんタイプわざが、奴に効く」
「はい。・・・師匠、見ていて下さい」
マナオは、サトシにそう告げ、サトシは答えた。
「あぁ、見てるぜ」
「さて、お待たせだ。2回目のタッグバトルを始めようか」
ヒョウリは、ロケット団にバトルの合図を出した。
「何よ、調子に乗って。ギッタンギッタンにしてやるわ。ニドキング、どくばり」
「マニューラ、れいとうビーム」
「グオォ」
「マニュ」
「ラグラージ、れいとうビーム」
「カラカラ、躱して。ホネブーメラン」
(れいとうビーム)同士が衝突し、隣では(どくばりを)を躱すと同時に、カラカラはニドキングへ目掛けて(ホネブーメラン)を投擲する。
「ニドキング、避けなさい」
ニドキングは、ムサシの指示通りに咄嗟に動こうとしたが、ギリギリ間に合わずに(ホネブーメラン)が命中してしまう。
「グオッ」
「あぁ、何やってんの。えぇい、メガホーンでやりなさい」
「グオ」
「カラカラ、来るわよ。ギリギリまで引き寄せて」
「カラッ」
突っ込んでくるニドキングを、カラカラは構える。
「今」
「カラ!」
カラカラは、ニドキングの左側に向かって飛んでいった。
「そのまま、ホネこんぼう」
カラカラは、ニドキングの側面へ避けると、そのまま(ホネこんぼう)で殴りかかろうとした。
「ニドキング、横に向かってとっしん」
ムサシの判断で、すぐさま対応されてしまった。ニドキングは、左から来るカラカラ目掛けて向きを変え、その巨体な体でぶつかった。
「カラァ」
「あぁ」
カラカラは、(とっしん)によりそのまま勢い良くふっ飛ばされてしまう。
「カラカラ、大丈夫?」
「カァ、カラァ」
「よし」
(けど、どうしよう。次は、次は)
バトルに焦り始めたマナオ。咄嗟に、隣のヒョウリの方を見た。そちらでは、ラグラージの周りを(こうそくいどう)で、素早く動くマニューラに手を焼いており、すぐに決着も応援にも来れそうになかった。
(駄目だ。自分でなんとかしないと、けど)
彼女は、この様にバトルでカラカラがピンチな時、負けそうになった時、焦り始めて動揺してしまう癖があった。自分でも何度も直そうと治そうとしたが、癖が抜ける事は無かった。そのせいで、余計負けやすくなって行き、逃げ出した。それでも、また立派なポケモントレーナーになろうと、彼らについて来た。ここで負ける訳にはいかない彼女。その時、サトシの言った言葉を思い出した。
(そうだ。まずは、落ち着いて、相手をよく見る。そして、どんなわざかを覚える)
「ニドキング、どくばり」
「避けて」
「カラ!」
(相手のニドキングのわざは、どくばり、メガホーン、とっしん、それと)
「ニドキング、だいちのちから」
ニドキングの足元から地面が裂けていき、それがカラカラに近づいて行った。
「カラカラ、上に飛んで」
カラカラは、高く飛び上がって地面から足を離すと、その場に出来た裂け目から光が溢れた。
(だいちのちから。攻撃わざは、これで全部か)
「よし」
(ニドキングは、体が大きいけど、スピードはそれ程でもない。それに、ほとんどが接近して行うわざばかり。なら、大きな隙が必ずある)
「くっ、ニドキング。どくばり」
「躱して」
「えぇい、メガホーン」
「躱して」
「くぅ、あんた躱してばっかいるんじゃないよ」
「文句あります?」
「えぇい、ニドキング。もう一度、メガホーン」
ニドキングは、再び(メガホーン)で突っ込んできた。前屈みになった状態で、頭の大きい角を光らせて、カラカラ目掛けて走って行く。あと、少しという時、マナオは叫んだ。
「カラカラ、屈んで!」
カラカラは、指示通りギリギリのところを屈むと、その真上をニドキングの顔が通過していった。その瞬間を、マナオは待っていた。
「上に向かって、ずつき!」
マナオは、タイミングを見計らってカラカラに指示を出した。
「カラァ!」
カラカラは、そのまま両足を思いっきり蹴り出すと、ニドキングの鼻先目掛けて、(ずつき)を行った。そのまま、見事に命中し、ニドキングは大声を上げた。
「グオォォォ!!!」
ニドキングは、そのまま後ろへと倒れかかり、よろけてしまう。
「グオッ、ォォォ」
「なっ」
ニドキングは、両手で自分の顔を押さえて痛みに悶ていた。だが、そんなニドキングに、マナオとカラカラは、反撃も休む暇も与えなかった。ムサシも、そのニドキングにどうすればいいか、戸惑っていた。
「よし、効いてる」
(今だ)
「続いて、ホネこんぼう」
「カァーラ!」
カラカラは、自分の(ホネこんぼう)を両手で強く握り、そのままニドキングの頭目掛けて、殴りつける。
「グオォォォ」
ニドキングは、もう一度頭部へのダメージを受けてよろけていき、倒れ込んだ。
「よし、もう一度」
カラカラが、二度目の(ホネこんぼう)を打ち込むとする。
「えぇい、ソーナンス。ニドキングを助けなさい」
「ソーナンス」
だが、ムサシのソーナンスが行く手を阻んだ。そして、カラカラの(ホネこんぼう)を(カウンター)で受けて、倍にして反射した。
「カラァ」
「あっ」
そのまま、カラカラに返ったダメージで、吹き飛ばされて地面に転がってしまう。
「今よ、コジロウ」
ムサシは、隣でヒョウリとバトルしているコジロウに合図を出した。
「おい、マニューラ。あいつに向かって、れいとうビームだ」
コジロウの指示に、ラグラージと戦っていたマニューラは、すぐに方向転換した。
「マァニュー」
「ちっ。マナオ、気をつけろ!」
「はっ。カラカラ、気をつけて」
「カラッ」
立ち上がろうとしたカラカラは、マナオのお陰でマニューラの(れいとうビーム)に気付いた。そして、素早く躱した。
「カッラ」
だが、着地時に足を滑らしたしまったカラカラ。原因は、片足だけが凍っていたからだ。
「しまった!」
(躱しきれなかったんだ)
早く動いたが、片足だけがギリギリ(れいとうビーム)が当たってしまった。そのせいで、カラカラの片足は氷漬けとなり、歩行が困難となった。
「おぉ、チャンスだ。マニューラ、トドメに強いれいとうビームを撃て」
マニューラは、再度カラカラ目掛けてれいとうビームを放とうと力を溜めた。
「クッ。ラグラージ、れいとう」
「させないわよ。ニドキング、メガホーン」
「グオォ!」
「ッ。ワイドガード」
「ラージ!」
ヒョウリは、ラグラージでカラカラを助けようと、(れいとうビーム)を使おうとしたが、ニドキングによって、邪魔が入ってしまった。
「チッ(間に合わんか)」
ヒョウリのラグラージでの援護は間に合わない。カラカラは、片足が凍ってまともに動けない。
(あぁ、どうしよう)
マナオには、もう手が思い付かなかった。
(折角、勝てそうだったのに・・・私のせいで)
彼女が、また自分を攻めようとした。
「カーラァーーー!!!」
だが、カラカラが大声を上げたことで、それは止められた。
(え?)
マナオは、カラカラの方を見た。すると、カラカラの持つ骨が青白い光を放ちはじめた。
「何?」
青白く光っていた骨は、そのまま次第に太く長くなっていった。
「さぁ、撃て」
コジロウの合図でマニューラが、(れいとうビーム)を放った。そして、それはカラカラに当たった。
「あぁ」
マナオは、涙してカラカラを見た。やられてしまった。負けてしまった。カラカラがまた傷付いてしまったと、そう思った。だが、事実は違った。
「カラァ!」
「は!」
カラカラは、無事だった。(れいとうビーム)を受けたのにも関わらず。彼は、持つ青白い骨を横の状態で前に突き出していた。カラカラは、骨を縦代わりにして、(れいとうビーム)を防いだのだ。それに、驚くコジロウとマニューラ。
「なにぃ!」
「マニュ!」
カラカラは、そのまま凍った足目掛けて、骨で殴ると一発で氷を割った。
「カラカラ」
自由になった足を軽くバタつかせて、両足で地面に強く立ち、マニューラを睨む。一方、カラカラの持つ青白く光った骨を見たサトシ。
「あれは」
サトシには、似たものを見た事があった。すると、隣で戦っているヒョウリもカラカラの骨を見て、気付いた。
「「ボーンラッシュだ!」」
二人は、そう言った。
「マナオ、カラカラが新しいわざを覚えたんだ」
サトシの言葉に、マナオは反応する。
「新しい、わざ」
「あぁ、それはボーンラッシュ。強力なじめんわざだ」
次に、ヒョウリの言葉を聞いて、わざ名を知ったマナオ。
「ボーンラッシュ」
(よし)
「カラカラ、ボーンラッシュ!」
「カラァ!」
カラカラは、(ボーンラッシュ)を持ったまま、ニドキングに突っ込んでいく。
「させるか、マニューラ」
マニューラは、カラカラを再度攻撃しようと近づいていく。
「ラグラージ、ハイドロポンプ」
「マニュ」
だが、ラグラージによって、行く手を阻まれた。そして、カラカラは、ニドキング目掛けて、突っ込んでいく。
「カラカラ、本気のボーンラッシュよ」
「くっ、どくばり」
ニドキングは、(どくばり)を放つが、カラカラは(ボーンラッシュ)を器用に回転させて、全て弾き落として行く。
「なら、もう一度よ。ソーナンス」
「ソー」
ソーナンスがまた、カラカラのわざを防ごうとした瞬間。
「ハッサム」
突然、ソーナンスの真横からハッサムが現れて、掴みかかり互いに転がっていった。
「あぁ、ソーナンス」
突然のハッサムの邪魔に、驚くムサシ。そして、邪魔が消えたお陰で、カラカラは一気にニドキングに詰め寄った。ムサシは、ソーナンスに気を取られていて、指示が間に合わない。
(今だ!)
「行けぇぇぇ!」
「カァーラァ!!!」
ニドキングの腹に向かって、ボーンラッシュを決める。
「グッ、オォ、ォ」
その結果、ニドキングは前に倒れて込み。目を回して戦闘不能となった。
「あぁぁぁ、私のニドキングがぁ!」
「ハッサム、下がれ。奴に、れいとうビーム」
そして、ヒョウリのハッサムは、すぐにソーナンスから離れる。そして、ソーナンスに目掛けて、ラグラージは(れいとうビーム)を放った。そして、そのまま命中したソーナンス。
「ソ、ソ、ソーナン、ス」
(れいとうビーム)により、氷漬けになってしまった。
「ちょっと、あんた。何すんのよ!」
「あぁ、悪いな」
「悪いじゃないわよ。あんた、何3体目出してんの」
「は?お前らも3体目を使ったんなら。お互い様だろ、文句あるか?」
「大有りよ!」
「そうか。だが、これは此間の仕返しでもあるんだよ。二度も、俺の前に現れて休暇の邪魔をして、俺のポケモンを奪おうとしたんだ。お前ら・・・俺が、キレてるのは分からねぇか?!」
ヒョウリは、半ギレの状態で、ロケット団を激しく睨んだ。
「こ、怖」
「な、何よ、あんた。私達、ロケット団の前で悪党みたいな真似をしちゃって」
コジロウとムサシは、その顔に少しだけビビってしまう。ヒョウリの顔が、ただ怒っているというよりも、丸で悪魔の如く恐さと悪い雰囲気を醸し出していたからだ。
「真似じゃねぇよ。俺は・・・お前らより、悪い奴なんだよ」
ヒョウリは、目を鋭く尖らせ、冷たい目線で言った。
「!・・・ふん。コジロウ、あんな奴さっさとやりなさい」
ムサシは、やられたニドキングと氷漬けのソーナンスをボールに戻して、コジロウへ怒鳴る。
「あぁ、分かってるよ」
コジロウは、続けてマニューラに指示を出して、ラグラージへ攻撃を行う。
「マニューラ、こうそくいどう」
マニューラは、こうそくいどうで、次々と移動して行き、ラグラージに近づいて行く。
「ラグラージ、構えろ」
「ラ―ジ」
ラグラージは、指示を受けて、マニューラを待ち構えた。
「ふん、どうした。これじゃあ、攻撃出来ないだろ」
コジロウは、先程からマニューラの機動性を活かして、ラグラージを翻弄して、隙を伺っていた。
「今だ。メタルクロー」
マニューラが、一瞬でラグラージの目前に来ると(メタルクロー)で、ラグラージの顔目掛けて爪を突きつける。
「決まったぜ」
そうコジロウは、早めにガッツポーズを取ったのだが。
「かわらわり」
ラグラージは、そのまま右腕で前にいるマニューラ目掛けて縦に(かわらわり)を繰り出す。そして、(メタルクロー)と(かわらわり)がぶつかるが、ラグラージのパワーが上だったのか(メタルクロー)は押し負け、そのままマニューラごと地面に叩きつけられた。
「マッ」
そのまま、地面にバウントして上に浮いた所を、ヒョウリは続いて攻撃した。
「ハイドロポンプ」
ラグラージの口から放った(ハイドロポンプ)は、宙を舞うマニューラに目掛けて当たった。
「マニュゥゥゥ」
マニューラは、そのまま吹き飛ばされて地面に落下。目を回して、戦闘不能となった。
「あぁ、マニューラがまた。くぅそぉ、出す度に金払うんだぞぉぉぉ」
コジロウは、泣きながら愚痴を言って、目を回すマニューラをボールに戻す。
「不味いのにゃ」
ニドキングもマニューラ、そしてソーナンスもやられてしまった。ロケット団は、もはや打つ手を無くした。
「くぅー。こうなったら、逃げるのよ」
ムサシは、悔しがりながらそう命令する。
「急速上昇だ」
「急げなにゃ」
それに合わせて、コジロウとニャースは、急いで気球を操作し、上昇させて逃げようとして行く。気球が、みるみる上げっていくのを、地上のサトシ達は見ていた。
「ピィ・・・ピカァ!」
サトシに抱き抱えられたピカチュウが、離れて地に足を着けた。
「ピカチュウ、大丈夫なのか」
「ピカピカ」
サトシの問いに答えたピカチュウ。サトシは、ロケット団に指を差す。
「よーし、決めるぞ。ピカチュウ」
「ピッカァ!」
「ヒョウリ、マナオも行くぞ」
「あぁ」
「はい」
サトシ達は、息を合わせて、逃げるロケット団に睨んで指示を出した。
「ピカチュウ。10マンボルト!」
「ラグラージ、ハイドロポンプ」
「カラカラ、ホネブーメラン」
ピカチュウ、ラグラージ、カラカラのわざによる一斉攻撃が、ロケット団に向けて放たれた。集中したわざは、気球ごと爆発させた。それにより、ロケット団達は天高く吹き飛ばされた。
「やっぱ、こうなったか」
「こうなったかじゃないでしょうが」
「もう怒っても仕方ないにゃ。もういつもの最後に入ってしまったにゃ」
「それでは」
「「「やな感じ〜~~!!!」」」
そして、ロケット団の彼方先まで飛んで行った。
「さて、邪魔者は消えたな」
ヒョウリは、彼方に消えたロケット団を見て、そう言うと隣にいたマナオがカラカラの元に走る。
「カラカラ」
「カラァ」
カラカラは、マナオに向かって飛びつき、彼女は強く抱きしめた。
「良かった。貴方が戻って来くれて」
「カラァ」
「それに凄いよ、カラカラ。新しいわざまで覚えて」
「カラカラ」
互いに、安心した様子で抱きしめ合っていると、サトシから話しかけられた。
「マナオ」
「は、はい」
「さっきのバトル。見事だったぜ」
「・・・」
サトシに褒められたマナオは、すぐに返事を返さなかったが、目元から涙を溢れさせた。
「え、おい。マナオ、どうして泣くんだ」
「ピカッ、ピカピカ」
急にマナオが泣き出した事に慌てるサトシとピカチュウ。そんな彼らに、揶揄う男が居た。
「あーあ、泣―かせた」
「え?俺のせいかよ」
「あぁ、きっとそうだろうさ」
「あっ、えぇと。マ、マナオ。その」
サトシはたじたじとなって、マナオをどう泣き止んで貰おうか、将又謝ろうかとしていると。
「大丈夫です」
マナオから、そう言うと、自分の手で涙を拭いた。
「これは、嬉しい涙ですから」
「嬉しい?」
「はい。私とカラカラの初勝利のです」
「あっ。あぁ、そうだ。マナオの初勝利だ。おめでとう」
「はい」
「この調子で、明日も頑張ろうな」
「はい。頑張って、明日の試練。必ず達成してみせます」
サトシとマナオが、話していると。
「良い所で悪いが、さっさとポケモンセンターに戻るぞ。ポケモン達を回復させないといけないし。明日に備えて、晩飯を食って、さっさと寝ないとよぉ」
「そうだな」
ヒョウリに言われて、全員でポケモンセンターに戻って行った。
「ところで、ヒョウリさん」
「ん?なんだよ?礼なら」
「前から思ったんですけど。貴方、本当に意地悪な人ですね」
「はぁ?」
ヒョウリは、彼女の言う言葉の予想が外れて、そう口から漏らす。
「そうだよな」
すると、マナオの隣で歩くサトシも彼女に肯定し始めた。
「おいおい。俺は、こいつの為に、煽ったり唆したりしたんだぜ。むしろ、感謝して欲しいよ」
「だとしても、もっと別の言い方とかあると思います」
「悪いなぁ。俺は、こういうやり方が、性に合ってるんだ」
「師匠も、どうしてこの人を仲間にしたんですか?」
「いや、俺も何となく。」
「今すぐ、この人だけ脱退させましょう」
「おい、お前。俺に対して、急に態度が変わったな。あれか、初勝利したからって調子に乗ってるな」
「いえいえ。貴方にも、感謝はしています。ただ、師匠の言葉の方が、何倍も心に響きましたから」
「おい、サトシ。今度の特訓付き合ってやるよ。この女をボコボコにするから」
「まぁまぁ、落ち着けって。マナオも、ヒョウリが助けに来たから助かったんだからさぁ」
「師匠が、そう言うならいいですけど」
喧嘩しつつも、賑やかな3人は並んで、ポケモンセンターへ戻った。 
 

 
後書き
今回は、サトシとヒョウリ、マナオが立ち寄った街で、ポケモントレーナーのイベントの1つ「ポケモントレーナー・ベストカップ(本作オリジナル設定)が開催される事を知り、サトシとマナオが参加する事を決めて、その特訓の話になります。

次回は、いよいよサトシとマナオが、トレーナー・ベストカップの第一の試練に挑戦します。


話としては、この先最終話まで続ける予定ですので、ご興味がある方は、最後までお読み下さい。

追記:
現在、登場人物・ポケモン一覧を掲載しました。
登場する人物やポケモンが増えたら、更新します。また、修正も入ります。
今後、オリジナル設定関連についても、別途設定まとめを掲載を考えています。

次回は、いよいよサトシとマナオが、トレーナーベストカップの第一の試練に挑戦します。


(注意)
掲載された作品で、文章の変更や文章ミス・誤字脱字などに気付きましたら、過去のも含めて後日改めて修正する可能性もあります。 
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