ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
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第100話 予想していなかった再会!切れ味勝負、イッセーのナイフVS聖王剣コールブランド!前編
前書き
アーサーやエレインの性格を一部変えていますのでお願いします。多分原作ではあんな行動はしないでしょうし……
side:イッセー
研ぎ師メルクとメルクの星屑を求めて俺達はヘビーホールを進んでいた。バルバモスの襲撃をかいくぐりさらに下の階層に向かったが強くなっていく重力に悪戦苦闘している最中だ。
「はぁ……はぁ……体がえらくなってきたわね」
「体が重いですわ……」
現在の重力は2倍……いやそれよりちょっと増したぐらいか?とにかく体にかかる負担がさらに大きくなりリアスさんと朱乃は汗を大量に流しながら苦悶の表情を浮かべる。
「あぅ……」
アーシアがフラッと倒れそうになったので俺は彼女を抱きかかえた。流石に限界か……
「皆、一旦休憩しよう。このまま進むより体が重力に少しでも慣れるのを待った方が良い」
「そうね、みんな疲れた顔をしてるし少し休みましょう……」
幸いこの辺りにはバルバモスのような猛獣はいないようだ。俺達はここで少し休んでいく事にした。
「頭が痛いよ……なんかガンガンする……」
「強い重力で血が脳まで上手く回っていないのかもしれない。少し横になっておけ」
「うん、分かったよ……」
イリナが頭が痛いと言うので俺はこの強い重力で頭まで血が回りにくくなっているのではないかと思い彼女に横になるように話す。
「それにしても重力が増すのってこんなにも苦しいんだね。僕達は前に重力を増した状態で特訓をしていたけどそんなのがお遊びだったと思えるくらいにキツいよ……」
「あの時は結局時間もなかったし、二人の体が持たないから0.5倍までで断念したんだったな。寒さや暑さとは違ったストレスを感じる、これが重力の影響か」
「私達の住んでいる普段の環境がいかに恵まれたモノなのか実感しますね……」
祐斗は以前ライザー・フェニックスとのレーティングゲームの前日にした修行の中で重力を増す指輪をして特訓していたことを話す。
あの時は二人の体への負担も考えて0.5倍で断念したんだったな。俺も2倍の重力を増す指輪を付けてみたが、全く動けなくなり直に外したくらいだった。
アイスヘルで受けた極寒の冷気、ベジタブルスカイへの道で受けた酸素の少ない環境……それらとはまた違った苦しさを受ける、これが重力の増した世界か。一筋縄ではいかないな。
小猫ちゃんは普段自分たちが暮らしている環境が如何に暮らしやすいモノかと実感したようだが俺も同意だ。
「ここで暮らしているバルバモスたちでさえ下に落ちればペっちゃんこなんだからな。ヘビーホールでこれだ、グルメ界はこんなもんじゃすまないだろうな」
「それに重力だけじゃなくてもっと複雑な環境が次々に襲ってくるんですよね?考えただけでも恐ろしいです……」
俺とアーシアの言葉に全員が黙り込んでしまった。いけないな、この強い重力の影響で気持ちまで落ち込んできたようだ。
俺は重力っていうのは肉体的に辛い物だと思っていたが、実際は精神的な影響も強いことを思い知った。
(いかんな、思っていた以上に精神的ストレスが大きい……このままじゃ肉体より先に精神をやられてしまって動けなくなるぞ)
精神的なストレスの影響で自律神経までダメージを受けている、そのせいで動悸と眩暈がするし頭がクラクラしてきた……
「あっ……」
その時だった、体勢を崩してしまった小猫ちゃんのリュックから運悪く折れた形見の包丁が転がり落ちてしまったんだ。
「父様!」
小猫ちゃんは直ぐにジャンプしてそれを追いかけるが、このままでは如何に戦車の駒を持つ小猫ちゃんとは言え増加する重力で叩き潰されてしまうぞ!
「小猫ちゃん!」
俺は直ぐに彼女に向かって飛び掛かり空中で何とか彼女をキャッチする。そして小猫ちゃんを庇うように急な坂を転がり落ちていく。
「ぐああぁぁぁぁぁぁっ!?」
地面や飛び出た岩に体を叩きつけられながらも何とか生きてはいる。俺は最終的に光の届かない漆黒の底まで落ちてしまった。
「がはあっ!!」
地面に勢いよく叩きつけられた俺は肺から空気を吐き出した。か、体の骨がイカれてしまったか……!
「先輩!大丈夫ですか!?」
「お、俺は生きてるぜ……ただ骨をやられた……何か食いてぇ……」
小猫ちゃんが無事な事に俺は安堵する。この子が無事なら言うことはない。
「先輩、ごめんなさい……足を引っ張っちゃって……」
「何言ってんだ、俺達は仲間じゃないか。助け合ってこそだろう?それに俺だって皆に助けられたこともある。お互い様だ」
「先輩……」
落ち込む小猫ちゃんを俺は慰める。この子にこんな悲しそうな顔はしてほしくないからな。
えっ、暗いから顔なんて見えないだろうって?そういう野暮な質問は無しだぜ。
「それにアーシアやオカルト研究部の皆、教会組、ルフェイやテリー、ティナ達は大事な仲間だけどその中でも君は特別なんだ。守りたい特別な存在……守るべき存在が俺に確かな力をくれるんだ」
「イッセー先輩……」
小猫ちゃんは俺の中でも特別な存在だ。この子の為ならなんだってしてあげたいし何があっても守りたいって思う。
「……先輩、ここからは私に任せてください!」
「小猫ちゃん?」
「私が食材を見つけてきます!だから先輩はここで待っていてください!今度は私が先輩の力になる番です!」
俺は彼女の言葉を聞いて危険だと言おうとしたがそれも今更だと思ったのでやめた。この子や皆だって自分の意志でここに来ているんだ、そう思うのは失礼にしかならない。
「分かった……無理はするなよ」
「はい!」
小猫ちゃんはそう言うと漆黒の闇の中に姿を消した。頼んだぜ、小猫ちゃん……!
―――――――――
――――――
―――
side:小猫
先輩と別れた後、私は仙術を使いソナーのように暗闇の中を移動していました。本来なら転生悪魔ですら何も見えないほどですが仙術のお蔭で何とか進めています。
「ルフェイさんと離れてしまったのが痛手ですね……」
私は魔法は得意ではないので異空間にしまえるものが限られています。だから大きめの調理器具だけで容量がいっぱいになっちゃうんですよね。
なので基本的に非常食などの食材は彼女に任せているんです。
結構遠くまで離れてしまったから通信魔法も届かないし、特殊な磁場で携帯も使えません。連絡が取れない以上私が食材を見つけないといけないんです。
「足元に気を付けないと……」
ただでさえ不安定な足場が続くうえに重力の影響でまともに動けません。ですが先輩の為にも絶対に食材を見つけて見せます。
その時でした。何かが暗闇の中から襲い掛かってくるのを仙術で察した私は素早く身をひるがえしてその場を離れました。すると私のいた場所に鋭い牙が食い込みました。
私は咄嗟にグルメスティックセンサーを当てて生物の情報を得ます。
「コイツは『アンコウモリ』!捕獲レベル41の猛獣です!」
アンコウのようなずんぐりむっくりな体に蝙蝠のような大きな羽根……私はグルメスティックセンサーの情報で襲ってきたのがアンコウモリだと分かりました。
アンコウモリはその巨体から想像できない俊敏な動きで私に襲い掛かってきました。しかも攻撃する際にフクロウのように音を立てないので厄介です。
「でも残念でしたね。私が相手なら暗闇は関係ありません」
仙術を使えるお蔭でアンコウモリの動きを捕えることが出来ます。この重力にもだいぶ慣れてきたので今度はこっちから攻めます!
しかしその時直感で何か嫌な感じがしたので咄嗟に手で目を覆い隠しました。するとアンコウモリの額に生えていた触覚から強い光が発生して電撃を放ってきました。
私は目を隠していたので強い光に目を焼かれることはありませんでした。そして飛んできた電撃をジャンプして回避します。
「やあっ!」
お返しにアンコウモリの頭に拳を叩き込みました。そして今度は下に潜り込んで蹴り上げます。
「ゲギョッ!?」
アンコウモリの体がくの字に曲がって苦悶の声を上げます。そして最後に上から踏みつけるようにアンコウモリにキックをしました。
その際に羽根を掴んで動けなくします。そして羽根を両手で引っ張ってアンコウモリの体の上で相撲の土俵入りをする際のポーズを取って地面に叩きつけました。
「『不知火・雲竜投げ』!!」
地面に勢いよく叩きつけられたアンコウモリは断末魔を上げて息絶えました。
「危なかったです、さっきの光で目つぶしをして獲物の視界を奪って電撃で仕留めるのがアンコウモリの狩りなんですね。直感を覚えてなかったらやられていました」
アンコウモリの放った電撃攻撃は初身殺しです、直感を知らなかったら喰らっていたでしょう。
「でもアンコウモリなら先輩に美味しい料理が作れますね。先輩、待っていてくだ……!?」
その時でした、私とアンコウモリのいた地面がひび割れて崩れてしまったんです。私とアンコウモリの死体はそのまま下に向かって落ちていきました。
幸いにもアンコウモリの死体がクッションになって怪我は負いませんでした。
「ううっ……荷物は大丈夫かなぁ?」
私は仙術で荷物を失っていないか確かめましたが……
「ああっ!?父様の包丁が無いです!」
なんと父様の包丁だけが無くなってしまっていました。さっき落としたばかりなのに私は馬鹿です!
「早く探さないと!」
私は慌てて仙術を使い父様の包丁を探しました。幸いにも父様の包丁はそう遠く離れていない場所にあったので何とか回収することが出来ました。
「良かった……もう、父様ったら美味しそうな食材が多いからって私から離れちゃ駄目ですよ……ふふっ、なんてね。私のミスだしごめんなさい、父様」
私は父様の形見の包丁にメッと怒るような芝居をしましたが、私のミスなので直に謝りました。
「さて、早くアンコウモリを持って先輩の元に向かわないと……あれ?何かがいますね……コレは!?」
私は近くに何か生物が大量にいるのを仙術で感じ取ったので警戒しながらその生物にグルメスティックセンサーを当てました。するとそこに出たのは……
「『ルビークラブ』!?まさかこんなところで最高級の蟹を見つけられるなんて!?」
そう、私が発見したのはその発見のしにくさだけで捕獲レベル46にされている幻の高級ガニ『ルビークラブ』でした。
しかも仙術で確認するとかなりの数がいますね、コレは群れを見つけたのでしょうか?
「こんな凄い食材を偶然とはいえ見つけられるなんて……あっ!」
私は偶然ルビークラブを見つけることが出来たと思いましたが、この場所に来たのは父様の形見の包丁を追いかけていたからだと気が付いて包丁をジッと見ました。
「まさか父様が私を導いてくれたんですか……?」
私は父様がルビークラブに導いてくれたんだと思いました。
「ありがとうございます、父様……」
私は父様に感謝をしてルビークラブを沢山捕獲しました。そしてアンコウモリも回収して先輩の元に向かいます。
「先輩!」
「小猫ちゃん、無事だったんだな……」
「はい、実は……」
私はこれまでの事を先輩に話しました。
「ルビークラブ!?凄いじゃないか!しかもアンコウモリまで捕獲してくるとはな!」
「はい。直感を教えてもらっていたから何とか勝てました」
「凄いよ、本当に小猫ちゃんは頼りになるな」
「えへへ……」
イッセー先輩に褒めてもらえて嬉しくなっちゃいます。
「先輩、今料理を作るので待っていてくださいね」
私はそう言うと道中で拾ってきた光る鉱石『シャインロック』で明かりをつけて調理を始めます。
手際よくアンコウモリの肉を切り分けていき骨を取り除きます。そしてルビークラブも殻を向いて身を取り出しました。
ガスコンロと大きめの鍋を取り出すと私は水筒に入れていた未完成センチュリースープを鍋に入れて火をかけて温めます。
調味料で味付けをして温まってきたらアンコウモリとルビークラブを入れて煮込んでいきます。
「……んっ、いい塩梅ですね」
具材に火がしっかり通ったことを確認して……よし、完成です!
「イッセー先輩、出来ました!『アンコウモリとルビークラブの洞窟鍋』です!」
「うおぉぉぉっ!?美味そうだ!」
先輩は全身の骨がイカれているにも関わらず匂いを嗅いだだけで起き上がってしまいました。
「この世の全ての食材に感謝を込めて……頂きます!」
先輩はそう言うとまずルビークラブの身にかぶりつきました。
「うんめぇ~!プリップリの甘い身にセンチュリースープのダシが絡んで舌の上で味が広がっていくぜ!こんな強い重力で生活しているからか身も凄く引き締まっていて食べ応えがあるな!」
「アンコウモリのお肉もトロッ~と舌の上で溶けちゃうくらい柔らかいですね。本当なら野菜とかも入れたかったんですが……」
「十分だよ!こんな洞窟で美味しい鍋を食べられるなんて思っていなかった!これなら……」
鍋を食べ終えた先輩の肉体はまるで生まれたての赤ちゃんの様に弾力が出て潤っていました。
「元気100倍!!これならもう大丈夫だ!」
「先輩、元気になりましたか?」
「ああ、最高だぜ!ありがとうな、小猫ちゃん!」
先輩が元気になってくれて嬉しいです。これで皆の元に戻れますね。
その後私達はルビークラブとアンコウモリを持って皆の元に戻りました。結構離れた場所に居ましたが先輩の嗅覚のお蔭で合流することが出来たんです。
「イッセー君!無事で良かったよー!」
「イッセー!心配したわ……貴方に何かあったら私……」
「大丈夫だよ。心配かけてごめんな」
イリナさんと朱乃先輩がイッセー先輩に抱き着きました。
「小猫ちゃんも無事で良かったです!」
「二人が落ちていったときは流石に焦ったわ……」
「ご心配をおかけして申し訳ありません。何とか無事に戻ってこれました」
私はアーシアさんとリアス部長に謝りました。
「だが皆、良い知らせがあるぞ。なんと小猫ちゃんがルビークラブを捕獲したんだ!」
「えー!ルビークラブって初めて一龍さんにお会いした時に食べさせてもらったあの高級品!?凄いじゃない!」
イッセー先輩の言葉にリアス部長が飛び跳ねて喜びました。皆も相当疲れているようなので美味しい料理を作ります!
「さっきの鍋に野菜を入れて……うん、出来た」
さっきイッセー先輩に作った鍋を同じように作りましたが。今度はルフェイさんもいるので野菜やお肉など他の食材も入れてみました。
それだけで終わらずに今度は炊飯器を取り出してルフェイさんにお米を貰いました。そしてルビークラブやアンコウモリのダシを染み込ませた未完成センチュリースープでお米を炊きます。
因みに電気は朱乃先輩に出してもらいました。
「出来ました!ルビークラブの身をたっぷり使った『紅蟹の炊き込みご飯』です!」
「わぁぁ!蟹のいい匂いがします~」
「コレは食欲をそそるわね!」
炊飯器を開けると蟹のいい匂いが広がってギャー君とティナさんが涎を垂らしていました。
「それじゃこの世の全ての食材に感謝を込めて……」
『頂きます!』
先輩の合図で合唱をして私はルビークラブの炊き込みご飯を食べます……うん、美味しいです!
「ルビークラブの身がご飯に絡んでどんどん食べれちゃうよ。お鍋も濃厚な味わいで美味しいね」
「日本の文化の鍋か、初めて食べたが実に美味しいな!野菜やお肉、魚などバランスよく栄養も取れるし日本食と言うのは奥が深い」
祐斗先輩とゼノヴィアさんも満足してくれているようですね。
「テリーも美味しいですか?」
「グォウ!」
ルビークラブの身を美味しそうに食べるテリーを見て私は笑みを浮かべました。そうだ、ユンにもお土産で持って行ってあげないといけませんね。
ユンは流石にこの環境にはついてこれないと思ったので姉さまに預けています。寂しそうにしていましたし帰ったらいっぱい遊んであげないといけませんね。
その後皆は作った料理をぺろりと平らげてしまいました。
「あ~、お腹いっぱいだわ……」
「これならまだまだ先に行けそうですわね」
「だが重力は増す一方だぜ?いくら食って体力や気力を回復させることが出来てもこれから先更に強くなっていく重力に耐えられるのか?」
リアス部長は満足そうにお腹を撫でて朱乃先輩は体力が回復したからまだまだ席に行けると言います。
でもアザゼル先生はいくら体力を回復させたとは言え増加する重力にこのまま進むのは厳しいんじゃないのかと意見を言いました。
「それについては俺に考えがあります。さっき小猫ちゃんと一緒に転がり落ちてるときに一緒に転がっていた岩石を見てこの重力で体に負担を与えにくい動き方を思いついたんです」
「本当か?」
「はい、少し離れていてください。俺が実際にやって見せますから」
イッセー先輩はそう言うと急な坂になっている場所の上に立ちました。
「既に重力の強さは2倍以上……俺の体重も1tはあるだろう。普通に歩いたりしていたら負担が大きすぎるし足に血が溜まってしまう」
「じゃあどうするんですか?」
「こうすればいいんだよ」
イッセー先輩はそう言うとまるで玉のように丸まって坂を転がりました。
「そうか、転がることによって体を回転させると負荷が流動することで筋肉や骨への負担が分散されるんだな」
「しかも足に血が溜まりにくくなるから意識が途切れる事も無くなりますね」
アザゼル先生とルフェイさんが解説してくれました。確かにさっき落ちている時も転がっているときは立ってる時より重力の影響を受けにくかったような気がします。
「ふぅ……こんなものかな」
するとイッセー先輩が下から戻ってきました。
「どうだった、イッセー君?」
「良い感じに重力の負担を分散で来たぜ。でも加重力下では体力の消耗が激しいな、食材を食って回復しながら下に向かおう」
祐斗先輩がどんな感じなのかを聞くとイッセー先輩は体力を回復させながら行けば問題無いと言いました。
こうして私達はイッセー先輩が考案した『丸まり作戦』で重力に合わせようと決まりました。
ただアーシアさんやティナさんにはそんな激しい行動は出来ないので祐斗先輩に『衝撃を無効化する魔剣』を作ってもらいイッセー先輩と祐斗先輩に抱っこされながら進むことになりました。
「祐斗君の魔剣って本当に便利よね~。これがあれば猛獣の攻撃も防げるんじゃないの?」
「流石に僕より強い猛獣には効果は無いよ。猛獣だけでなく強すぎる環境にも効果が及ばないことも多いし僕の魔剣も絶対じゃないんだ」
イリナさんが祐斗先輩の『魔剣創造』の便利さを褒めましたが彼は弱点も多いと答えました。
「よし、それじゃ行くぜ!」
私達は先輩の合図と共に勢いよく転がり始めました。
(なるほど、確かに負担が減った気がしますね。目が回りそうですが積乱雲の中と比べれば問題ないです)
上手い事重力の負担を分散させることが出来ていますね。目が回りそうですがこれくらいだったらベジタブルスカイに向かう途中で体験した積乱雲の中の方が激しかったです。
「あわわ!止まりませ~ん!」
ギャー君が岩壁に激突しそうになりましたが『世界』が出てきてギャー君をこっちに押し返していました。
「へぶっ!もうちょっと優しくしてくださ~い……」
ギャー君は世界にちょっと文句を言いましたが世界は「ふん」と首を下げて消えてしまいました。
「ふはは!一番に下に着くのは私だ!」
「負けないわよ、ゼノヴィア!」
イリナさんとゼノヴィアさんは競い合うように転がっていました。あんまり急いで下に向かうと危険なんですが……
「止めんか」
「あうっ!?」
「うおっ!?」
流石に危なかったのでイッセー先輩に止められていました。
「ティナさん、痛くないですか?」
「うん、大丈夫だよ。祐斗君こそ体は痛くない?」
「上手い事衝撃を分散させれていますから平気ですよ」
「ごめんね、私がいなければもっと楽に行けたのに……」
「気にしないでください。僕は好きでティナさんを助けたいんです」
「祐斗君……」
「ティナさん……」
あの、ラブコメしていないで下に向かいましょうよ……ピンク色の空気を出す祐斗先輩とティナさんに呆れながらも私もあんな感じだったのかもと反省します。
「うぷっ……食ったばっかでこんな回転したら……オロロロ」
「ギャー!?こっちに来ないでアザゼル!」
「おじ様……」
積乱雲を体験していないアザゼル先生は慣れていなかった為吐いてしまいました。近くにいたリアス部長と朱乃先輩は直ぐに離れました。
「アオン!」
「テ、テリ~!私で玉乗りをしないでくださいよ~!」
転がるルフェイさんの上でテリーが曲芸のように乗っていました。
「あはは……でもこの調子なら最下層まで行けますね」
いつものメンバ―らしい行動に苦笑しつつも頼もしく思い私達は下を目指して進んでいきました。
―――――――――
――――――
―――
side:イッセー
増加する重力に逆らうのではなく合わせる動きを得た俺達は食材を食べながら回復しつつなんとか最下層まで下りることが出来た。
「うう……凄い重さね」
「既に5倍まで重力が増していますからね。慣らすのに時間がかかりましたがもう大丈夫でしょう」
リアスさんは増加した重力に動きにくそうにしていたが慣れてきたのか体の不調までは言わなかった。アーシアやティナも大丈夫そうだな。
「よし、ここにメルクがいるはずだ。何が起こるか分からないし俺から離れないようにな」
「はい、了解です」
本来なら分散した方が効率がいいんだがここは未知の場所だ、俺から離れてもらう訳にはいかない。
俺達は全員でメルクを探すことにした。
「でも幻想的な光景ね。シャインロックの光に鉱石が反射して綺麗な色が出てるわ」
リアスさんの言う通りこの辺りは煌びやかな鉱石にシャインロックの光が反射して幻想的な風景を描いていた。
「もぐもぐ……ここで食べるルビークラブの身も乙なモノだな」
「本当ね。より美味しく感じるわ」
「まだ食べていますぅ……」
「み、見てるだけで気持ちが悪いぜ……うえ……」
食欲旺盛なゼノヴィアとイリナはルビークラブの身を食いながらこの光景を楽しんでいた。それを見たギャスパーは呆れたような視線を向けてアザゼルさんは気持ち悪そうに口を押えていた。
魔法で消臭して消毒したし着替えたけど吐いてしまったアザゼル先生には皆近づかなかった。
俺も近づけない、だって消臭したとはいえ俺の鼻には匂うから酸っぱい匂いがするんだ……
「あれ、イッセー先輩。あそこに誰かいますよ?」
「メルクか?」
小猫ちゃんが何かを発見したようなのでそちらを見て見ると、誰かがイスとテーブルに座っていた。
あれがメルクか?そもそもなんでこんな場所にあんな豪華なイスとテーブルがあるんだ?
「ん~、ルキさんから聞いた感じの人じゃないようね。だって細身の金髪イケメンだし。まあ祐斗君の方が全然カッコいいけど」
「確か筋肉粒々の逞しいおじ様だとルキさんは語っていましたので違うかと……」
「ならアレは誰なんだ?」
ティナはルキから話に聞いていた人物像とは違うと言い朱乃も同意した。後さらっと惚けたな、ティナ。
ゼノヴィアの言う通りあの人は誰なんだ?
「皆油断するな、こんな環境の中あんな優雅にティ―タイムを楽しんでいる人物が只者じゃない訳が無い」
俺は皆に警戒するように話す。だって俺でも動くのにきつい環境の中でティ―タイムを楽しむ男が只の一般人なわけ無いだろう、まさか美食會か!?
「う、うそ……」
「ルフェイ?」
そんな時だった。ルフェイが信じられない物を見たような顔でその男をジッと見ていたんだ。俺はあの男の事を知っているのかと聞こうと思ったが、それよりも早くルフェイはその男の元に駆け寄っていった。
「はぁ……はぁ……」
「……」
「やっぱり……間違いない。お兄さまですよね?」
なっ!?俺達はルフェイの言葉を聞いて驚いてしまった!あの男がずっとルフェイが探していたというお兄さんなのか!?
「お兄さま!どうして私に黙って家を出て行ったんですか!?私がどれだけ心配したと思ってるんですか!」
「……」
「エレインも連れて行ってしまって……彼女は無事なんですか?今は何処にいるんですか?」
「……」
ルフェイは兄と呼ぶ男に質問をするが彼は何も答えなかった。
「おいアンタ、ルフェイが兄貴と言ってるから多分そうなんだろうけど実際はどうなんだ?流石に無視はひどいんじゃないか?」
「師匠……」
俺は二人に介入した。お節介でしかないが師匠としてルフェイの面倒を見てきた俺は男の態度に我慢が出来なかったんだ。
「……ティ―タイム」
「えっ?」
「今はティ―タイムの時間です。私達英国人はたとえ戦争中であってもティ―タイムは守ります。貴方たちもどうぞ席へ」
「あっ、はい……」
男にそう言われた俺は毒気を抜かれてしまい言われるがままに席に着いた。ルフェイも後に続いて席に座る。
他のメンバーが見守る中、静かな時間だけが過ぎていった。
「……」
「紅茶をどうぞ」
「あっ、ありがとうございます……ってエレイン!?」
突然現れた黒髪のメイドを見てルフェイが驚いた様子を見せる。この人もルフェイの知り合いのようだな。
「ルフェイお嬢様、お久しぶりです。こうしてまたお会いすることが出来て嬉しく思います」
「エ、エレイン……エレイン~!」
ルフェイは席を立ちあがりエレインと呼ぶ女性に抱き着いた。
「エレイン!無事で本当によかったです!」
「……」
「今までどこにいたんですか?どうして家を去ってしまったのですか?やはりお父様のせいなのですか?」
「……お嬢様、今はアーサー様のティ―タイムの時間です。申し訳ございませんがそれが終わるまで質問はお待ちいただけるようお願いします」
「えぇ……」
あんまりな対応にルフェイも涙を引っ込めて怪訝な顔をした。
「いや、流石にそれはちょっと……」
「師匠、お兄さまは食事すらどうでもいいと思っているくらいに執着心が無いのですが紅茶だけは例外でこよなく愛しています。だからティ―タイムの時間は絶対に譲らないんです……」
「いいのかよ、折角の再会がこんなんで……」
「そりゃ私だって嫌ですよ。でもこうなったお兄さまは絶対に譲りません。ここは私達も付き合いましょう」
諦めた表情でそう言うルフェイに同情しながらも俺は出された紅茶を飲んだ。いつの間にか立っている他のメンバーにも紅茶が渡されているな。
「んっ!?美味い!なんて芳醇な香りに繊細な味わいだ!明らかに今まで飲んできた紅茶とは訳が違うぞ!」
「それは私が気に入ってる『アルティメットティー』です。グルメ界でしか取れない『究極リーフ』を煎じたもの、気に入って頂けましたか?」
「ああ、こんな美味しい紅茶は初めてだ」
「それは良かった」
紅茶を褒めた事で機嫌がよくなったのかルフェイの兄は嬉しそうに語った。
「……さて、そろそろいいでしょう。ルフェイ、来なさい」
「あっ、はい……お兄さまぁぁぁぁぁぁっ!!」
ティ―タイムを終えたルフェイの兄はもういいと言うとルフェイは慣れた様子で先程のテンションになって兄に抱き着いた。
「お兄さま!無事で良かったです!私、本当に心配で……」
「ルフェイ、心配をかけてしまい申し訳ありませんでした。私はこうして元気にやっていますよ。貴方も元気そうで良かった」
さっきまでの変な空気が嘘のように感動の再会をする兄妹……なんだこれ?
ルフェイは今度はエレインというメイドさんに抱き着いた。エレインさんはさっきまでの塩対応が嘘のように優しくルフェイを抱きしめる。
「うう……エレインも無事で良かったです……」
「お嬢様、勝手にいなくなってしまい誠に申し訳ございません。アーサ―様と結ばれるにはこうするしかなかったのです……」
「やっぱりそういった理由だったのですね。それなら私にも言ってくださればよかったのに……」
「申し訳ありません。ルフェイを巻き込みたくなかったのです」
「お兄さまはいつもそうです、自分ばかりで何でもしようとして……それが私にとってどれだけ寂しいことか分かっていますの?」
「返す言葉もありません……」
ルフェイは二人が家を出て言った理由を察してるようだが、俺達の気持ちも察してほしい。急激な展開の早さに着いていけないんだよ……
「……ふふっ、もういいですよ。お兄さまがそういう人だって言うのは分かっていますから、今はこうさせてください」
「ええ、好きなだけ甘えてください……」
ルフェイを優しく抱きしめる兄……もう面倒くさいからアーサーって呼ぶよ。アーサーはルフェイを抱きしめてエレインというメイドさんはその光景を目から涙を流して見守っていた。
「……いやテンションの差ぁ!!」
とうとう俺は大きい声で突っ込んでしまった。
後書き
ギャスパーですぅ。ルフェイさんがお兄さんと再会できてよかったですね、僕も大切な人に会いたくなっちゃいました。
次回は何故かイッセー先輩とアーサーさんが戦う事になってしまいますぅ。どうしてこうなったのでしょうか?
……ええっ?あれって『支配の聖剣』ですかぁ!?しかもその聖剣に操られた蠍魔牛っていう猛獣をけしかけてきましたしアーサーさんは何を考えているんですかぁ!?
イッセー先輩が手を貸せない以上僕達で何とかするしかないです!怖いけど僕も戦います!
次回第101話『予想していなかった再会!切れ味勝負、イッセーのナイフVS聖王剣コールブランド!中編』で会いましょう。
次回も美味しくいただきます……ですぅ。
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