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第三十九話 合コンが終わってその十四

「トイプードルよりも大人しくて」
「弱いのね」
「そうだよ、日本の犬は気が荒いっていうけれど」
「秋田犬とか甲斐犬とか柴犬とか」
「全部狩猟犬だよ」
 今一華が名を挙げた犬達はというのだ。
「土佐犬なんて闘犬だしね」
「闘犬は強いわよね」
「もう闘う為の犬だからね」
「そうよね」
「昔はそうした犬を戦いに連れて行ってたし」
「軍用犬ね」
「甲斐犬なんか多分だけれど」
 達川はこう前置きして話した。
「武田信玄さんもね」
「戦に使っていたの」
「そうだと思うよ」
「そうなのね」
「名前から言ってるだけだけれど」
 甲斐今の山梨県といえばやはり武田信玄であろう、事実今でも山梨県では文句なしに地元の英雄である。
「あの人戦強かったからね」
「それ有名よね」
「山梨からの子も言ってるしね」
「そうよね」
「もう信玄さんと言えばね」
 まさにというのだ。
「戦に強くて」
「しかも政治も上手な」
「英雄だよ」
「そうよね」
「それでその信玄さんもね」
「甲斐犬を使っていたのね」
「戦にね」
 今で言う軍用犬にというのだ。
「そうだと思うよ」
「そうなのね」
「だから日本の犬はね」
「狩猟犬だったりして」
「戦いにも使われていたから」
 そうした種類の犬が多くというのだ。
「気が強いよ」
「じゃあそのままいたら狂犬病じゃなくても危ないわね」
「トイプードルでも侮れなくてね」
 それでというのだ。
「気をつけないとね」
「だから逃げるのね」
「イッちゃん連れてね」
 そのうえでというのだ。
「そうするよ」
「逃げる方が安全ね」
「そうだよ、ただ人懐っこい子なら」
 犬でもというのだ。
「知っていてね」
「それなら大丈夫ね」
「犬もこっちが何もしないと大抵は襲ってこないしね」
「頭いいしね、犬って」
「うん、まあここの団地だと大抵はお部屋から脱走した子だから」
「安心していいわね」
「確かに注意しないといけないけれどね」
 それでもというのだ。
「大丈夫だよ」
「そうよね」
「流石に虎だったら怖いけれど」
「虎はね」
 一華も笑って応えた。
「日本にいないけれどね」
「若し出てきたら」
「大変だよ」
「そうよね」
「日本にいる虎は野球の虎だけれどね」
「阪神ね」
「あの虎だけで充分だよね」
「そうね、虎はね」
 一華は達川の今のジョークめいた言葉にくすりと笑って応えた。
「阪神だけでいいわ」
「最近強いしね」
「ここ数年連続で日本一でね」
「十連覇いけるよ」
「そうね、十連覇したらね」
 その時はというのだ。
「本物よね」
「その時はね」
「そうなって欲しいわ」
「そうだね」
「難しいけれど。あとここがね」 
 一華は目の前の団地の棟を指差して達川に話した。
「私のお家があるから」
「この棟なんだ」
「二階の三号室ね」
「じゃあそこまで送るね」
「有り難う、それじゃあ」
「そこまで宜しくね」
 こう話してだった。
 達川は一華をそこまで送った、そうして彼女の部屋の前で別れた。その後達川は自分で自分の部屋がある棟まで帰ったのだった。


第三十九話   完


               2022・5・23 
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