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大阪のネクタイ

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第二章

 黒と黄色の縞模様だった、それは紛れもなくだった。
「阪神柄やな」
「そうですね、そうしたネクタイを着けるんですね」
「いや、これお付き合いでや」
「お付き合い?」
「それでや」 
 大宮にこの時も笑って話した。
「今日取引に行く社長さんが虎キチやねん」
「熱狂的な阪神ファンですか」
「もう三度の飯と同じ位にや」 
 そこまでというのだ。
「阪神が好きでな」
「それで、ですか」
「阪神絡みやとな」
 それならというのだ。
「めっちゃ話が弾むさかい」
「それで、ですか」
「社長さんにお会いする時はな」
「そのネクタイですか」
「そやねん、今日の風水では白がええらしいが」 
 ネクタイはというのだ。
「けどな」
「社長さんのことを考えて」
「それでや、流石にネクタイはな」
 これはというのだ。
「虎柄が普通やないわ」
「大阪でも」
「そやで、普段はサラリーマンらしいな」
 そうしたというのだ。
「大人しいや」
「そうしたネクタイですか」
「普段はな、ほなな」
 劉はあらためて話した、
「ちょっと行って来るわ」
「その社長さんとお会いに」
「そうしてくるわ」
 こう言ってそのネクタイ姿で外に出た、大宮はそんな彼を見送った。この時はそれだけであったが。
 次第に大阪に慣れて半年もすればすっかり馴染んでいた、それで方言は変わらないが劉に昼にこう言う様になった。
「お昼道頓堀に行って来ます」
「ええな、何食べるねん」
「お好み焼きを」
「それはええな、お好み焼きめっちゃ美味いやろ」
「はい、本当に」 
 にっかりと笑って答えてだった。
 ソースとマヨネーズをたっぷりかけたそれを食べた、そうして会社に帰るとその感想を話したがこの時も笑顔であった。


大阪のネクタイ   完


                 2022・10・28 
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