DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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劇場再び
<エコナバーグ>
通常であればランシールからエコナバーグまで、凡そ2ヶ月はかかる船旅を、航海に慣れきったアルル等の船は1ヶ月強に短縮する熟練ワザを披露する。
来る度に劇的な成長を見せるこの町は、ただの平原だった面影は何処にもない。
メイン通りを進みエコナの屋敷へと赴くアルル達。
途中、誰もがリュカを見ると、満面の笑みで挨拶をする…
この町ではエコナの次に有名人なのだ!
そして多大に感謝をされている。
屋敷についても同様…
門番が顔パスで屋敷内へと通してくれる程…
「何か凄い有名人ですね…乗っ取ろうと思えば、容易く乗っ取れますよリュカさん!」
ウルフが笑いながらリュカをからかってみる。
「何でそんな面倒な事を…町なんて乗っ取ったら、自由に遊べなくなるじゃんか!」
こんな男だからこそ、ウルフは尊敬しているのだろう。
屋敷内にあるエコナのオフィスに入ると、大量の書類を決裁するエコナの姿が目にはいる。
室内にはエコナの他に、彼女を補佐する男性秘書が1名、その男の部下らしき男性が2名、更には各担当毎で分けられたアシスタントの女性が10名…
ここがこの町の頭脳であり、心臓部分でもある。
そんな重要箇所の責任者が、リュカ達を見て驚きながらも喜んでいる。
「リュカはん!まさかこんなに早く来るとは…耳が早いなぁ…」
「は?耳が早いって?」
エコナは仕事の手を止め、入室したリュカに抱き付くと、今一意味のよく分からない事を言い出した。
尚この時、『手が早いの間違いでは?』と呟いたのは息子である。
「また惚けて!ウチが流した噂を耳にしたんやろ。ウチがイエローオーブを手に入れた、ちゅー噂を聞きつけたんやろ!せやから此処に来たんやろうに!」
何と、思ってもみなかった偶然!
情報を仕入れようと思い訪れたエコナバーグで、目的のイエローオーブが此処に存在する事が判明!
「あ、あのね…違「そうなんだ!」
正直者のアルルが、此処に来たのは偶然で噂など聞いていないことを告げようとするが、リュカが遮り話を進める。
「エコナがオーブを手に入れたと聞きつけ、ダッシュで此処まで飛んできたんだよ!」
「やっぱりー!ホンマ情報仕入れるのが早いわぁ~………ウチが噂を流し始めたんは、一昨日からなんや。流石リュカはんやね!」
「当然!何時もエコナの事を考えてたからね!エコナバーグの事には常に耳を傾けてたんだよ!」
「嬉しいわぁ~…だからリュカはん大好きや!」
妻・子・仲間・部下…皆がジト目で睨んでいても、一切気にせずイチャつく2人。
「(ゴホン!)エコナ様…仕事が滞ってますので、それくらいに…」
秘書が遠慮がちに声をかける…
「あ…せやね………ゴメンなぁリュカはん。今夜はこの屋敷に泊まってや!その時にオーブは渡すから…それまで町でも観光しててや」
「うん。そうするよ…あの劇場がどうなってるのか気になるし」
「何処か気になる事があったら、遠慮無く言ってや!リュカはんの厳しい評価は、えらい為になるんやから!」
「よくもまぁ、いけしゃあしゃあと嘘が吐けますね!」
エコナの屋敷を後にしたアルルは、穏やかな町並みを歩きながらリュカに噛み付いている。
「別にいいじゃん!誰も困らないんだし…」
リュカは悪びれることなく軽い口調で嘯く。
「でも………」
「それにエコナも喜んでたじゃん!それとも…『お前の事も、この町の事も全然気になどしていなかったが、情報が必要になり思い出したので此処へ来た!』って、言った方が良かった?」
リュカは人の悪い笑みを零しながらアルルに問いかける。
「………もう!意地が悪いですねリュカさんは!」
この男に何を言っても無駄だと悟り、怒りながらも話を打ち切るアルル…
他の者は皆、ヤレヤレと言った表情で劇場へと歩き出した。
エコナバーグ劇場………
以前に来た時は、悪辣な支配人と一悶着を起こした場所。
大して価値のないショーに50000ゴールドもの料金を取る、悪質経営が行われていたのだ…まぁ、それに対してリュカのとった対抗手段は、もっと悪辣で非常識だったけどね!
しかしその面影は今は無く、『不幸な事故』により空けられた入口の大穴も修復されており、内部も見違える程キレイになっていた。
「随分と雰囲気が変わりましたね…」
【ちびっ子喉自慢大会】と書かれたパネルが掛かっているステージでは、マリーぐらいの子供達が一生懸命歌を披露している。
入口には【入場無料・飛び入り参加大歓迎】と書かれた看板もあり、以前の豪華な酒場という印象は微塵もない。
「どうやら酒も置いてない様だね」
以前からあったカウンターバーは健在だが、アルコール類は無く軽食が出来るようになっている。
「ようこそいらっしゃいましたリュカ様!どうぞご堪能していって下さい」
リュカ達が様変わりした劇場に感心していると、支配人らしき男がリュカに近付き、笑顔で声をかけてきた。
「あ…う、うん…そうする…」
随分と馴れ馴れしく接してくる男に、些か引きながら答えるリュカ。
「その節は大変失礼を致しました。リュカ様がエコナ様の大切なお人だとは知らなかった物で…ご無礼をお許し下さい」
どうやらこの男はリュカ達と接点があるようで、頻りにその時の謝罪をしてくる。
「…お前、誰?」
「えぇ!!お忘れですか?私…以前はエコナ様の屋敷前で門番を務めておりました…お忘れですか?リュカ様が王様である事を知らずに、無礼な態度を取ってしまった門番を!」
支配人は、自分とリュカ達との接点を説明するも、思い出すのに時間を要してしまう。
「……………あぁ…そう言えば居たなぁ…忘れるも何も、記憶に残らねーよ!」
リュカの身も蓋もない物言いにションボリする支配人…
それを哀れに思ったティミーが、明るい口調でフォローを入れる。
「で、でも大盛況ですね、この劇場は!お子さん達の歌も凄く上手いし…支配人さんは良い手腕の持ち主の様だ!」
「ありがとうございます!折角出来上がった劇場ですからね…町民の活力になる様な使い方をと思いまして。それにこの町から未来のスーパースターが誕生するかもしれませんからね!」
ティミーのフォローに気をよくした支配人が、活き活きと劇場の事を語る。
「そう言えばリュカ様は、大変歌がお上手と聞きます。やはり娘様も、お父様に似てお上手なのでしょうね…どうですか、飛び入り参加大歓迎ですので、御参加されてみては?」
「わ、私!?」
急に打診されて驚くマリー。
「いいじゃん!参加しちゃえば?」
軽く参加を促すリュカ。
「え~…でも~…こんなに可愛い私が参加したら、ファンがいっぱい出来ちゃうかも~!そのファンがイケメンだったりしたら、私困っちゃ~う!ウルフとどっちを選べば良いのか…私迷っちゃ~う!」
誰もが親子だと思うマリーの台詞…
しかしウルフも負けない。
「大丈夫!俺以上のイケメンなんてリュカさんくらいだ!迷う事はないさ!」
彼も随分と言う様になったもんだ。
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