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イチゴノキ

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第三章

「休んでくれるかしら」
「ではな」
 ピーボワンはセガンの言葉に頷いた、そうしてだった。
 少女が為すことを見た、少女が燃え盛る火に手をかざすとだった。
 木は芽になりその芽が成長してだった。
 木になりテントもそこに重なってだった。
 セガンがその木に息を吹きかけると花が咲きそこから赤い見事な実が実った、セガンはその実を取ってだった。
 ピーボワンと従者に渡した、彼等はそれを食べるとだった。
「これは」
「美味しいわね」
「全くだ」
「そうですね」
 ピーボワンだけでなく従者も言った、
「この実は」
「そうですね」
「一口食べただけでな」
 それでと言うのだった。
「満たされる」
「全くですね」
「ではだ」
「はい、これでですね」
「眠ろう」
「そうしますか」
「これでな」
 こう従者に言ってだった。
 ピーボワンは従者と共に眠りに入った、すると。
 外の吹雪は収まり雪と氷は解けてだった。
 草木は緑になる花が咲いた、セガンはその中で喜び。
 傍に来た栗鼠の姿をした己の従者に話した。
「ではこれからはね」
「はい、私達がですね」
「働きましょう」
「そうしましょう、春と夏はですね」
「私達の働きだから」
「そうですね、そして夏が終われば」
「今度はね」
 その時はというと。
「ピーボワンさんが起きてね」
「また働かれますね」
「そうなるわ、ではそれまではね」
「働きましょう」
「そうしましょう」
 こう話してだった。
 セガンはテントに住んでそこで暮らした、そして夏が終わるとだった。
 眠りに入り何時しか姿を消していたピーボワン若々しい少年の姿をしている彼を老婆の姿で出迎えてだった。
 彼がイチゴノキを燃やして日にしたのを見て眠りに入った、以後はピーボワンのところに戻って来た従者と共に過ごした。そして冬が終わるとまたセガンを迎えた。
 こうして一年に季節がある様になった、ネイティブアメリカンの間に伝わる古い話である。二人の精霊は今もこうして交代でテントの中で暮らしているのである。


イチゴノキ   完


                  2022・4・12 
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