鰐と無花果
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第三章
無花果の木があります、木には実がたわわに実っています。
「あの身を食べるといい、熟すれば落ちてだ。
「私達が川から出るか川に落ちれば」
「それでですか」
「食べられる」
その実をというのです。
「そうなる、だからな」
「これからはですか」
「お猿の心臓を食べたいと思えばですか」
「あれを食べるといい」
鰐の夫婦に穏やかで優しい声でお話しました。
「いいな」
「そうですか」
「そうすればいいですか」
「その様にな」
まさにというのです。
「すればいい」
「そうですか、では」
「これからはその様にします」
「そうするといい」
厳かに告げてでした。
菩薩は姿を消しました、そしてです。
鰐の夫婦は無花果の木のところまで川を出て行きました、そうして落ちている実を一緒に食べますが。
「美味しいな」
「そうね」
「じゃあこれからは」
「お猿の心臓を食べたくなればね」
「無花果を食べよう」
「そうしましょう」
「鰐が猿を食べることは稀だろう」
菩薩がここでまた姿を現して言ってきました。
「それも一つだけだな」
「はい、猿一匹について」
「それだけです」
「それならこうして何時でも多く食べられる無花果の方がいいな」
「そうですね」
「それではこれからは」
「猿そしてその心臓を食べたいと思えばここで無花果を食べるのだ」
こう言い残してでした。
菩薩はまた姿を消しました、鰐の夫婦特に奥さんはそれからお猿の心臓を食べたいと思うと無花果を食べる様にしました。滅多に食べられない少しだけのものより近くにある沢山あるそれを食べて満足しました。
鰐と無花果 完
2022・4・14
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