ボクサー一家

　　　　　　　　　　　　　　　　ボクサー一家
　桂巧は自宅で妻の深雪に言った、見れば黒髪をショートにしていてはっきりとした顔立ちである。背は一六七位でメリハリの利いたスタイルだ。
「二年やっても外見は変わらないな」
「ボクシングやって？」
「ああ、ボクシングっていうとな」
　夫は妻に話した、黒髪をショートにしていて面長で優しい顔立ちだ。背は一七八位で痩せてすらりとしている。
「格闘技の中でもな」
「ハングリーって言われてるわね」
「だからな」
　それ故にというのだ。
「やっぱりやってるとな」
「身体つきが違ってくるっていうのね」
「それで顔つきも」
　これもというのだ。
「高校や大学の時のボクシング部の連中見てたら」
「違うのね」
「引き締まっていてな」
　それでというのだ。
「狼みたいにな」
「なるのね」
「ああ、けれどな」　
　妻をさらに見て話した。
「別にな」
「だって運動の為にやってるのよ」
　妻はいぶかしむ夫に笑顔で話した。
「だからね」
「それでか」
「お母さんもはじめたし」
　美幸は実母もと話した、二人とは別の家で暮らしている。
「それで汗かいてね」
「健康になってきたよな、お義母さんも」
「別にチャンプになるとかね」
「そういうのは考えてないか」
「だからね」
　それ故にとうのだ。
「別に身体つきや顔立ちはよ」
「変わらないか」
「食事制限もしてないしね」
　ボクシングに付きもののこれもしていないというのだ。
「前と変わらないわよ」
「そうなんだな」
　夫婦でこうした話をした、だが。
　妻の実家に行った時にだ、義父の晴信一九〇はあるがっしりとした体格で髪の怪我一本もない頭と口髭をたくわえた丸顔の彼が語った。
「女房変わったな」
「お義母さんがですか」
「前は腰が悪かった」
　向かい合って茶を飲みつつ話をしている巧に着流し姿で話した。