ハンドル持たせるな
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第一章
ハンドル持たせるな
松田弘子の夫の母親即ち義母の麻弥は楚々とした顔立ちで細面出がその顔立ちによく合っている。黒髪を後ろで束ねすらりとしたスタイルで背は一六〇程だ。
優しく人の悪口は言わずいつも微笑んでいる、口調も穏やかだ。
それで弘子も大好きだが夫の克之は妻によく言っていた。
「あれさえなかったらいいのにな」
「あれさえって?お義母さんお酒飲まれてもね」
癖のある茶色がかった髪の毛をやや伸ばした長方形の顔に丸い目で一七二程の背の夫に対して言った。
「別にね」
「ああ、お袋酒癖はいいんだよ」
腰まである黒髪にパーマをあてていて優しい目鼻立ちで微笑んだ顔立ちの妻に話した。背は一六四程で均整の取れたスタイルだ。
「そっちはな」
「じゃあ何が悪いの?」
「わからない方がいいよ」
これが夫の返事だった。
「別に」
「何か気になるけれど」
「いや、本当にな」
「知らない方がいいの」
「ああ、別にな」
こう妻に話す、その話を聞いてだ。
弘子は気になったが夫が言わないのでわからなかった、そうして義母とは良好な関係のままでいつも優しくしてもらっていた。
だがそんなある日のことだった。
夫婦で義父母と共に四人が暮らしている東京から箱根に旅行に行った、その帰りの時に。
これまで運転をしていた義父の敏生眼鏡をかけていて四角い顔に半分白くなっている髪の毛を右で分けた一七〇程の背の固太りの彼がだった。
急に腰の調子が悪くなった、それでだった。
克之と弘子がそれぞれ申し出た。
「二人共免許持ってるしさ」
「普段から運転してますし」
「僕達が運転するよ」
「そうさせてもらいます」
「それで頼めるか」
敏生は二人特に息子の申し出を受けて言った。
「ここは」
「ああ、それじゃあな」
「待って、私ずっと休んでいたから元気だからね」
だがここでだった。
麻弥が申し出てきた、それを受けてだった。
敏生も克之も大慌てになった、それで彼女に必死の顔で話した。
「いや、折角だからな」
「僕達二人だし」
「ここは克之達の申し出を受けよう」
「任せてよ」
「そう言うの?それじゃあね」
麻弥は二人の必死の言葉を受けてだった。
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