――その頃、中国の
上海に設けられた高層ホテルの一室では。
「貴様が……仮面ライダーヴェノーラ、だな。散々貴様らに煮湯を飲まされて来た俺達だが、それも今日までだッ!」
「あらあら……ルームサービスを頼んだ覚えはないのだけれど、困ったわねぇ」
仮面ライダーヴェノーラこと
薬師寺沙耶が、ノバシェードの襲撃を受けていた。彼女も清音と同様に、女としての最も無防備な瞬間を狙われたのである。
つい先ほどまでシャワーを浴びていた彼女はバスタオル姿のまま寝室に足を運んでいたのだが、そこには銃を構えた戦闘員が待ち構えていたのだ。
「一応聞いてあげるけど……どうやってこのホテルを突き止めたのかしら? いつもは簡単に撒かれてくれるのに……今日は可愛くないのね、あなた達」
「黙れ、貴様らに教えることなんて無いッ! ……変身装置にも様々な形状パターンがあると聞いてるぞ。何かそのバスタオルの下に隠してるんじゃないだろうな!?」
「あらあら、せっかちな上に誘い文句も下手なのね。そんなにこのタオルを脱がせたいのなら、もう少しその気になれる言い方を考えなさい」
男を惑わす豊満な肉体を辛うじて守っている、たった1枚のバスタオル。その先に隠されているのであろう白い柔肌に思いを馳せ、戦闘員の男は声を荒げていた。
一方、当の沙耶は銃口を突き付けられているというのに全く動じておらず、腕を組んで豊穣な乳房を寄せ上げ、妖艶な笑みを浮かべている。
シャワーを浴びたばかりだというのに、匂い立つような彼女の色香がこの一室を満たしていた。
スラリと伸びる肉感的な脚はありのままの姿を晒しており、安産型の巨尻と雄の本能を刺激する爆乳は、バスタオルで抑えていないと零れ落ちてしまいそうだ。
「でも、そういう自分に素直な子は好きよ。……いいわ、特別に……見せてあげる」
「えっ……!?」
その暴力的なまでの色香と、彼女の言葉に思わず戦闘員が息を呑む瞬間。
沙耶は自ら胸元に指を掛けると――戦闘員の顔面に向けて、バスタオルを勢いよく脱ぎ捨てた。
絶世の爆乳美女が、文字通り一糸纏わぬ姿になるのと同時に。戦闘員の視界も、純白のバスタオルに覆い尽くされてしまう。
「うぉっ……!?」
「――はぁあッ!」
「ごはぁッ!?」
白く肉感的な脚が弧を描き、そのキックが戦闘員の延髄に炸裂したのは、それから間も無くのことであった。
「例え改造人間でも、基本構造が人間と変わらないなら『急所』も同じ。……ふふっ、あなた達の場合はなおさらでしょう?」
強烈なハイキックの衝撃により、露わにされた白い爆乳と巨尻がどたぷんっと躍動する。ふわりと弾んだブラウンのロングヘアから、芳醇な女の香りが漂う。
だが、バスタオルで顔を隠されたまま蹴りを食らってしまった戦闘員に、その「絶景」を拝むことは出来ない。
「……続きは、夢の中でね」
その勢いのまま宙を舞うバスタオルをキャッチした彼女は、ハイキックを終えると同時に、己の肉体にタオルを巻き直していた。
雄の情欲を苛烈に刺激する、白く蠱惑的な沙耶の裸身を脳裏に刻む暇もなく。戦闘員の男は、俊速のハイキックで意識を刈り取られてしまったのである。
そんな彼の哀れな姿に、沙耶は挑発的な微笑を浮かべるのだった。
――だが、その直後には。ノバシェードに起きている「異変」を目にしたことで、仮面ライダーとしての鋭い顔付きに変わっている。
2021年に入ってから、ノバシェードの構成員達の練度は異常な速さで向上していた。その「異変」は、仮面ライダーの変身者に対する追跡能力にも現れていたのだ。
「……一体何が、彼らをここまで変えてしまったのかしら」
常人の手には負えない脅威度であるとはいえ、元々は旧シェードの「失敗作」の集まりであるノバシェードの構成員達は、正規の戦闘訓練を知らない民兵も同然。仮面ライダーの力を託されたエリート警察官である沙耶達とは、そもそもの地力が違う。
故にこれまでは彼らの追跡を撹乱することも、逆に彼らのアジトを特定して壊滅させることも容易かった。が、今年に入ってからの彼らの「冴え」は、まるで別次元なのだ。
完全に撒いたという油断を誘い、これまでの失敗を逆手に取った彼らは、沙耶の滞在先を特定し、ここまで辿り着いて見せた。しかも、シャワーの直後という無防備なタイミングまで狙えている。
「やはり……今のノバシェードには、何かが起きている。その実態を確かめなければ、この戦いに終わりは来ないようね」
明らかに、これまでとは様子が違うのだ。その「異変」はすでに、他国の調査を担当している他の
同僚達も目の当たりにしている。
インドで活動している仮面ライダー
EXこと、
久我峰美里も。
イギリスに滞在している仮面ライダーアルビオンこと、
東方百合香も。
コロンビアで残党を追跡していた仮面ライダーティガーこと、
道導迅虎も。
アルゼンチンで活躍している仮面ライダーパンツァーこと、
翆玲紗月も。
そして、ブラジルに身を置いている仮面ライダーG-verⅥこと、水見鳥清音も。
追跡能力が向上したノバシェードの構成員達による、「奇襲」に見舞われていたのである。一糸纏わぬ無防備な姿でシャワーを浴びている最中という、女としての最も大きな「隙」を狙われて。
幸いにもすでに全員がその撃退に成功しているのだが、それらの件は彼女達の認識を大きく改めさせるには十分過ぎるものであった。中には清音のように、虚を突かれて組み敷かれてしまったケースもある。
半端な能力しかない「失敗作」とは言え、「改造人間の男」と「生身の女」なのだ。単純な力勝負に持ち込まれたら、勝ち目は薄い。故に清音も他の美女達も、一度は「覚悟」を迫られることになったのである。
彼女達はいずれも、雄の情欲を誘う蠱惑的な色香を持った絶世の美女であり。その熟れた芳香は、ノバシェードとは無関係な現地の男達も頻繁に惹き付けていた。
その手合いに紛れ込むように、ノバシェードの構成員達は虎視眈々と彼女達の隙を伺い続けていたのだろう。
男達を翻弄して来た彼女達の濃厚なフェロモンが、却ってピンチを呼び込んでしまったのだ。
間一髪のところで貞操の危機を脱した彼女達だったが、今後もこの手の「奇襲」が来る可能性を想定しなければならない以上、早急にこの「異変」の真相を解き明かさねばならない。
――歴戦の女傑たる彼女達といえど。次こそは、どうなるか分からないのだから。