社長令嬢といっても

　　　　　　　　　　　　　　　　社長令嬢といっても
　片瀬きいの家は企業を経営している、所謂社長令嬢だ。
　一五三程の背で胸はあまりないが全体的に整ったスタイルである、丸めの顔で黒髪をショートにしており大きな目はやや垂れている。
　通っている高校ではいつもそのことを言われるが。
「いや、全然大した会社じゃないから」
「またまたそんなこと言って」
「県内でも有名な会社じゃない」
「テレビでもＣＭ出してるでしょ」
「結構大きな家具の会社じゃない」
「そう言ってもね」
　ありのままの顔でだ、きいは言うだけだった。
　家は実際に県内で有名な家具会社であり何店舗も展開していて収益も結構なものだ、だがそれでもである。
　きいはそのことを自慢しない、見れば服装もだ。
　ごく普通のものだ、クラスメイト達は体育の授業の前に更衣室で上下青の地味なジャージに着替える彼女を見て言った。
「あれっ、きいちゃんの下着普通？」
「その辺りで売ってるものっぽいわね」
「色は白でデザインも普通で」
「何でもないわね」
「下着にこそそういうの出るっていうけれど」
「きいちゃんって実際になのね」
「だからね」
　きいはその白のブラとショーツ姿で眉をやや顰めさせて言った。
「私のお家って普通よ」
「お家社長さんなのに？」
「県内でも結構有名なのに」
「ＣＭさえ流してるのに」
「何店舗もあるのに」
「それでもよ、お家自体はね」　
　これはというのだ。
「皆とそんなに変わらないわよ」
「結構大きなお家って聞いたけれど」
「違うの？」
「そうなの？」
「ええ、そうよ」
　下着姿からジャージを着ながら応えた、兎角きいには大きな社長の家の娘という印象は全くなかった。
　そのきいが家に帰るとだった。
　県庁所在地の郊外に一軒家がありそこに帰った、ガレージの中に車はあるが国産の乗用車であり家の中もだ。
　普通の一軒家だ、それで家に帰ると母の真夜黒い長い髪の毛に凛とした感じの顔立ちであるが娘と同じ位の背の彼女が言ってきた。
「早く着替えてよ」
「うん、宿題とかしてね」
「晩ご飯手伝ってね」
「今日は何作るの？」
「秋刀魚焼くわ」
　この魚をというのだ。
「今日特価だったから」
「ああ、秋刀魚ね」
「最近高いけれど」
　ここ数年というのだ。