イベリス
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第七十話 尊敬と軽蔑その三
「同時にね」
「痩せ過ぎも同じね」
「だから多少太ってる位でもいいの」
こう咲に話した、とはいっても実は内心咲の今のプロポーションのよさは我が娘乍らかなりだと思っている。
「多少痩せていてもだけれどね」
「多少はいいのね」
「アメリカで太ってる人は出世出来ないのは」
「命の危険がある位太ってるからよね」
「そこまで太っていたらね」
「出世出来ないわね」
「命の危険がある位だと」
太り過ぎてそこまで不健康ならというのだ。
「満足に働けないわよ」
「出世どころじゃないわね」
「健康な人でないと出世出来ないわよ」
そもそもというのだ。
「だからよ」
「アメリカじゃそう言われるのね」
「多少太ってる位だとね」
「アメリカでもそうは言われないのね」
「死ぬかも知れない人は出世出来ない」
母は強い言葉で言い切った。
「覚えておいてね」
「よくわかったわ」
「痩せ過ぎの人もね」
「出世出来ないのね」
「あんたが社長さんで骨と皮だけの人に大事なお仕事任せられる?」
こう咲に問うた。
「わかるでしょ」
「何時倒れるかわからなさそうな人に」
「出来ないでしょ」
「絶対にね」
「だから多少太っていてもいいし」
「痩せていてもなのね」
「そういうものよ」
娘に強い声で話した。
「健康であることよ」
「程々に」
「よく歩いて食べて頭使ってね」
「そうしていくことね」
「あんたはこのままいったらね」
それならというのだ。
「いいわよ」
「健康的でいられるのね」
「そうよ。まあ変な食べ方しないで」
そしてというのだ。
「それなりに歩いていたらね」
「いいのね」
「そうよ、普通にしていたらね」
「極端に痩せたり太ったりしない」
「歳を取ってもね」
「よくわかったわ」
「まあ太りやすい体質って言うけれど」
こうも話した。
「気にしている人がいて」
「よく言われるわね」
「俗にね、けれどそんなによ」
「気にしなくていいのね」
「そう、皆気にし過ぎなのよ」
「やたらと」
「昔はもっと酷かったけれどね」
何故酷かったかもここで話した。
「マスコミが煽ったりして」
「マスコミね」
「マスコミは煽るのが仕事だから」
「事実を伝えるんじゃなくて」
「もうね」
「煽ることがなのね」
「仕事だからね」
そうしたものであるからだというのだ。
「それでよ」
「太り過ぎとか痩せ過ぎも」
「事実を伝えずにね」
本来はそれが仕事であるがだ。
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