八条学園騒動記
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第六百七十二話 朝はそうなったその十四
「また彼も孤児を引き取って養子にしておった」
「人の情はあったんですね」
「逮捕されるまで側近達とおったしな」
共に粛清されるのを待つ彼等と共にだ、そして酒浸りになって何とか死の恐怖から逃れていたという。
「養子さんは女の子でいい父親だったとな」
「その人が言ってるんですね」
「うむ、その人は死ぬまで言っておった」
姓も父のもののままでだ。
「そう言っておった」
「三人共人間だったんですね」
「色々言われておったがな」
「そうだったんですね」
「しかしベリヤは違った」
博士は強い声で批判した。
「当時のソ連は密告と謀略、粛清が常であったが」
「その中でもですね」
「最低最悪の奴だった」
「秘密警察のトップってだけで大概ですが」
「残虐で卑劣で非道でじゃ」
博士はこうまで言った。
「権力を己の為に使い幼女までじゃ」
「自分の性欲のはけ口にしてましたね」
「そして殺すこともしてな」
このことはどうも事実であるらしい。
「顔を殴り回してな」
「とことん屑ですね」
「何人もそうした」
「しかも平気で嘘を吐いて邪魔な相手はですね」
「眉一つ動かさず抹殺してきた」
最後はスターリンまでそうしたという。
「能力はあるがな」
「それ以前ですね」
「無能な働き者は向いている仕事なら有能な働き者になる」
適材適所を活かすとだ。
「しかし外道はじゃ」
「外道のままですね」
「無能な働き者は殺せと言うが」
ゼークトの言葉である。
「それは違うであろう」
「今は否定されていますね」
「今言った通りじゃ」
「無能な働き者は向いている仕事なら有能な働き者になりますね」
「しかし外道はな」
「外道のままですね」
「こうした奴は絶対に用いるものではない」
博士は言い切った。
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