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ハッピークローバー

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第三十七話 夏の食べものその四

「あれもいいよな」
「そうよね、カレーと比べると贖罪の幅が少ないけれど」
「牛肉と玉葱とマッシュルームか」
「それ位で牛肉はスライスね」
 かな恵は特に牛肉の話をした。
「それでね」
「玉葱とマッシュルームだけだよな」
「それ位だけれど」
 それでもというのだ。
「けれど美味しいのよね」
「ハヤシライスはハヤシライスでな」
「馬鹿に出来ないわよ」 
 決してというのだ。
「本当にね」
「そうだよな」
「だからハヤシライスも時々でもね」
「かな恵作ってるよな」
「夏でもね」
「そうだよな」
「ハヤシライスね」
 達川も言ってきた。
「あれもいいね」
「そうだよな」
「カレーはもう別格でね」
「ちょと勝てないよな」
「あのバリエーションにはね」 
 とてもというのだ。
「そうだけれどね」
「ハヤシライスも美味いよ」
 達川はまた言った。
「あれも」
「私も好きよ、ハヤシライス」 
 一華も笑って話に入った。
「あれはあれで美味しいわよね」
「かなりね、野村克也さんも好きだったみたいだよ」
「そうなの」
「入団してすぐに食べてね」
 南海ホークスにだ、この頃の南海は鶴岡一人監督の下でパリーグの覇者として君臨していた。そこの野村も入ったのだ。
「感激したらしいよ」
「そういえばあの人貧乏だったのよね」
「野球選手になるまでね」
「確か」
 一華はこの偉大な野球人について知っていることを話した。
「お父さんは野村さんがお腹の中にいる時にお亡くなりになって」
「戦争で戦傷死したらしいよ」
「そうよね」
「それでお母さんも病気でね」
「お家貧乏だったのよね」
「それで野球選手になって」
「ハヤシライスはじめて食べて」
「その美味しさに感激して」
 この時鶴岡監督にプロ野球選手はこうしたものが幾らでも食べられると言われたらしい。ただし後年野村は鶴岡と決別することになる。
「何かあったらね」
「ハヤシライス食べてたの」
「初心忘れるべからずって感じで」
「そうだったのね」
「それで好きかっていうとね」
「そうなるのね」
「そうなんだ、ちなみに野村さんお酒飲めなかったんだ」
 下戸であったという。
「甘いものが結構好きだったかもね」
「へえ、飲めなかったの」
「そうなんだ」
「それは意外ね」
「あと口では色々言うけれど」
 このことで兎角有名な人物であった。
「物凄く優しい人だったらしいよ」
「それ新庄さんも言ってたわね」
 一華はこのことから野村のそのことを知っていて応えた。
「あれこれ言うけれど実は」
「優しい人だってね」
「長嶋一茂さんも親しくしてたし」
「インタヴューで仲いい感じだったんだよね」
 野村はその時仕方ない奴だ、という様な顔で笑って何かと話していた。 
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